テレビ東京・名物プロデューサー座談会!「命削って撃ってくるみたいな社風」の企画術

テレビ東京・名物プロデューサー座談会!「命削って撃ってくるみたいな社風」の企画術

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 先ごろ、ワークス・ジャパンが発表した、就活生が選ぶ「人気企業ランキング」で、テレビ東京が競合の在京キー局を抑え、テレビ局の中で最上位にランキングされて話題となった。かつて“番外地”などと呼ばれたテレビ東京だが、現在はバラエティ、ドラマで次々に話題となる番組を生み出している。

 なぜ今、テレ東が若者たちを惹きつけるのか、個性的な番組はどのように生まれるのか、などについて、テレビ東京を代表するプロデューサーたちに語り尽くしてもらった。

■「やっぱ田舎者っぽいなって(笑)」

 集まったのは『やりすぎコージー』などでテレ東バラエティの礎を築き、現在も『モヤモヤさまぁ〜ず2』や『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』を手掛ける伊藤隆行、10年以上続く深夜のお笑い番組『ゴッドタン』を制作しながら、ニッポン放送『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティなど自局内にとどまらない活躍でテレビ東京の“顔”となっている佐久間宣行、『フルーツ宅配便』『コタキ兄弟と四苦八苦』『きょうの猫村さん』など個性あふれるドラマを作る濱谷晃一、そして、初めて企画・演出をした、アメリカのギャングやロシアのカルト教団などの「ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯」を取材したドキュメンタリー番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』でいきなりギャラクシー賞を受賞した上出遼平の4人。

濱谷 (1位は)嬉しいけど、正直、気恥ずかしいですね。テレ東の人が触れちゃいけないニュースだと思ってたら、社員がSNSで結構、喜んでいて、やっぱ田舎者っぽいなって(笑)。

上出 あんまり言いたくないんですけど、やっぱりいい会社っていうのが割とベースにあるんじゃないかと思います。僕もそんなにバリバリやる人間ではないですけど、そんな人にも優しいし、佐久間さんのようにバンバン表に出る人もいる。就活生って、働いた自分がどうなるんだろうっていうのが最大の関心事だと思うんですけど、佐久間さんみたいに楽しそうなオジサンが社員としているとそれを目指したくなる。

■社内で「テレ東らしさ」と言いだす危うさ

佐久間 こういうものって今のイメージよりも1〜2年前のイメージが反映される気がするんですよ。1年前くらいは上出の『ハイパーハードボイルドグルメリポート』とか確かに自由な番組をいくつかスタートさせていた。でも、1位で凄いって言われてる時には、だいたい内部はダメになってます(笑)。

伊藤 浮足立ってる人がいるよね。偉い人もテレビ東京のことを「テレ東」って言い始めたんだよ。「テレ東」っていうのは元々、「テレ東ってさー」みたいにちょっと小馬鹿にしたニュアンスも入ってるんだけど、社内で「テレ東らしさ」みたいなことを言い始めたんですよ。それはなんか危ねえなって。

◆◆◆

 4人が手掛けてきた、世間で話題となった数々の番組はどうやって誕生したのだろうか。それぞれが自らの企画の立て方を語る中で伊藤プロデューサーから意外なキーワードが飛び出した。

「ウンコ」だ。

■「クソみたいな番組」ではなく……

上出 僕にとって企画は自分のコンプレックスの塊をボンッと出すみたいな感じなんです。お笑いもやってみたいけどセンスないし、ジャーナリズムを追求するほど社会のことを知らない。じゃあ、ヤバいところに行って飯を食うしかないって『ハイパー』が生まれた。自分にはこれしかねえ、みたいな。半分破れかぶれみたいなものが番組になった。

伊藤 ウンコみたいな企画ね。

佐久間 これ、伊藤さんと飲むたびに言われるんです。「ウンコみたいなもん作らなきゃダメだ」って。俺は毎回、目の前のツマミだけを見つめて、わかったふりしてる(笑)。

伊藤 俺だけが納得してるの? おかしいな。

佐久間 10年くらい付き合ってやっとわかった。番組には自分が噛み砕いたものが全部入ってるっていうのと、どうしようもなく出ちゃうものという2つのことが必要だという意味なんだって。

伊藤 そうそう、そういうこと!

佐久間 クソみたいな番組でいいってことじゃないんだよ(笑)。

濱谷 インプットとアウトプットをウンコで表したんだ。ああ、なるほど。そうやって聞くと結構名言ですね(笑)。

■命削って撃ってくるみたいな社風

 年次や役職に囚われず、フランクに語りあう4人の言葉には、自らの番組に対する愛情、テレビの持つ可能性への期待が滲んでいた。

 そして、伊藤は今のテレビ界における「テレビ東京の存在理由」についても語ってくれた。

伊藤 テレビ東京が必要か? って言われたら必要ないと思うんです。でも、さっき上出が言った「破れかぶれ」じゃないですけど、魂の叫びのような番組がボーンって出るっていうのはエンターテイメントの幅を広げていると思いますね。大きく言えば、日本人の感情の幅を広げてたり深みを作ったりする。視聴者の感覚に影響を与えて、究極的には文化に貢献するのがテレビだと思う。そういう意味では、何をしてくるかわからないような、テレビ東京がなくなっちゃうと寂しくないですか? と。

 今でも忘れられないけど、入社してすぐに先輩から「企画を出さない奴は死んでるのと一緒」「企画書は億の金を生むから命を削って書け」って言われたんですよ。「死」とか「命」とか、怖えな、とも思ったけど、なんとなくテレビ東京の人にはそういう認識がある。最下位だからこそ、ギリギリの感性で、怒られるくらいじゃなきゃダメなんだという遺伝子というか。そういう命削って撃ってくるみたいな社風は大切にしていかなきゃいけないと思います。

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 他にも、テレ東で個性的な番組企画が生まれる理由、各プロデューサーの企画の立て方、視聴率が取れなかった番組とどう向き合うか、テレ東らしさとは何か、そしてコロナ禍でテレビはどう変わるのかなど、プロデューサーたちが忖度なく自由に語り合う「 テレビ東京だけがなぜ面白いのか 」は、「文藝春秋」8月号及び「文藝春秋digital」に掲載されています。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年8月号)

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