山口百恵は人間ではない。菩薩なのだ……百恵を知らない若者にも聞いてほしい、サブスク解禁9曲

山口百恵は人間ではない。菩薩なのだ……百恵を知らない若者にも聞いてほしい、サブスク解禁9曲

ファイナルコンサートより。美し過ぎて白く発光している山口百恵。 ©文藝春秋

■山口百恵楽曲600曲にクラクラ!

「山口百恵の楽曲600曲がサブスクリプションで配信開始」。

 2020年5月29日(金)に流れてきたこのニュース。私は画面から百恵ファンの野太い「うおおおおおお!」という歓喜の雄叫びが聞こえてくる気がして、熱くなる目頭を押さえた。

 案の定、SNSは百恵フェスティバル&カーニバル!

 祭りなのになぜこんなに記事が遅れたか。答えは簡単。サブスクで聴きまくり時を忘れていたのである。

 そうこうしているうちに、御長男で歌手の三浦祐太朗さんの結婚ニュースまで飛び込んできた。彼の結婚について、私はある心配をしているのだが、それは後に書かせていただくとして。

 70年代青春を送った世代にとって、山口百恵はもはや人間ではない。菩薩なのだ。芸能界を引退してから40年経っているが、百恵の辞書に劣化という文字はなし。その愛はエターナル!

 ということで、今回の600曲配信は、国宝の仏像が40年ぶりに御開帳になるのと同レベルと思っていい。百恵さんの現役時代を知らない人もいると思うが、心して聴こう!

 彼女がオーディション番組「スター誕生!」に合格し、デビューしたのが14歳。三浦友和との愛を実らせ、日本武道館のコンサートで引退したのが21歳。うぉうヤーング!

 世の中に認められ、阿木燿子、宇崎竜童、さだまさし、谷村新司などの大御所に愛され、実力、体力、美ともに最盛期でササッと引退って潔さ無限大……。

 私が百恵さんなら20代後半あたりでスポットライト症候群とやらに陥る。そして「くっそーさよならの向こう側から復活してやる!」とかイライラし、キルトを縫う針が震えて指をドカスカ刺し、血染めの作品を仕上げてしまう気がする。

 しかし、百恵さんはひたすら静かだ。キルト作品もとても穏やかということは、ご家庭がよほど居心地がいいのだろう。

 そりゃそうよね、三浦友和様がパートナーですもの、ムキ―ッ!

 ……とまあ、百恵さんはいろんな意味で私を興奮させる。

 前置きが長くなってしまった。さあ、サブスクで聴ける山口百恵さんの名曲を、語り継がれる伝説とともに、プレイバック、プレイバック!

■ヒット曲&影のヒット曲にゾクゾク!

 百恵の世界は果てしなく深い。いきなりディープゾーンに踏み込むと、溺れて社会生活に戻れなくなる危険がある。まずはヒット曲からリッスン!

■●「ひと夏の経験」

 歌詞にある「女の子の一番大切なものをあげるわ」の「『一番大切なもの』とは何?」というマスコミのゲスな質問に毅然と「真心だと思います」と答えたエピソードは有名。

■●「プレイバック part1」

「プレイバック part2」があるということは、当然「part1」もあるのだ。「part2」に負けずとも劣らない疾走感の凄さを体感できる! 歌詞に急に入る「聞いてね……」という呟きは色っぽくて「聞きます聞きますッ」と思わず声に出して答えてしまうので、電車の中で聴くのは避けたほうがいいだろう。

■●「一恵」

 ファイナルコンサートのラスト曲の「さよならの向う側」が印象深いが、百恵ちゃんのラストシングルはこの曲。作詞がご本人(「横須賀恵」名義)で、その風情溢れる言葉選びのセンスの素晴らしさに仰天する。作曲は谷村新司。聴いてすぐわかるくらいザ・谷村メロディ!

■歌の世界観にドギマギ!

 百恵の歌の歌詞のヒロインはとにかく魅力的だ。愛を求め凛と生きるその世界観に、頭までドップリ浸るのもこれまた一興。

■●「絶体絶命」

 カフェで繰り広げられる三角関係の修羅場がそのまま歌に。「別れてよ!」「そんなことできない」と女性ふたりがすったもんだしてるのに、肝心の男はノコノコ遅れてやってきて「まあまあ落ち着いて」と言う。男、しっかりしろよ! と無性に腹が立つ名曲。

■●「愛染橋」

 演歌調の百恵ちゃんが堪能できる。「うち」「よう知らん」などなど、百恵ちゃんの大阪弁よろしいで。中森明菜もカバーしている名曲!

■●「秋桜」

 結婚前夜の歌なのに浮かれ度ゼロ。親から離れる不安のほうがヒシヒシと感じられる。この「秋桜」を実際結婚前夜に聞いたらマリッジブルーが深まるんじゃないかな、自分のときに確認してみよう……と思っていたが、確認する日がないまま時が過ぎ、今後も予定がないので、結婚式前夜にこの曲を聴いた人の感想をお聞きしたい。どうでしたか……?

■百恵イズムにムラムラ!

「これは山口百恵しか歌えない!」。そう鼻息が荒くなる3曲をご紹介しよう。

■●「愛の嵐」

 歌自慢の人はぜひ挑戦を。「storm(ストーム)」を連発するサビが超難しいぞ! ヘタをすると「ストンストンストン!」と階段から転げ落ちるような発音になり、歌の緊張感がゼロになる危険がある。舌を噛む危険もある。危険だらけなので皆の前で披露する前に1度は自主練習しておこう。?

■●「横須賀サンセット・サンライズ」

 横須賀といえば百恵、百恵といえば横須賀。幼少期を横須賀で過ごしたということで、横須賀曲は数曲あり、シングル「横須賀ストーリー」は言わずもがな名曲。だが、この曲も冒頭の「横須賀ぁー↑↑」という百恵ちゃんの雄叫びが最高に高まるのでぜひこの機会にリッスン!

■●「輪廻」

 強い百恵ちゃんを堪能できる一曲。どれだけ生まれ変わっても女に生まれてやるわ! ウフフ、アハハハ……という素晴らしく粋な曲。

■百恵カバーおすすめ3選

 さて、このサブスクリプションで百恵楽曲にハマった人に、オススメカバーも3曲ほどご紹介。

■●「謝肉祭」(三浦祐太朗)

 言わずもがな、三浦友和と山口百恵ご夫妻のご子息である。

「友和と百恵の息子、カバーアルバム出したってよ」と聞いた時は、坊や、一体なにを考えているの? と、炎上大コケを勝手に心配したものだ。

 ところがなんということでしょう。聴いてどハマりした。

 百恵の声が「意志が強い女性の声」だとすると、祐太朗の声はフラれた後もガンガン長文メールを送る「こじらせ乙女の声」である。

 さらにいえば友人に「ねえアンタあの人に遊ばれてるんじゃない?」と心配されても、「でもでも絶対あの人真面目で優しい人だし」と言い張る女の声である!!

 これが恋愛木っ端みじん族に沁みまくる。同族の方、聴いて損なし。ともに泣こう。

 ところが三浦祐太朗氏、2020年6月12日(金)にご結婚のニュースが。素晴らしいことだが、幸せソングばかり歌うハッピー野郎になってしまわないか心配だ。なにとぞ頼む。お願いします。結婚した後もこじらせハートブレイクソングを歌い続けてください!

■●「さよならの向う側」(徳永英明)

 聴くと天国にもいけるが、地獄の3丁目あたりまで落ちることもできる徳永英明の「1/fのゆらぎ声」が「さよなら」の向う側にある「静寂」と「無」を感じさせる。

 ビールよりワインを相棒にリッスン・トゥ・ザ・ミュージックがオススメ。むちゃくちゃイイ男、いい女になった気分になれるはず。

■●「冬の色」(南野陽子)

 季節とアイドル歌謡は最高の相性。この曲も初期の百恵ソングの名曲中の名曲なのだが、ナンノのカバーがこれまた超アイドルで良い。「秋からもそばにいて」とセットで聴くと、切なくなりすぎて呼吸困難になるぞ!

 思い出いっぱいの世代も、サブスクで初百恵の世代も。

 夢先案内人だった彼女のしなやかな歌声に乗って、胸騒ぎの旅に出よう。

 乗るのはもちろん、銀河大陸横断鉄道。レッツゴー・百恵トリップ!

田中 稲(たなか いね)
大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー? http://www.take-o.net/

記事提供: CREA WEB

(田中 稲/CREA WEB)

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