大統領選を前に全米で広がる「児童売春陰謀論」とは

大統領選を前に全米で広がる「児童売春陰謀論」とは

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 大統領選を前に全米で急激に広がる陰謀論「Qアノン」をご存じだろうか。

 発端は2017年。米国の匿名掲示板に「Q」と名乗る人物が、政治や金融を裏で操っているとされる権力組織「ディープステイト」について書き込みを始めた。その組織には大物政治家や大企業、大手マスコミが名を連ねるという。あくまで都市伝説だが、既得権益の打破を掲げるトランプ氏の言動と重なり、この陰謀論がコロナ禍のSNSで一気に広まってトランプ支持者の間で熱狂的に信奉されている。この中でよく語られるのが、「民主党の政治家や金持ちのエリートは組織を通じて児童買春を繰り返してきた」という話。そして、「トランプ大統領は就任後、暗躍する買春斡旋組織を排除すべく、密かに闘い続けている」というストーリーが語られる。

「そんな荒唐無稽な……」と眉をひそめるような陰謀論を、なぜ多くの人が支持するのか。その理由の一端が垣間見えるドキュメンタリーが、『ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者』(ネットフリックスで配信中)だ。冒頭、「未成年者への性的虐待描写を含み、不快感を与える可能性がある」と注意喚起が流れる。何をしているのかよく分からない米国屈指の大富豪エプスタイン。彼が繰り返してきた性的虐待の実態を、被害を受けた女性たちが生々しい証言と共に語っていく。あまりにおぞましく、巧妙な手口に胸クソが悪くなるが、恐ろしいのは悪事が彼個人に留まらない点だ。英国王室のアンドリュー王子や元米国大統領のビル・クリントンらとエプスタインのただならぬ関係も明らかにされていく。

 政財界の権力者へ少女を斡旋し、共犯関係になることで権力と富を手にしてきた億万長者。その末路は実にあっけない。それ故、背後に蠢(うごめ)く権力組織の存在を想像せずにはいられないのだ。大統領選を前に見ておくべき一作である。

INFORMATION

『ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万長者』
https://www.netflix.com/jp/title/80224905

(佐々木 健一/週刊文春 2020年10月8日号)

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