いいお話では物足りない…『ポツンと一軒家』からいつの間にか「失われたもの」――青木るえか「テレビ健康診断」

いいお話では物足りない…『ポツンと一軒家』からいつの間にか「失われたもの」――青木るえか「テレビ健康診断」

※写真はイメージ ©iStock.com

『ポツンと一軒家』をはじめて見た時は衝撃を受けた。すごい番組だと思った。人も通わぬ山奥になぜか人家があり、そいつを見つけるのが衛星写真で、衛星写真というのは航空写真とは明らかにちがって、どんな集落でも都市でも「生命が感じられない」。そんな「死の世界」のような写真にずいーっと寄っていく、という始まり方がまず秀逸で、何か不穏なものを暴きたててしまう予感がある。そして一軒家にはじいさんが一人暮らしをしている。そんなところに一人で住んでいる「理由」が、いちおう語られ、別に矛盾があるわけではないが、何かがしっくりこない。妻子は別に住んでたりして、それにも「通りいっぺんの理由」が語られ、日に焼けて不鮮明な家族写真が一枚ぺらっと映される。その後は家族の話題は出てこない。

 怖い。「家庭内に何かあった末のこの状況なのではないか」と、つい考えてしまう。悲惨な妄想を喚起させられる。それでなくても山の中の一軒家と、そのふもとの集落の有様が、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」の周南連続放火殺人事件を想起させるではないか。そういう「一軒家」がぽつぽつと出現し、「これは新しいオカルト番組だ」と思った。所ジョージも林先生もなんであんなふうに笑ってられるんだ!

 ……と、勝手な思い入れで見ていたが、すぐにそんな番組ではなくなってしまいました。今のところ主におじさんやおじいさんが、「山の中で趣味に没頭するために手造りでこもってます家族は呆れてますハハハ」あるいは「昔っからここにおるしボチボチここで暮らしてますわフォフォフォ」の老夫婦ほのぼの生活を紹介して「山の中の片隅でもあったかい生活がありますね〜」みたいな、いいお話供給番組になっちゃった。

■番組は悪くないけど私はガックリ

 こっちのほうが需要あるのかなあ。「ささやかな幸福だよねー、いいよねー、だけどオレはこんな不便なとこには住めねーよ都会バンザイ」みたいな(←つい悪意が湧き出る……)。

 そんな『ポツンと〜』も秋の2時間スペシャル。このご時世なので、「過去紹介の一軒家とその現在」、不穏なものはひとつもない。趣味に生きるオジサン、実家とその土地を愛する姉弟、その姉弟の近所の老夫婦、と出てきて、どれもいいお話だった。しかし私は、山の中で巨大なアンテナを何本も立て、山道には監視カメラを設置するという前フリには「アンテナだけに電波系……」とか、老夫婦に今回電話してみたら呼び出し音だけで応答無し、というので「え、ついに……」とか、そういうことばかり考えながら見ていて、すぐに裏切られるのでさらにガックリしてしまったのだがそれは私が悪い。番組は悪くないのです。でも私はガックリするのです……。

INFORMATION

『ポツンと一軒家 愛の物語2時間SP!!』
テレビ朝日系 日 19:58〜
https://www.asahi.co.jp/potsunto/

(青木 るえか/週刊文春 2020年10月29日号)

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