ジョージ秋山に八千草薫……昭和カルチャーにどっぷり浸かった二人が語る「追悼2020」

ジョージ秋山に八千草薫……昭和カルチャーにどっぷり浸かった二人が語る「追悼2020」

岩佐陽一さん(右)、唐沢なをきさん(中央)、唐沢よしこさん(左)。写真は2019年11月撮影。© 文藝春秋

 岩佐陽一氏による、文春オンラインでのコラムをまとめた電子書籍『 令和にほえろ! 昭和トリビア集【文春e-Books】 』が10月30日(金)に発売された。

 表紙の描き下ろしを手がけた漫画家・唐沢なをき氏と岩佐氏がオンライン対談に挑戦。「昭和」をテーマに、縦横無尽にお話しいただいた。お二人にとって、2020年は多くの思い出深い作家・俳優が旅立った一年で……。

■ジョージ秋山先生の代表作は『アシュラ』『銭ゲバ』だけど……

岩佐 最近、昭和にご活躍された方々が次々と亡くなられていますね。印象に残った方はいらっしゃいますか?

唐沢 一番ガツンときたのはジョージ秋山先生ですね。まだまだ頑張っていただかなくちゃ、と思っていた矢先でした。亡くなられる少し前に、偶然、書庫をひっくり返して昔の「週刊少年マガジン」のバックナンバーを整理していたんですよ。どこを見てもジョージ先生は描いていらっしゃる……反骨精神旺盛、というだけではなく、本当にエネルギッシュな方でしたよね。これはマンガ家の鑑だと。訃報を聞いて、かなりショックでしたね。

岩佐 私もちょうど『ピコピコロボベエ』(「月刊冒険王」[秋田書店]’73年連載)を読み返していたんですよ。あれはジョージ先生が主役ですよね。

唐沢 あの時代のジョージ先生のギャグって、最初に大きな設定があって、でもジョージ先生がだんだんはみ出してきて、先生とキャラの漫才みたいな掛け合いになって終わってしまうことが多々ありましたね。

岩佐 赤塚不二夫先生の影響もあったんでしょうか?

唐沢 あったかもしれないですね。『アシュラ』『銭ゲバ』の後に『ロボベエ』『ゴミムシくん』でギャグの方に戻ってきてくれて、「これだよこれ!」って思ったんですよね。ジョージ先生も、ギャグの魂が溢れ出ていたんでしょうね。

岩佐 特にロボベエは、ジョージ先生が悪い博士にボコボコにされるときに助けに来る、単なる良いロボット的な立位置になっていって、「何だこれ?」と思いましたね。

唐沢 『ゴミムシくん』も最初は重いテーマを掲げていたけれど、だんだん実験的になっていった。めちゃめちゃ好きでしたよ。

岩佐 『アシュラ』『銭ゲバ』が有名ですが、ギャグ作品もぜひ評価して欲しいですよね。ぜひ文春さんで電子復刻してください(笑)。原稿が残っているかは分かりませんが……。でも、年齢的に早かったですよね。

唐沢 やっぱり原因はお酒かな? 仕事場に酒瓶が並んでいた、というのは伝説じゃなくて本当ですか?

岩佐 本当です。拝見しました。

唐沢 お酒は過ぎるとダメですね。

■昭和の常識が、令和に継承されていない

唐沢 小池一夫先生もTwitterで話題になってましたよね。『マジンガーZ』や『デンジマン』の作詞、知られてて当然だと思っていたんですが。

岩佐 昭和の常識が意外と継承されていないんですよね。「電球を発明したのはエジソン」ってくらいのネタですよね?

唐沢 でも、あれを機に認知されて良かったです。「デンジマン」も良い歌詞ですよね。あれぞ小池節。「かなしみの海は 愛でこげ アー!」って(笑)。

岩佐 そう歌ってる割に、出てくる怪人はハンバーガーとかなんですけどね(編注:『電子戦隊デンジマン』第10話に登場した、ベーダー怪物ハンバラー)。

唐沢 歌詞書いた後はもう知らん、って感じですよね。

■大人向け番組のノリで作られた、衝撃の『人造人間キカイダー』

唐沢 『人造人間キカイダー』(’72年)って、始まった当時は僕、結構バカにしてたんですよ。『仮面ライダー』(’71年)の亜流程度にしか思っていなかったんですが、ハマりましたね。吉川進さん(編注:元東映のプロデューサー。2020年7月に逝去)のTV版、ぜひリメイクをお願いしたいです。

岩佐 吉川さんが生前仰っていたのは、「自分は子供番組はこれまで作ったことがない。時代劇や1時間ドラマばっかりやってきた」と。子供番組が分からないから、大人向けの番組と同じノリで作っていたそうです。バイオレットサザエの回(編注:『人造人間キカイダー』第27話「バイオレットサザエの悪魔の恋」)とか、完全に吉川節が炸裂しています。

唐沢 女の怪獣をサザエにするか!? って思いましたね。

岩佐 某国民的アニメの先入観かもしれませんね。

唐沢 なるほど、今初めて気がつきました! そういうことか。バイオレットサザエの他にも、カイメングリーン、アカオニオコゼとかいましたよね。ショッカー怪人(仮面ライダーの敵)に比べてガタイが良くて、3体揃ったときには「この番組好きだわ」ってなりましたね(笑)。怪獣好きにはたまらなかった。

唐沢 以前、『キカイダー』がリブート(編注:『キカイダー REBOOT』。2014年公開の特撮映画)されたときに思ったんですけど、キカイダーは頭の半分はメカがカチャカチャ動いてるんですよね。リブート版ではそこらへんを省略して、今どきのメカっぽく「ちょっとだけ見えてる」デザインになっていて「キャラへの理解が薄いなあ」と思いました。現実的でなくても良いから、細かいメカがぎっしり詰まってて欲しかったです。リメイクされる場合はぜひその辺りを重視して欲しい!

■制作現場のこだわりが強い方々のおかげで、今のオタクがいる

岩佐 この間八千草薫さんが亡くなって、『ガス人間第1号』(’60年)を観直したんです。その流れで『透明人間』(’54年)や『美女と液体人間』(’58年)も観直したんですが、『電送人間』(’60年)が面白かったですね。

唐沢 あのシリーズはだんだん映画として様になっていきますよね。『電送人間』は設定もサスペンスの見せ方も上手いし。

岩佐 『電送人間』は走査線が走る、電波がブレる、とかの表現が面白いですよね。

唐沢 今は走査線も何もないですけど、リアルですよね。

岩佐 全身に走査線が入ってる人いたらビビりますよね。歩くモニター、みたいな。でも液晶ではない。

唐沢 『科学忍者隊ガッチャマン』(’72年)のゴッドフェニックスのモニターの走査線が、上から下にって動くのすごいですよね。タツノコプロは違うな、と思いました。この細かさだぞ! と。

岩佐 タツノコプロの妙なこだわりですよね。

唐沢 制作現場で、こだわる人がきっといたんですよね。細かいこだわりの破片が集まって、オタクができているんだと思います。令和の作り手にも、きっといるはずですが。(続く)

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この後、対談は安彦良和先生の名作や、特撮番組の珍奇な怪人の話に……。
?対談の続きは電子書籍『 令和にほえろ! 昭和トリビア集【文春e-Books】 』をご購入の上、お楽しみください。

唐沢なをき(からさわ・なをき)

1961年北海道生まれ。ギャグ漫画家。1985年『無敵刑事(デカ)』でデビュー。 主な代表作に『電脳なをさん』『まんが極道』『俺とねこにゃん』『カスミ伝』『ヌイグルメン!』など。 2012年10月より、読売新聞夕刊にて4コママンガ『オフィス ケン太』を連載開始。

岩佐陽一(いわさ・よういち)

1967年東京都生まれ。フリーライター、編集者、プロデューサー。株式会社バッドテイスト代表取締役。懐かしもの系全般のライターとして活動する傍らテレビ番組や映画等を企画・プロデュース。著書に『70年代カルトTV図鑑』(文藝春秋)、監修に『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねこ娘大全』『おジャ魔女どれみ OFFICIAL CHARACTER BOOK どれみ&おんぷ大全』他多数。企画・製作テレビドラマは『帰ってきた 行け! あひるお姉さん』(TeNY)など。

(「文藝春秋電子書籍」編集部)

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