ロンブー・淳「『ヒプノシスマイク』、これは俺好きなアニメですね」 地上波番組の作り方に、革命を起こしたワケ

ロンブー・淳「『ヒプノシスマイク』、これは俺好きなアニメですね」 地上波番組の作り方に、革命を起こしたワケ

水野雅之(右):毎日放送プロデューサー 2000年入社。2020年最も企画が評価された『放送人グランプリ企画賞』を受賞した「プレバト!!」、他にも「林先生の初耳学」、「教えてもらう前と後」など、現在の毎日放送のゴールデンプライム帯の3つの番組を手がける。 ©MBS

 地上波、YouTube、Netflix他、数えきれないプラットフォームが無数のコンテンツを発信している世の中で今、見るべきものは何か。テレビやネットなど、様々なジャンルの垣根を超え活躍するロンドンブーツ1号2号の田村淳が、時代を席巻するクリエイターから、面白いコンテンツを聞く番組「 田村淳のコンテンツHolic 」より、一部を紹介する。

◆ ◆ ◆

淳 あら、なんか水野(雅之)さん、今日シュッとしてるな。

水野 一応テレビ出るのは初めてなんで。

淳 来ましたね、MBSのエースが。

水野 すいません、エースって言っていただいて。

水野 では1つ目のオススメコンテンツです。ドラマ「 チャンネルはそのまま! 」です!

淳 Netflix? 知らないなー!

水野 まず何が面白いかっていうと、次々と事件が起きるっていう王道系ドラマなんです。最近、「ドラマの王道」が再認識され始めている気がしていて、特に今年流行った韓流ドラマ「梨泰院クラス」とか「愛の不時着」とか、 “ここでこんな偶然の出会い起きる?”って思ったり……、日本のドラマだったらもう少し自然さを装ったりしますよね。でも、一時代前の、ベタでトラブル続きで都合がよいぐらいのレトロな感じが、実は心地がいいんじゃないかなと思うんです。

淳 視聴者のために綿密に練り上げた「不自然じゃない形」が、サービス過多になっていてシンプルではないってことですよね。わかるなー。だから俺、ドラマから離れたもんな。 

水野 ハハハハ。このドラマもすごく分かりやすい王道で、「ドラマを作りたかった」っていうスタッフたちの気持ちがすごく伝わってきますよ。で、その中でも、一番すごいと思うのが、制作したHTB(北海道テレビ)さんが、自分たちの電波じゃなくてNetflixにあげたんです。ドラマの制作費って、北海道地区だけにしか放送しない広告費では採算が合わないんですよ。でも、Netflixと組めば世界に配信ができて、かつ制作費がもらえる!

淳 へえ!

水野 交渉条件だったとは思うんですが、「チャンネルはそのまま!」は、Netflixで放送した後に、自局の北海道テレビで放送をしたんです。 

淳 それをOKって出来るテレビ局強いなー!

水野 さらに、北海道テレビが放送したら、なんかこれ面白そうだぞって、テレ朝系の違う地区のローカル局が放送したんです。そうすると、段々話題になり始めるじゃないですか。最後には、この番組が民放連の賞のグランプリを獲ったんです。

淳 へー、きっかけは民放連じゃないのにね。

水野 最終的に何が起きたかというと、このグランプリを獲った記念にテレ朝が全国ネットで放送したんです!!

淳 すごい戻り方してんなー! 中央を動かしたってことですよね。

水野 そうです! そのサクセスストーリーでやっぱり面白いのは、「テレビ制作者の舞台はとっくに地上波だけじゃない! “偉いさん”に忖度しなくていい!」ってこと!

淳 ハハハハ!! めっちゃめちゃ切れ味いいですね!

水野 ハハハハ。

淳 「ヤバイそれ言わんといて!」ってスパーンと首をイカれた人、何人かいるんじゃないかな? でも、気持ちいいぐらいの正論だな。

水野 地上波の企画ってOAされるまでに編成・営業、そして役員の思いもかかわってくるんですよね。だから皆さんを説得し切るっていうのはすごく時間がかかる。それで、北海道テレビの藤村さんに後から聞いたんですが、「チャンネルはそのまま!」は「キー局のテレビ朝日には、そもそも通そうとも思わなかった」って言ってたんですよ。

 1個1個、順を追って、皆さんのOKを貰わないといけないスピードでは、新しいメディアには勝てないじゃないですか? もちろん制作費がNetflixから出ていても、苦労があったと思います。ただ、その辺のやりくりもすごく上手なんです。例えば、セットとしてテレビ局が2つ登場するんですけど、工夫があるんです! 見てください。

水野 実はこのとき北海道テレビは新社屋を建てていて、新社屋がちょうど建て終わって引っ越す前にこのドラマを撮ったんです。なんと、主人公のいる局は旧社屋を使っているんです!

淳 両方とも自社ビルなんだ!

水野 だから全然ロケの場所代はかからず、それでいてテレビ局のディティールも撮れる。

淳 深いなー、この人たち!

水野 そうなんです。すごく考えられてるドラマですよね!

淳 そうなってくると、コンテンツを作る力は各テレビ局が持ってる。その力を、なかなかハンコを押してくれない自社の人に届けるよりも、「もういいや、他所でお金出してくれて俺たちの能力買ってくれるんだから、まずそっちで作ろうよ」っていう動きが加速していくんじゃないですか?

水野 そうなんです。だから地上波がオールドかどうかって考えるときに、僕らのモノづくりがオールドなのか、僕らのスキル不足なのかっていうのは話が別なんです。僕自身は、僕らのスキルや発想力については萎縮する必要はないって思っている。また、そう思ってる地上波の制作者が増えているような気がします。

淳 テレビっていうもの自体がどう変化していくかわかんないけど、そこにいる作り手は新たな場所を求めて今まさに動き始めてるっていうことですよね。色々なテレビマンが今日の水野さんの話聞いたら、「そうそうよくぞ代弁してくれたよ」っていう感じになってると思うな。

水野 2つ目の紹介コンテンツは「6秒商店」です。

淳 あっ、知ってる! ありそうでないみたいなやつですよね。

水野 そうです。主にTwitterで見てもらうっていうことを意識してるから6秒なんですよ。で、紹介したいポイントは「強力な中毒性のある動画パッケージ」です。日常のあるあると、自分たちのクリエイティブな能力を掛け合わせて動画を作ってるんですけど、6秒で勝負してるだけあって説明がなくても楽しめるんですよね。

※「6秒商店」とは
映像を軸としてあらゆるエンターテインメントを作り出す集団チョコレイト制作。日常の「あるある」を上手く使い、あったらいいなという商品アイデアを生み出す6秒動画。

水野 「6秒商店」は、Twitterで1個ずつクリックするっていうよりは、今見てもらったように、YouTubeで1個再生して、次の動画、次の動画ってずーっと再生されてく流れで見るのがオススメです。

淳 連続性を持って、ってことですね。

水野 僕らが地上波で作るときもすごく気にする「パッケージ力」っていうやつなんですけど。同じBGMがずっとかかる番組は、古くは「トリビアの泉」や、「ナニコレ 珍百景」等があります。でも、6秒まで縮めることは地上波ではみたことない。そういう意味で、すごく強いコンテンツだなと思いました。

淳 はー……、そういう視点なのか。

水野 中には、あんまり自分の好みじゃないものってあるじゃないですか。でも、次はなんだろう、次はなんだろうって見てしまう。これがパッケージ力の強さですよね。

淳 負の力が溜まりづらいってことですよね。20個中1個、好きなものがあっただけで、またその好きを探そうとするってことでしょ。

水野 そうなんです。

淳 なるほど、こうやって捉えるのね。「オモロ!」で、俺は終わっちゃってるもんな。

水野 で、その中でもこれが、僕が一番好きな動画です。

淳 あー、シロップって実は味がほとんど一緒って言いますもんね。

水野 今、淳さんがおっしゃった通りで、雑学を知ってるとより楽しめるんですよね。かき氷のシロップって、色が違うだけで、味が一緒だけど、食べてる人たちがレモンって思ったりイチゴって思ったりするわけですよね。その雑学をベースにして「照明を変えるとみなさん自分の好きな味が食べられるでしょ」って。この気づきは、すごい気持ちよかったんですよね。

淳 アンチテーゼ的なのもあるし、自分にはない発想が展開するから、脳が気持ちいいですね。

水野 気づけた自分も、ちょっと嬉しかったりするじゃないですか。

淳 「あっこれそういうことね」ってね。 俺、早々と(知ってるって)言っちゃったのはそういうことですからね。

水野 ハハハ。やっぱり僕も「林先生の初耳学」を作ったから、ベースの知識があると笑えるっていう瞬間に快感を覚えるんです。普段からインプットも苦じゃないというか。

淳  みんながコンテンツを作る時代に、「6秒商店」はいい教材ですね。

水野 次に紹介するのは「テレビの作り方に革命を起こす異ジャンルのコンテンツ」、「ヒプノシスマイク」です!

淳  知ってます! ヒプノシスマイクに出ている声優さんと、この前仕事しました。

※「ヒプノシスマイク」とは

2017年にスタートした、18人の声優達が様々なイケメンキャラクターになってラップを歌う音楽原作ラッププロジェクト。

CDには声優達が歌うラップ曲だけではなく、声優達のドラマトラックも収録され、ファンの心に刺さり瞬く間に認知された。

その後もコンサートや漫画化、さらに今年10月からはアニメがスタートされるなど、大人気ラップコンテンツになっている。

水野 ラップ好きの人たちに聞いたんですけど、最初はどうせ女性ウケの二次元コンテンツと思ってたんですって。だけど聞いてみると物凄くちゃんとラップが出来ている。声優さんだから声が聞きやすいんです。

淳 なるほどね。元々の声も音感もいいわけだから。

水野 実は、Creepy Nutsの2人が曲を提供してるんですが、R-指定さんがラジオで「ここまで上手く歌われたら僕らの仕事が無くなります」って言っていました。

淳 本職の人たちが「提供したい」ってなるのがすごいですよね。

水野 クオリティの高さが認められちゃったんですよ。

淳 すげー。超えてっちゃったんだな。

※ドラマ部分のストーリーの面白さも、ヒプマイの人気の理由の一つ。ストーリーの舞台は、武力による戦争が根絶された世界。そこでは、人を殺傷するすべての武器が製造禁止となっている。しかし、それでも争いがなくならない世界で、「ヒプノシスマイク」というマイクを使ったラップで戦う。

淳 あー、なるほどー! 今までの「必殺技―!」みたいなのがラップになってるんすね。

水野 このキャラクターの職業とか年齢設定が、他の二次元系よりすごくバリエーションがあって、幅広い層の女性がファンなんですよ。

淳 俺がずっと手を出さなかった、「ラブライブ!サンシャイン!!」っていうアニメについて、「いいからとにかく触れてみろって」と天津の向に言われて、触れてみたら止まらなくなったっていう感覚に似てますね。これは俺好きなアニメですね。

水野 僕もキスマイの宮田くんに同じようなこと言われました。で、実はこのコンテンツ、「SNSが湧き立つ!地上波の作り方に革命を起こす配信コンテンツ」なんです。

淳 どのあたりがですか?

水野 大阪でヒプマイのLIVEがあったとき、大阪城ホールの正面にヒプマイのグラフィティが飾られたんですね。それを描いたのがKAZZROCKさんっていう、世界的スプレーアートの第一人者なんです。

淳 おお、KAZZROCK! はいはい。

水野 そのKAZZROCKさんに、「プレバト!!」のスプレーアート査定の先生を頼んだんです。それでOAの時に、アニメ系に詳しい音響効果のスタッフが、その企画のBGMにヒプマイの曲を使いまくったんです。そしたらヒプマイのファンが物凄く喜んでくれて、「プレバト!!」が一気にTwitterでトレンド入りしたんですよ!

淳 へー!!

水野 もちろん、「プレバト!!」の企画は企画として、何の違和感もなく見ていただける。だけどヒプマイのファンにとっては、ヒプマイのBGMのイントロ大会がSNS上で(行われている)。

淳 あー、もう勝手に違うように楽しみはじめたんすね。

水野 流れてる瞬間に「この曲流れた」って、どんどんタイムラインに流れてくる。

淳 楽曲1つで、新しい視聴者層を取り込めるってことですね。

水野 今までの音効さんは、放送されるVTRに対して「こんなBGMが合ってると思う」っていう自分のセンスでBGMをかければ良かった。でもこれからは、Twitter等でバズるか、っていう観点を持ってるかによって、ネットの盛り上がり方が変わるんです。もちろん、地上波のコンテンツに変な影響を及ぼしてたらダメなんですけど。

淳 本編で違和感がある音楽使ってたら、「違う」と水野さんも言いますもんね。

水野 だけど、ヒプマイの音楽が流れてるから「プレバト!!」を見て、「見たら面白かった!」って視聴者が純粋にプラスオンされていく演出。それは、(内容の面白さに影響を与えないという前提では)僕が考える限り唯一の演出なんです。

淳 なるほどね。

水野 ちなみに淳さん、実は今日「コンテンツHolic」の放送始まってから、今の時点でもうヒプマイの曲が14曲、使われてるんです。

淳 えっ? すげえ仕掛けしてくんじゃないですか。

水野 ハハハ。

◆「 田村淳のコンテンツHolic 」は TVer 、 MBS動画イズム でも配信中です。

(田村 淳)

関連記事(外部サイト)