「引くくらい泣いた」朝ドラ「エール」野間口徹が明かす「志村けんさんへの感謝」

「引くくらい泣いた」朝ドラ「エール」野間口徹が明かす「志村けんさんへの感謝」

野間口徹(NHK提供)

 11月23日(月)からいよいよ最終週が始まるNHK連続テレビ小説「エール」(総合 午前8時〜ほか)。「喫茶バンブー」の店主・梶取保を演じる野間口徹(47)が「週刊文春」の取材に応じ、撮影の舞台裏や志村けんさん(享年70)との想い出について語った。

■仲里依紗との夫婦役にツイッターでは…

 いまやドラマや映画に欠かせない名バイプレーヤーの野間口。朝ドラの出演も「あまちゃん」や「とと姉ちゃん」など、この10年で実に6回を数える。

「今までは主人公たちと敵対したり、いじめたりする役ばかりでした。優しく見守る人の方がやっていて難しいなと常々思っていたので、寄り添う側だと聞いて驚きはありましたね」

「エール」で演じるのは、主人公の古山裕一(窪田正孝)と妻・音(二階堂ふみ)が東京で構えた自宅の目の前にある「喫茶バンブー」の店主。保は妻・恵(仲里依紗)とともに、裕一や音の良き相談相手となってきた。

 ドラマでは保と恵のコミカルな掛け合いも視聴者の支持を集めたが、仲とはどんな役作りをしていたのか。

「仲さんは最初すごく役について悩んでいらっしゃいました。すごくテンションが高くて突飛な役ですから(笑)。『テンションをどうもっていっていいか分からない』と言っていましたね。演出の吉田(照幸)監督とも話をして、最初の収録の時に『このぐらいのテンションで』というのは決めて。それからはもうバッチシでしたね」

 仲は4月クールの「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ系)で夫を殺害した妻役、野間口も昨年放送の「あなたの番です」(日本テレビ系)でストーカー気質の主人公の元夫役に扮するなど、揃って猟奇性の強い役柄を演じていた。

「最初の頃、いろいろTwitterとかで言われていましたね(笑)。僕と仲さんが夫婦役ということは、『絶対喫茶店の裏に死体が眠っているはずだ』とか。僕も殺人犯の役が多いので、仕方ないよなって思いました。だけど、今回は2人とも、ただただ良い役でした(笑)」

■放送開始直前に飛び込んできた訃報

 今年3月30日に放送をスタートさせた「エール」。その直前の29日、新型コロナウイルスによる肺炎で、西洋音楽の重鎮・小山田耕三役を演じる志村けんさんが亡くなった。野間口にとっても、志村さんは非常に大きな存在だったという。2人は2014年から不定期に放送されていたコント番組「となりのシムラ」(NHK)で共演していた。

「志村さんが亡くなられて、こう、心の拠り所を無くしたような気持ちになりました。よく『となりのシムラ』でご一緒していて、偉大な方で近くにずっといられるもんだと思っていましたから。

 僕と同世代の人は、きっと皆さん、人生で最初に面白いと思えたものは志村さんに教えてもらったのではないでしょうか。だから、初めて共演した時は『志村けんだ! 本当にいるんだ!』って感動しましたね。『後光が差す』ってこういうことを言うんだって思いました。

 ある時、喫煙所に志村さんがポツンと一人でいらっしゃって、タバコを2人で吸うみたいな状況になってしまって。『ずっと好きでした』みたいなことを伝えると、『あ、ありがとうございます』と返して下さいました(笑)。嬉しかったですね。

 でも、普段の志村さんは、あの舞台で底抜けに明るい感じとは違うんです。志村さんから『お願いします』なんて言われても、声がか細くて『えっ?』って何回も聞き直した記憶があります。とってもシャイな方でした。ただ、『エール』の現場では一度もお会いしていないんです。だから、亡くなったと聞いた時は余計にショックでした」

■役者をもう辞めようと思った

「エール」の撮影も4月1日から中断。収録が再開されるのは、およそ2カ月半後の6月16日のことだった。

「志村さんが亡くなって、エールの撮影も中断して、4月4日に初日を迎える予定だった舞台『桜の園』も全公演中止が決まりました。目の前の仕事がどんどんなくなって、役者って本当に必要な存在なのかな、必要とされていないんじゃないのかなって思ったりもしました。そのことは妻にも伝えたんです。彼女は訪問介護の仕事をしているんですが、僕も役者はもう辞めて、介護のアルバイトをしようかと思いましたね」

 そんな野間口を救ってくれたのは、同じ業界のスタッフたちだった。

「普段は忙しくて絶対に見られない朝ドラを自粛期間中、皆さん、再放送で見てくれたんですね。『やっぱり朝ドラ面白いね』『バンブーのマスターいいね』って言ってもらえて。そのことで気持ちを持ち直したんです。再放送まで見てくれて、再開を待ってくれている人たちがいる。そういう方々に恩返しというか、感謝をしながら、やらなきゃいけないと強く思いました。だから、『エール』があってよかったなと本当に思いましたね」

■台本にないことを仕掛けられて

 昨年9月のクランクインからコロナ禍での収録中断を挟み、1年以上。すでに撮影は全て終了しているが、オールアップの挨拶ではあの人のことを思い出して大泣きしたという。

「ギャン泣きしてしまいました。手短にコメントしようかと思ったんですけど……、志村さんが亡くなったことが一番大きくて、いろいろなことが駆け巡って、感謝しかないなと思いました。感謝って常々、人に伝えていないとダメだなって。次でいいやと思わないようにしようと、この1年で思いましたね。

 4、5年前、志村さんの体調が悪かった時があったのですが、それでもあの方はすごくストイックに笑いを追求されるんです。時間をかけて、『この笑いがいい』『こうしたい』とすごく詰めて仕事をされる方。台本にないことを仕掛けてこられることもありました。で、アドリブで返すと、志村さんが口の端で少しだけニヤッとする。『返してきたな』という顔をされる時があって。決して後で良かったと褒めてくれるタイプではないんです。でも、僕としては、あの志村さんに認めてもらえたような気がして、すごく嬉しかったですね。

 オールアップの挨拶で、志村さんのその顔が浮かんだ時、僕はもう言葉が出てこなくなってしまって。すごく泣いちゃって。自分でも引きました(笑)。

 だけど……、志村さんって誰もが知っていて、ホント、日本中の人の兄貴というか、お父さんというか、そういう存在だったと思います」

 その志村けんは、最終週で再登場することが決まっている。「喫茶バンブー」での野間口の演技とともに長きにわたる物語の結末を楽しみにしたい。

 11月19日(木)発売の「週刊文春」では、野間口のインタビューのほか、森七菜や志田未来ら共演者が明かす名場面、プロデューサーや監督が語る撮影秘話、窪田と二階堂の知られざる関係など、「完全保存版」と題して5ページにわたって「エールの秘密」を特集している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年11月19日号)

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