恋敵にも幸せになってほしい……物語の行方に悩む冬ドラマ『この恋あたためますか』――亀和田武「テレビ健康診断」

恋敵にも幸せになってほしい……物語の行方に悩む冬ドラマ『この恋あたためますか』――亀和田武「テレビ健康診断」

中村倫也 ©AFLO

コンビニのアルバイト店員、井上樹木(きき・森七菜)は挫折した地下アイドルだ。明るく一途な性格だが、体良くグループを卒業させられ、凹んだ日々が続く。

 唯一の気晴らしは、大好きなコンビニスイーツの新商品を、他店もふくめ全部食べてSNSに感想をアップすることだ。

 樹木が働くココエブリィは、万年四位のコンビニチェーンだ。新たに提携したネット通販会社から、新社長として浅羽拓実(中村倫也)が送りこまれる。

 頭は切れるし、おまけにハンサム。しかし他人を信じず、ビジネスには非情。そんな浅羽と樹木が出会う。彼女のスイーツへの情熱と才能を見抜いた浅羽は、樹木に新企画を任せる。

 社長とバイト店員。樹木はまだ二十一歳だ。生き方も性格も正反対の二人が、仕事を通して変化する。

「他の店にはない、新しくて売れる商品を作れ」。上から命じる浅羽に「何、このオッさん」と樹木は反発する。しかし浅羽は、社内の淀んだ体質を変える必要を説き「つまり、君が必要だ」とクールに告げる。

 出たっ。必殺の口説き文句だ。誰かに必要とされている自分。樹木の気持ちに火がついた。再起動だ。明るくて元気な頑張り屋さんの森七菜の表情と動きが生き生きしてるんだよ。

 経験もない新人に何が作れるんだ。そう思っていたスイーツ課の社員も、彼女の発想と情熱に引っぱられる。私もワクワクする。

 そして恋も切ない。先輩社員の北川里保(石橋静河)は浅羽の元カノだ。優しくて聡明な大人の女性だ。浅羽との再会で、里保も(やり直して、みようかな)と思い始めている。

 恋敵が、高慢で意地悪な女ならば、見る側も樹木を文句なく応援できる。

 だけど石橋静河が清楚にして健気、まっすぐな気質の持ち主なんだ。里保にもやはり幸せになってほしい。そう悩む私である。

 もっと切ない役を演じるのは、樹木と一緒に仕事する新谷誠(仲野太賀)だ。浅羽の地元での後輩だ。樹木のひたむきなスイーツ愛を間近で見て、夢中になった。先輩の浅羽と嬉しそうに寄り添う彼女を見て、泣きそうな顔になる太賀君を見てると本当に切ない。

 樹木が作ったシュークリームは、いまセブンイレブンで発売中だ。表面のチョコクッキーにまぶしたザラメが舌に刺激的でね。裏のシュー皮はもちもちっとして対照的。中身はやや濃い目のチョコクリームだ。

 もう十日間以上、このチョコシューを食べている。最初はすぐ売り切れ。半径三キロ圏のセブンに通い、何時に入荷するか訊いた。配送時間が店によって違うの。どの店も十五個。

 コンビニを回ってチョコシューを入手する。こんな行動に駆り立てる力が、このドラマにはあるんだ。

『この恋あたためますか』
TBS系 火 22:00〜
https://www.tbs.co.jp/koiata_tbs/

(亀和田 武/週刊文春 2020年12月3日号)

関連記事(外部サイト)