姉宛の年賀状を庭に埋めていた…鳥居みゆきが語る「コンプレックスとの折り合いのつけ方」

姉宛の年賀状を庭に埋めていた…鳥居みゆきが語る「コンプレックスとの折り合いのつけ方」

鳥居みゆきさん

「容姿なんて、魂がとりあえず入ってる箱です」鳥居みゆきが語る“女芸人”というレッテルの理不尽 から続く

「ブレイクした時に死ぬ」「35歳で死ぬ」過去のインタビューで度々そう話していた鳥居。「今は余生」と語る鳥居の、生と死に対する並々ならぬ興味は今新たなモチベーションとして彼女を突き動かしている。

 友だちが欲しくて芸人になろうと決めた鳥居は、この世界で友だちを見つけたのか。生きづらさの向こう側にあったのは、果たして。(全3回の3回目/ #1 、 #2 を読む)

◆ ◆ ◆

■10人に1人わかってくれたらいいな、で始めたことだったのに

――プライドを捨て、ポップにして……見事ブレイクを果たしましたよね。

鳥居 そんなブレイクしてないと思ってます。前に「一発屋芸人特集」企画のサンミュージックの枠に私入ってなくて。「えー、私入ってないんだ」って言ったら、チーフマネージャーに「一発もあててないじゃん」って言われたんですよ。だから、やっぱそうなんだと思って。

――(サンミュージックの一発の壁高いな……)テレビはどうでしたか、鳥居さんにとって居場所だったんでしょうか。

鳥居 うーん、私がテレビに出だした時は「放送コードを延ばした人」と言われたんですけど。それでもやれること少ねぇなと思って。言いたいことを言ったらカットされるし。でもなんか……人に合わせて、色んなMCに合わせてって結構しんどかった。

――しんどいと思いながら出ていたんですね。

鳥居 やりたいことは単独だから、知名度を上げたいなと。単独がやれれば私は幸せです。私、血が好きなんですけど、血とか骨とか、そういう生や死に関してすごく興味があって。それはお笑い関係なくずっと好きで。

 ただ、なんだか違うなと思ってきたのが、単独を何回かやってきた頃、グロから考えるようになった時があったんですよ。お客さんが求めてるから、グロいことから考え出そうという発想になっちゃった時があって。

 あっそれはよろしくないなと思った。私の好きなことは人からみたらちょっと変わってるかもしれないけど、「変わってる」から始めちゃだめじゃんって思ったんですよ。

――すごく難しいですね。

鳥居 私がやりたいことの脳みそをコントにして出した時に、10人に1人はわかってくれたらいいなで始めたことだったのに、今は(10人のうちの)10人にしたくなってるじゃんって思っちゃったんですよ。100笑いをとろうとしちゃった。

 それぐらいの時期に、PVを自分で監督して撮らせてもらったんですね。その時に規制がかかった。リストカットのシーンがあったんですけど、そのシーンをカットしてくれと言われたんですよ。ちょうどそういう事件があった時で。

――あぁ。

鳥居 その時に、私はそのシーン、伝えたいことの中の1個だったから、別になくてもいいやと思ったんですけど、チーフマネージャーがなぜかすごい私をフォローしだして。会議中に「鳥居の世界は血がないと成立しないんですよ!」って。あれ、私のことわかってくれてるんだなと思ったんですよ。

 でもその後に「鳥居から血を取ったら何が残るんですか!」って。いや残るよー!って。

――熱い(笑)。

鳥居 その熱さ違うって(笑)。ああ私、そう見られてたんだって。そういうこともあって、じゃあ一回グロくないのを作ろうって変わりました。あまのじゃくなので。

■35歳いつまでも来なくて、気づいたら36歳やってたんですよ

――「ブレイクした時にいつ死のうかなと思ってた」というのは、本当ですか。

鳥居 そうなんです。

――「小島よしおはそれができなかったから死に損ないだ」というのは?

鳥居 そうそう、死ぬタイミングを誤ってます。でも私も誤ってます。でも死んだように、もうほんとに何も思いのない余生を楽しんでる感じ、今。余生。びっくりしたのが、私ずっと「35歳で死ぬ」って言ってたんですけど、35歳いつまでも来なくて、気づいたら36歳やってたんですよ。

――どういうことですか?

鳥居 イベントで計算間違えて「36歳の誕生日おめでとう!」ってやってたら、ほんとはその時35だったんです。事務所も私も36だと思ってて。

――そんなことあります??

鳥居 それに気づかず、その後東スポさんの記事で年齢が間違ってたからマネージャーが電話かけたんですよ。「ちょっと年齢間違ってます」って。そしたらこっちが間違ってた(笑)。

――よかった、鳥居さんはまだ死んでない。

鳥居 なんかうまい具合死ねなかったんですね。空白の35歳。あとこれもよくなかったと思うんだけど、毎年「28歳おめでとう生誕祭」をやってるんですよ、私。毎年28歳。成人式を2回やっちゃう安西ひろこさんみたいな感じで。

――(笑)。

鳥居 毎年毎年28歳おめでとうをやってるから事務所も自分もわけわからなくなりました。

――「28歳」は何か理由があるんですか。

鳥居 永遠の28歳。あの28歳の時のまま止まってるんだよ。それは女芸人に迎合したところあります。女芸人って若くいたいとか思ってなきゃいけないんでしょ、っていう。

――別に若さに固執してるわけじゃないのに、なんでしょうね、「老化」って言葉がネガティブなのか。

鳥居 私、コロナで2回流れた単独ライブ、すっごい準備したけど、次にできるとしたら一切もう白紙にしてね。書き直す。あれは古い脳みそで書いたものだから。だって生まれ変わりました、私は。細胞ってそうなんだって。『テセウスの船』と一緒だね。

――『テセウスの船』ですか?

鳥居 私を構成しているパーツを全部新しくしたら、それは私なのか、それとも別物なのかっていう。老化っていうけど、細胞って生まれ変わってるから、だったら今が最新じゃないのかな。

――老化ではなく新しくなっている。

鳥居 脱皮ですよ。日々脱皮してるんですよ。

――日々生まれ変わりながら、鳥居さんは今どんな気持ちで芸人をやっていますか。

鳥居 今ね、まだ折り返し地点。給水所ぐらいかな。私、フルマラソンの時に給水所で間違ってポカリを体にかけちゃって。後でベットベト、ネチャネチャしてきて。

――(笑)。

鳥居 でもそんな感じ、今。首ベットベトになりながら今生きてますね。だけどそういう枷があるからこそ楽しいんだなみたいな感じもある。私不自由じゃないと自由になれないから。なので制限がないと、それを破った時の喜びもないじゃないですか。

――「何やってもいい」って発注されるのが私も一番辛くて(笑)。お題をもらえないと何もできない。

鳥居 私もそうですよ。「鳥居さんここで自由に」みたいな台本、こんな不自由なことないよっていう。ある程度制限がないとね、人って生きづらいですよ。それを破るかどうかだからね。

■生きづらさを納得して楽しめるようになりましたね

――芸人になるきっかけになった「友だちを作る」は達成されたのでしょうか。

鳥居 この間ナイツの塙さんが「俺たち友だちだよ」って言ってくれたから、そうなのかもしれない。でもお互い大人になって確認し合わないじゃないですか。私確認し合ってないからひとりもいないのかもしれない。

――確認するのちょっと怖いですよね。

鳥居 学生時代って友だちいない人は異端じゃないですか。なので異端になったらダメなんだって思い込みすぎてたんだと思います。今の私で学校にいたら、友だちが欲しいってたぶん思わないと思うので。その時はその世界が全てじゃないですか、学校が。

――芸人になって広がりましたか、世界の範囲は。

鳥居 私がやるネタは友だちが増えないネタでした。でも友だちが欲しいというのは、人に認められたい、自分が存在してるっていう証が欲しいってことじゃないですか。だけどネタで認められたら、自分の存在を認められたということだから、友だちもういらないんですよ。芸人になって、そこはまわりくどいことしなくてよくなった。

――そう考えて、生きやすくなりましたか?

鳥居 生きづらいですよ。だけど生きづらさを納得して楽しめるようになりましたね。昔はすぐ「生きづらい」「もういない方がいいんだな」「死んだ方がいいんだな」ってなってたんですけど、最近ではそれこそ原動力なことに気付いて。その反動ですっごい暗いネタが書けたりするんですよ。

 ほんとに落ち込んだ時に「もうやめる、もうやめたい、死にたい」ってマネージャーさんにライン送ったら「そんなことより単独ライブどうします?」って返ってきて。

――(笑)。

鳥居 あっこういうことだなって。全てはそうだと思って。それですごい救われたことがありました。ほんと、自分だけでぐじゃぐじゃぐじゃぐじゃしてないで、それを違う風に出力できた方がいいじゃんって。だから死にたいってなった時こそパソコン開きます。あー書くかって。

――落ちた時に書いたネタは面白いですか?

鳥居 そうですね。深みがあるというか、情念がこもってる。あとあれですね、芸人やるということを親にまだ報告してなくて。

――えっ。

鳥居 「私お笑い芸人になるから」って言ってないんですよ。でも今更報告って聞きたいもんなのでしょうか。

――でも……ご両親も聞いてはこないわけですよね。芸人なのかい?って。

鳥居 そうなんですよ、聞いてこないんですよ。

■姉宛の年賀状を庭に埋めた…幼少期のコンプレックス

――幸せな既読スルーがあるんですね、お互いに。

鳥居 そうね。なんか私の名前、すごく想いがあってつけたらしいんですよ。だからそれに背いちゃってないかなって思うと言いづらかった。

 私、姉がいて、姉は「ちはる」っていうんですけど、親が「いや、その時松山千春にハマってたから」って言ってて愕然としてましたね。それを思い出して、なんか悪かったなと思って。

――お姉ちゃんへのコンプレックスありますか?

鳥居 うん……姉とはずっとしゃべらなかったですよ。私がほんとに暗いのに、姉はすごく社交的で明るくて、色んな友だちがいっぱいいて。年賀状もすごいきてましたし。姉にきた年賀状を庭に埋めてましたもん。

 私一時期すごい太ったんですよ。すっごい太って、だけど姉はきれいなままで。もともとあったコンプレックスがそれでまたひどくなって。大人になって、私の方が稼ぐようになってやっと許せたんです。

――自分の方が勝てる何かを見つけたからですか?

鳥居 勉強は私の方ができたけど、それで相殺にはならなかったんですよね。収入だったんです、自分の中で。自分なりの相殺点を見つけることなんでしょうね。こことここでチャラ、みたいな。

■モヤモヤは一回解決しないと先に進めない

――鳥居さん「生きづらい」とおっしゃるけど、人生の折り合いのつけ方はとても上手な気がします。

鳥居 ほんとですか。

――モヤモヤをちゃんと一回解決してから前に進んでいる。

鳥居 そうなんですよ、解決しないと進めないですよ。

――先に進めない(笑)。

鳥居 だから今自分の中で問題になってることや社会で気になってることを、単独ライブでいっかい解消して。じゃないと次のテーマに進めないので、だから絶対に早くやりたい。

――「男だったらよかったな」って思ったことありますか。

鳥居 男だったら? ないですね。みんな早く人間としてみるようになってほしいとは思う。

――性別ではなく。

鳥居 うん。性別で分けるのって結局、肌の色で分けるとか、国で分けるとかと一緒じゃないですか。だからいらないと思う。

 みんな一回のっぺらぼうになったら心で会話できるのになって思う。でもみんなそこに絵を描くでしょう、のっぺらぼうになったら。

――そうかもしれない。

鳥居 それで個性を出すんでしょう。結局一緒なんですよ。

写真=榎本麻美/文藝春秋

(西澤 千央)

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