日本のスマホゲー“ガチャ”全盛時代がついに終わる? 新しい流れを象徴する3タイトルとその理由

日本のスマホゲー“ガチャ”全盛時代がついに終わる? 新しい流れを象徴する3タイトルとその理由

写真はイメージです ©?iStock.com

 昨年から続くコロナ禍の中で、モバイル、ゲーム機、PCと全てのジャンルでコンピュータゲーム市場は大幅に伸びた。スマホアプリの市場調査に強い「App Annie」が発表した『モバイル市場年鑑2021』には、自粛生活を強いられた人々がスマホでゲームに没頭していた数字が如実に現れている。

 2020年のグローバルでのモバイルアプリダウンロード数は約2180億件、売り上げは約1430億ドル。この売り上げは2019年に比べて約20%増えており、本来ならば2024年頃に到達すると予測されていた数字だ。コロナ禍によって、エンタメがスマホに集約されていく速度が急激に上がったことがわかる。

 日本でもスマホユーザーの1日の平均利用時間は3.7時間を超え、こちらも前年から20%増加した。日本は高齢者を中心に地上波テレビの時間占有率が高いが、スマホがテレビを抜くのは時間の問題だろう。アメリカでは、すでにスマホの利用時間はテレビを抜いている。

 スマホの利用時間を押し上げている大きな要因が「ゲーム」だ。

■広告媒体としてのゲーム

 とりわけ、ハイパーカジュアルというゲーム分野の伸びが「App Annie」では指摘されている。これは手軽に始めて短時間で終わるゲームで、しかも中毒性が高い。ルールがシンプルで覚えることが少ないだけではなく、ゲーム自体の価値と同じくらい広告価値を優先した作りが特徴だ。

 キャッチーなタイトルやテーマを設定し、SNSなどに広告を打ってインストールを促す。例えば日本のあるデベロッパーが開発した『彼氏が浮気してるっぽい』というゲームは、世界中で共通するテーマ設定によって世界的にヒットした。

 多くのハイパーカジュアルゲームは無料だが、ゲーム内で他のゲームの広告を表示して収益を得る。ゲーム自身で収益を得るのではなく、“いかに興味を惹くか”に特化したゲームを開発して広告価値を上げることで収益を得るという、コンテンツが消費されるサイクルが極めて短いジャンルだ。

 ユーザーはゲーム内で多数表示される広告を見るか、広告を消すために課金するかの二択を迫られることになる。

「車を駐車させる」「蛇を操ってブロックを壊す」などゲーム自体は極めてシンプルなので、中毒性は高いが飽きるのも早く、トレンドの入れ替わりも激しい。このためハイパーカジュアルジャンルでは、『パズドラ』などのように特定のヒット作がロングランになってランキング上位の常連になることはほぼない。

 ハイパーカジュアルの成長は、これまでゲームをしてこなかった利用者層が、自粛生活で余った時間を“たいして気持ちを入れずに遊べる”手軽なゲームに向けたことで一気に加速したと言える。

■日本では“これから”な2タイトル

 一方で海外では伸びているものの、日本ではまだ“これから”と目されているゲームもある。『Among Us』と『Roblox』はその代表例だろう。

『Among Us』は宇宙を舞台にした“人狼”的なゲームで、操作は単純な割に深みのある心理戦が繰り広げられる、モバイル端末にうってつけのゲームだ。人狼的ではあるが、コンピューターゲームならではの演出やルール設定もあり、誰でも楽しめるエンターテインメント性の高い仕上がりになっている。

 2018年のリリース以来長らく日本語には対応していなかったが、2020年の世界的な人気急上昇を受け、12月に待望の日本語版がリリースされた。

 参加へのハードルが低いカジュアルなゲームだが、1ゲームのプレイ時間は10分〜20分とそれなりに長い。ゲームに使えるまとまった時間がなければ、これほど劇的な流行をすることはなかっただろう。その意味では、コロナ禍がトレンドを後押ししたと言える。

■アメリカの16歳以下の過半数が遊ぶゲーム

 日本でも人気が急上昇している『Among Us』と比べて、これからの伸びがより期待されるのが『Roblox』だ。『Roblox』はゲームを自分で作れるSNSのようなもので「サンドボックス」という愛称もついている。サンドボックスというのは砂場のことで、砂場に集まる子供たちが自分たち自身で遊びを創造し、コミュニティを形成するイメージが重ねられている。

 プレイヤーは『Roblox』の中で独自のゲームを開発し、他のユーザーが開発したゲームを遊びながらコミュニケーションを取ることができる。ゲーム制作は子供でもできるように配慮されており、アメリカではユーザーの多くは16歳未満だ。

 開発国であるアメリカでの支持は熱狂的で、全米の16未満人口の半分以上(3000万人以上!)が『Roblox』のアカウントを保有している。プレイヤーたちが作った多様なゲームが混在しているので、特定のゲームジャンルファンでなくとも馴染みやすいのも特徴だ。

 初リリースは2006年だが、スマホ版がリリースされた2010年代半ばから人気が上昇。さらにコロナ禍によって家から出られなくなった子供たちは『Roblox』で集まり、その中でゲームを楽しむようになった。そしてユーザーたちが最も楽しんでいるのは実はゲームそのものよりもユーザー同士のコミュニケーションで、1つのゲームというよりSNSコミュニティとさえ言える存在に成長している。

日本はまだ“ガチャ”が主流だが…

 一方、日本では相変わらず『モンスターストライク』や『Fate/Grand Order』、『プロ野球スピリッツA』のような“ガチャ”をシステムの核に据えたゲームが主流で、グローバルのトレンドの影響はまだ到達していない。しかし、そのトレンドにも変化の兆しが見えてきている。

 ガラパゴスと揶揄される日本の特殊な流行の理由の1つは、“通勤・通学で電車に乗っている時間が長い”ということだった。

 この長い「通勤・通学時間」は、かつては週刊コミック誌の爆発的な売り上げや、『怪盗ロワイヤル』のような非リアルタイムでチームプレイを行う特殊なルールのネットワークゲームを生み出してきた。

 海外では、同じ時間に接続して協力・対戦を楽しむネットワークゲームが主流だったが、通勤・通学時間は人によって時間帯も長さもマチマチなので、日本では同時接続ではなくとも遊べるカード型のゲームが増えた。

 そうした日本特有のモバイルゲームの系譜の延長上に、現在のガチャシステムもある。

 しかし、コロナ禍によって「通勤・通学時間」が減ったことで、今後は日本でもグローバルなトレンドに近づいていく可能性がある。

 その兆候が見えるタイトルが、中国の「MiHoYo」が開発した『原神』だ。モバイル、PC、PS4向けに全世界同時リリースされ、モバイルからでも広い仮想世界を動き回ることができる。本格的なロールプレイングゲームなので費やす時間もお金もあるコアゲーマー向けと思われたが、想像以上の速度でファンを増やし、すでに国内の月間売り上げは100億円を超えている。これも家にいる時間が増えたことの影響だろう。

■ガラパゴスの終焉は近い?

 ハイパーカジュアルゲームの流行と、コアゲーマー層向けタイトルの成長。一見矛盾するように見える2つの現象は、市場の二極化を示している。ダウンロード数のランキングでは上位をハイパーカジュアルゲームが占拠しているが、売り上げベースで見るとプレイ時間が長い熱心なゲームファンが市場全体の66%を占める(『モバイル市場年鑑2021』より)。

 近年流行している『FORTNITE』や『荒野行動』などのサバイバルゲームも、1プレイに時間がかかるので外出自粛が追い風になっている。

 2021年に入って2度目の緊急事態宣言が出されるなど、「Stay Home」な雰囲気はしばらく変わりそうにない。「通勤・通学時間」に適応した日本的スマホゲームのトレンドが終わりを迎え、新しいトレンドが生まれる可能性もおおいにある。

(本田 雅一/Webオリジナル(特集班))

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