大手チェーン系居酒屋『O』で楽しめる"秘境酒場"系メニュー

大手チェーン系居酒屋『O』で楽しめる"秘境酒場"系メニュー

@DIME アットダイム

■連載/カーツさとうの週刊★秘境酒場開拓団

秘境酒場系メニューに挑んでいた大手チェーン系居酒屋『O』の評価

オヤジス度    ★★★
エルドラ度    ★★
オヤジナリティー ★★

 ウチの近所……川崎の新丸子なんだけど、その駅前に「よろこんで〜!」でお馴染みの大手チェーン系居酒屋の『S(仮名)』があった。ところが、気付いたら店を閉め、店舗を工事しだした。

 なにができるんだろ? とちょっとだけ気にしてたら開店を知らせるチラシが入ってきた。『S』を経営する『D(仮名)』グループの“モツ焼”新業態店の一号店だという。名前は『O(仮名)』。『笑点』の後半部分を店名にしたと思ってくれていい。

 ま、大手チェーンだから期待はしてないんだけど“もつ焼”及び“新業態”ってところには感じるものもあって、ジックリとチラシを眺めてたら、名物だという『ミックス焼(680円)』の写真が琴線に触れた触れた!

 楕円の銀皿に、何種類もの内臓肉がゴチャマゼになってテンコ盛りになってるダイナミックなその姿! 焼肉屋とかでもたまにモツ系を色々と混ぜて一皿にしている品を出すところもあるけれど、そういう店では、モツが辛味噌で和えてあって、皿に平べったく持ってあるじゃない? 

 ところがその写真は、特に内臓にタレがまぶしてあるようにも見えない。ようするに味付けしてないモツがとにかく銀皿に山盛りになっとる! このスタイルで思い出すのは、浜松町というか大門に一号店をだし、その後は五反田と歌舞伎町にも系列店を出したセルフモツ焼の超名店『KT(仮名)』!! これってかなりの秘境系のメニューじゃん!!

 もしや、『D』グループが『KT』風の店を作ったのか? 大手チェーンの居酒屋といえば、どちらかというと、安心の最大公約数的なメニューが常識じゃないですか? それなのに『KT』風モツ焼を名物にするとは、これは攻めてすまよ!! 

 さらにチラシをよく読むと“老舗食肉卸会社『N(仮名)』から国産にこだわって内臓を仕入れ”なんていうモツ好きしか興味示さないことまでご丁寧に書いてある!

 資本力ある所が本気になってウマイ内臓を食わせる気になったら、これはそうとうな破壊力があるに違いないし、第一号店っていうことは、まだ全国に一軒しかないわけで、そりゃあイイ内臓肉も使い放題じゃない!!

 こりゃあ行かなきゃまずいってんで行ってみた!

『超絶!通向け煮込の爆発力』

 店内は今やはりの昭和レトロ風内装。ビールケースを重ねたテーブルに腰を落ち着け、まずはホッピーセット(450円) を頼み、例のミックス焼と、もうひとつの名物だという店名を冠した『煮込(450円)』……メニューでの表記が“煮込み”じゃなくて“煮込”なんで、ちゃんと正確に書いてますが、その煮込をオーダーする。

 ホッピーはDグループならではの大ジョッキ。当然、焼酎の量も多いのでこれなら450円も納得している所に煮込が届く。そして驚いた!!

 あのさ、普通の豚肉の煮込みってモツっていっても小腸か大腸の消化器系じゃない? ところがこの煮込み、ハツモトと思われる大血管まで大量に入ってんだよ! それもオレの大好きな上州系のほとんど野菜が入ってない、内臓と少しのコンニャク、あとは薬味のネギくらいで構成された、なおかつ汁が煮詰まってるタイプ!!

 これは攻めてる!! チェーン系とは思えないほど、通向け商品ですよ、秘境系煮込ですよ!!

 こんなオレのドストライクな煮込みを、まさか地元で喰えるとは…。もうこの時点でオレは感動していた。

 それにしても店に入ってひとつ気になったことがあった。

 例のミックス焼が、さっきも書いたようにKT風のヤツだったとしたら、卓上に七輪だったり、ロースターだったりがなきゃいけないワケなんだけど、それがないッ!! 他のテーブル見渡してもないッ!!

 どういうことか? と思ってたら登場しました問題のミックス焼! これがなんと、すでに焼かれた状態で登場してきた! わかりやすくいうと、串のモツ焼ありますよね。あれをいろんな部位を10ポンくらい頼んで出てきた焼きたてのヤツを速攻で串から外して、皿に山盛りにしたような状況といえばいいんでしょうか?

 もちろん串でなく網で焼いてるんだろうけど、この焼いたものかででくるっていうのはイイですよ! もちろん自分で七輪で焼くのもいいけど、ボッーと話しに夢中になってると焦がしちゃったりもするしさ。第一、モツを焼くことに慣れてない人なんかは、モツの焼頃っていうか、どこらへんまで焼いていのか? ってわからないじゃん。そういう意味でも、串焼みたいなプロがちゃんとその肉の特性を見極めたイイ状態の焼頃で提供してくれるってのは、大正解かもしれない!

 そしてそれを銀皿に山盛り! これはオレの予想をイイ意味で裏切る大ヒットですよ!

 そしてその味っていうのがまた…。

『迫りくる秘境系メニューのオンパレード』

 ミックス焼の内容をよ〜く見ると、カシラっぽい部分、レバーぽい部分、腸っぽい部分、タンっぽい、大血管っぽい部分がいい感じに焼かれてゴチャマゼになっている。味付けは塩なんで、タレとかでコーティングされることもなく、ただただもう焼かれた内臓がドサッと目の前にある!! そのダイナミクス!!

 皿の端にはニンニクと辛子味噌が添えられている。辛子味噌を付けて一部位食べてみる。噛みしめると内臓から溢れ出る脂と肉汁が混ざり合った、野生の旨味汁みたいなヤツが、歯といい歯茎といい口中にまとわりついて、もうたまらない!

 まだその野生旨味汁が口にあるウチに、ホッピーをグビッといって、洗い流すようにその全てを食道へと流し込む!

 悦楽!!

 さらにメニューを見ると、どこかでみたような名前が並んでいることに気付いた。

『純レバー炒め(450円)』。これは亀戸天神とは浅草にある中華の『S苑(仮名)』の名物料理からインスパイアされてるに違いない!

『生ピーマン(2個300円)』は“つくねによく合います”なんて書いてあるんで、これはもう城南地区一のモツヤキ屋といわれる、『@DIME』の編集長も大好き祐天寺『C(仮名)』のスタイルですよ!!

 同じ祐天寺の『B(仮名)』が中目黒にあった時から名物にしてて、今では立ち飲みではポピュラーなツマミにもなった『レバーカツ(450円)』も当然のようにあるしね。

 ある意味秘境系メニューのいいとこ取りですよ!

 この戦略はすごい!! 攻めてる通向けメニューを名物にしておきながら、通向けメニューを何種類も揃えることで、いつのまにか最大公約数に応えちゃってるんだもん!! 

 いや〜大手チェーンの底力を見せつけられた気がする。これが2号店、3号店と全国展開した時も、今のレベルを維持してたとしたら、ますます恐ろしい! ま個人的にはうれしい話しだけど。

 ということで、書いてるうちにもう我慢できなくなったんで、ワタクシ、今から『O』に飲み行きます。以上!!

文/カーツさとう

コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。

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