イカ料理が激安で満喫できる荻窪の立ち呑み居酒屋『Y』

イカ料理が激安で満喫できる荻窪の立ち呑み居酒屋『Y』

@DIME アットダイム

■連載/カーツさとうの週刊★秘境酒場開拓団


(写真はイメージです)

バカ安兼独自の価格設定イカ立ち呑み。荻窪『Y』の評価

オヤジス度    ★★★
エルドラ度    ★★
オヤジナリティー ★★★

「あ! この近くにすごい安い立ち呑み屋があったんだよな〜」

 普段はほとんど足を踏み入れたこともない中央線沿線にちょっとした用があって足を伸ばし、その“ちょっとした用”ってヤツも無事に済んだ刹那、同行のU氏が独りごちた。

 どんな感じの店か聞くと、イカ料理がメインの立ち呑みだという。

 ここ数年、イカを名物にして人気の居酒屋があるが、立ち呑みでイカメインというのもおもしろそうだ。即座に行こうと話しはまとまり、その“すごい安い立ち呑み屋”の前に辿りつく。ドアだと思って押そうが引こうがビクともしない真っ黒い入口が、実は横にガラガラと空ける引き戸だったなんていうとりたてて書かなくてもいいようなエピソードがあって、二人して店内に入る。

 場所は荻窪駅近く。店名は『Y(仮名)』である。

「いっつも満員だから入れるかな〜」

 とU氏は心配してたが、夜10時という時間もあってか、10名ほど入れるカウンターは比較的すいていた。

「ほら、見てくださいよ、このバカ安いメニュー!!」

 そういわれて壁に貼られた品書きを見て、たしかに目を見張った。その全貌をメニュー通りの表記でお伝えいたします。

 イカ刺身、イカミミ刺身、イカミミ焼、イカゲソ焼、ゲソ揚げ、ゲソわさ、イカなんこつ焼、珍味わたあえ、自家製塩辛、いか納豆といったいか関連料理がすべて驚きの170円!!

 さらに! うなぎきも焼、きざみ穴子、もつ煮込み、串焼きフランク、めかぶ、みそキュウリ、漬物、冷奴といった料理もこれまた驚愕の170円!

 料理で170円以外のモノといえば、わずかにしめさばが270円、イカしょうが棒が200円といった、これまた驚天動地の価格設定。

 ちなみに今まで書いたのが料理メニューの全てであるが、まったくもって安い! そして安いという感慨と同時にひとつヤケに気になることがあった!

『謎が謎を呼ぶ数字170!』

 いやね、この170円っていう価格はどこからきたんだろう?

 だって思いませんか? 170円だったらいっそのこと200円にしちゃってもいいと思うんですよ。その方が、金払うコッチもわかりやすいじゃない、スッキリしてて。

 そりゃあ安い方がうれしいことはうれしいけれど、こっちだって百円玉握りしめて駄菓子や行く小学校低学年じゃないんだからさ、200円だったら全然高いと思わないっすよ。むしろこれでも安すぎじゃないですか。

 そうでもなきゃいかにもお得な感じで198円にしてもいい! もしくは200円程のスッキリ感はないけれど、下二桁が奇数の170円よりももうちょっと計算がしやすそうな下二桁偶数の180円にしたっていいかもしれない。

 それなのに170円!! よっぽどこの“17”という数字にコダワリというか、愛着があるんだろうか?“17”で“いーなー”みたいなゲンを担いだだろうか?

 ま、正解は特に深い考えはなく、なんとなく170円だったのだろう。

 カウンターの中では熟年の男女1名ずつが無言で立ち働いていて、奥の方では男性が包丁を使って刺身系を担当し、女性はオレたちが陣取ったカウンターの目の前にある焼き場で焼き物を担当していた。

 飲み物はホッピーセット320円を、料理に関しては、U氏にまかせると、イカ刺身といかなんこつ焼×2串をオーダーした。

 イカ刺身が届く。拍子状に切られ、うっすらと透けたイカが大葉を枕にこんもりと盛られている。これで170円はたしかに破格だ。しつこいようだが200円でも破格である。添えられたワサビと醤油で一口頬張る。

 まいった!!

 口に入れてひと噛みすれば、最初はプリッとした弾力が歯に感じられ、その後はイカの肉がネットリ感を持って歯と歯茎を包むようにして切れていく。その切れると同時に口中に炸裂する旨味とイカならではの甘み!!

 これこれ! これぞちょっと熟成が入ったイカの刺身ならではのうまさですよ!

『旨さと無愛想のハーモニーに喝采を』

 イカに限らず刺身というと、なんでももかんでも「ここは新鮮でウマイ!」とかいって新鮮さが一番だと思い込んでる人がいるけど、ただ新鮮なだけの刺身なんて、実は歯ごたえがあるだけで旨味もヘッタクレもあったもんじゃない!!

 ある程度熟成させてアミノ酸が増えた状態の方が絶対にうまいんだよね。新鮮な方がイイ刺身なんてのはサバとイワシくらいなんじゃないの?

 そんな中、この店のイカ刺身は、旨味バッチリのネットリ感が生まれつつ、ちょっとしたコリコリも残る絶妙の熟成具合!

 続いてイカなんこつ焼がやってくる。

“イカなんこつ”と聞いて、最初はイカの口部分、いわゆる“トンビ”を想像してたんだけど、どうやらトンビではなく、イカの眼の奥あたりにある、身なんだけど一番コリコリした部分を串に刺して塩焼きにしたもののようだ。

 口に入れる前に、串を鼻先に持っていった時にフワ〜ッと漂う芳ばしい香りだけで、もう絶対ウマイと確信してたけど、喰ったら予想よりもまたまたウマイ!!

 焼くことで旨さの凝縮されたイカがナンコツ独自のコリコリ感で口の中の味覚はもちろん、唇内側などの触覚、鼻へ繋がる嗅覚といった全ての感覚神経をこれでもか! これでもか! とうまいでしょ攻撃を仕掛けてくる!

 一切れ喰っただけでホッピーが進む進む!

 もっと色々喰いてェと、珍味わたあえを頼むが、目の前の女性店員に、

「ない」と非常に冷たくあしらわれ、イカしょうが棒をオーダー。イカの入ったさつま揚げみたいなヤツで、これもおいしかったけれど、これに添えられてた生姜のオロシを薬味に、さっきのイカ刺身を喰ったら、これもまたとんでもなくうまい!!

 いや〜、170円という価格設定が、もしかして“7”という数字にこだわってのものだったら、いっそのこと270円でも安いと思わせるクオリティー!

 ただそれにしても目の前の焼き物担当女性店員の愛想のなさはなんだ?

 愛想がないというか、徹頭徹尾暗い! そして客に冷たい。いきなり

「11時なんでラストオーダーです」

と告げられ、U氏が「じゃあ最後にホッピーの中を」っていったら、

「ダメです」

 だって……。別に立ち呑みで愛想を求めてやしないけど、どうせなら「イカん!!」とかいってほしかったなァ〜。

文/カーツさとう

コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。

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