ハイスペックな高速深夜バスで行く大阪ぶらり旅

ハイスペックな高速深夜バスで行く大阪ぶらり旅

@DIME アットダイム

 高速バスというと、安価な移動手段のイメージが根強い。新幹線や飛行機に比べ、時間はかかるものの、破格な運賃で移動費を節約したいニーズに応える。割り切って利用するなら、便利な存在と言えるだろう。

 ただ、個人的にはあまり積極的に選択肢に入れる気にはなれなかった。狭い座席で長時間を過ごすのは、やはりシンドイのだ。たまに乗るとしても昼の便で、夜行バスなんて、もう何年もご無沙汰している。

 だから、近頃の高速バスの進化ぶりを知って、たまげたのが正直なところだ。まるで飛行機のビジネスクラスのような豪華シートに惹かれ、予約を入れたのは東京〜大阪間を走るウィラートラベルの高速バス。大阪といえば、話題の「あべのハルカス」が開業したばかりで、ついでに訪れるのを楽しみに大阪行きを決めた。

◎専用ターミナルで初心者も安心

 高速バスの予約も、今はネットで手軽に行なえる。出発のおよそ1週間前に空席検索したところ、残り1席だけと表示された。慌ててポチって、クレジットカードで料金を支払う。無事予約が完了すると、メールが送られてきた。乗車当日は、これをプリントアウトして持参すればいいらしい。

 出発は22時45分。仕事を終えた足で、新宿西口にあるバスターミナルへ向かった。バスを運行するウィラートラベル社の専用ターミナルだ。広々とした待合室が、乗車待ちの人々でごった返していた。飲み物などを売る売店もある。カウンターではスーツ姿のスタッフが応対してくれるのも印象的だった。

 バス会社によっては、この手の待合所を設けず、集合場所がわかりづらいケースもしばしば見られる。以前に乗った某格安バスでは、道路脇で私服のスタッフが1人で客の誘導をしていたのを思い出した。高速バスといっても様々、ということか。

 発車順にマイクで乗車案内が流れた。建物を出て少し歩くと、駐車場に何台もバスが停まっていた。予約時には座席番号が不明だったが、例のプリントアウトを見せると、車掌さんがリストと照らし合わせて教えてくれるシステムのようだ。いざ乗車。大阪まで約10時間の長旅だ。

日本各地へ豊富な路線網

ウィラートラベル社の専用ターミナルは、新宿住友ビル1階にある。バスへの乗車は出発時刻の10分前。外国人客の姿もちらほら。

◎バスの常識を覆す豪華なシートに感動

 ウィラートラベル社のサイトには、個性的なバスが紹介されている。ホテルラウンジをコンセプトにしたという、見るからにふかふかそうなシートをウリにしたバスや、頭部をすっぽり覆うフードが備え付けられた女性向け車両など、豊富なラインアップに目を見張る。

 中でも最上位クラスと言えそうなのが、今回乗ったシート、「Cocoon」だ。シェル型パーティションで区切られており、カーテンはないが、ほとんど個室状態。各シートを斜めに配置し、スペースを確保している。飛行機のビジネスクラスで近年人気の、ヘリンボーン型(上から見ると魚の骨のように見える)のレイアウトに近い。後ろの人に気兼ねすることなく、背もたれを目いっぱい倒して寝られるのは、小心者にはありがたい。

 途中のSAで計3回の休憩があった。最初の休憩でトイレへ駆け込んだ時のことだ。ほかの乗客たちが歯磨きをしているのを見て、ハッとした。夜行バス慣れしていない者としては感心させられたのだ。

 2回目の休憩では、寝ぼけながら飲み物を買いに出たら、自分のバスがどれだかわからなくなるという情けない一幕もあった。SAのだだっ広い駐車場に、似た形のバスが何十台も停まっている。ウッカリ迷子にならないよう注意したい。

外観は普通のバスだけれど……

白地にピンクのラインでカラーリングされた車体がトレードマーク。「ピンクのバス」という愛称でも親しまれている。

プライベート空間に多機能を搭載

シートのリクライニングは140度と、フラットとはいかないものの、バスとしてはかなり快適な仕様だ。靴置きスペースや網ポケットなど、かゆいところに手が届く機能的なつくりには感心させられる。

移動時間を楽しむ仕掛けにも注目

各席にはプライベートモニターが備え付けられ、テレビや映画鑑賞、ゲームなどが楽しめる。ヘッドホンやゲームパッドも完備。

足を伸ばしてグッスリ快眠?

身長180cm強の筆者だと、足先が若干窮屈な印象も。欲を言えば、奥行きがもう少しあるとうれしい。ただし幅には余裕がある。

◎“移動式ホテル”で眠り、滞在時間を確保

 翌朝8時頃、大阪のなんばでバスは停車した。乗る前は、夜行バスに対してどこか身構える気持ちもあった。けれど、ずいぶんあっけなく到着した、というのが感想だ。シートの違いは大きい。快適すぎて、もう少し寝ていたかったぐらいだ。

「Cocoon」の料金は、高速バスにしてはやや高めの設定になっている。とはいえ、いわゆる格安バスと比較するのは無理があるだろう。1泊分の宿代が浮く、移動式ホテルととらえると、旅の有力な選択肢のひとつになりそうな気がした。

 週末海外をする時には、飛行機のエコノミークラスの狭い座席で夜を明かすことも多い。あえて夜行便を選んで、現地での滞在時間を少しでも長く確保するのが、スキマトラベラーのセオリーでもある。

 夜行バスも同様の利点があると言えそうだ。夜のうちに移動してしまえば、到着した先で1日がフルに活用できる。そのためには、車内でいかに快眠できるかが重要な意味を持つ。

 ひと眠りしたら、そこは大阪。念願の「あべのハルカス」を訪れたのに加え、道頓堀で心ゆくまで食べ歩きしたりと、大いに旅を満喫したのだった。

大阪の新名所「あべのハルカス」

横浜ランドマークタワーを抜いて、日本一の超高層ビルの座を獲得した「あべのハルカス」。目玉は地上約300mの展望台からの絶景。近鉄百貨店や美術館など施設も充実している。

《今回利用したのはコレ!》
ウィラートラベル「Cocoon」

[行程]新宿発22:45 → 大阪着8:20
[料金]8700円※予約時期・曜日により変動。

◎料金や運行ダイヤなど各種のデータは取材時のものです。

(文/吉田友和)

1976年、千葉県生まれ。初海外旅行が夫婦で世界一周旅行。その旅の過程をまとめた『世界一周デート』で、旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱し、国内外を旅しながら、執筆活動を続けている。

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