おニャン子解散からモー娘。ブレイクまでの“冬の時代”を繋ぐアイドル考察本

おニャン子解散からモー娘。ブレイクまでの“冬の時代”を繋ぐアイドル考察本

『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』(シンコーミュージック)

 戦国時代と呼ばれた“ブーム”も過ぎ、今やすっかり一大カルチャーへと発展を遂げたアイドル界。例年、夏に行われる世界最大級のアイドルフェスと称される「TOKYO IDOL FESTIVAL」には今年、3日間で全国各地から301組のアイドルが結集、さらに、のべ7万5000人以上の観客が訪れたという。

 2010年代は、AKB48やももいろクローバーZなどの「ライブアイドル」が目立つようになった。しかし、世代によりアイドルのイメージが変化してきたのも事実である。

 グループアイドルの先駆けとして知られるのはやはり、テレビ番組『夕やけニャンニャン』からデビューしたおニャン子クラブだろう。国生さゆりや工藤静香、渡辺満里奈ら多くの人気アイドルたちを輩出したが、1987年に解散。以降、モーニング娘。が「LOVEマシーン」で1999年に社会現象となるまでをたどるのが、書籍『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』(シンコーミュージック)だ。

 馬飼野元宏や斉藤貴志など、アイドル媒体を代表するライター陣による考察と歴史的資料を織り交ぜ、1980年代後半から1990年代頃までの“冬の時代”を、アイドルを取り巻くテレビ、ライブ、音楽、さらに、冬の時代を実際に生きたアイドルたちの証言などをまじえて、多角的な視点から立体的に浮かび上がらせる1冊である。

 本書にある「アイドルニュータイプ研究」では “冬の時代”のアイドルたちの系譜が綴られている。

 1980年代後半から1990年にさしかかる当時に目立ったのは、CM出演をきっかけに注目され、女優と歌手を“メディアミックス的”に兼業するという流れだった。その頃を代表するひとりが、1987年に「三井のリハウス」のCMガールとしてスターダムへのし上がった、宮沢りえである。

 CMデビュー後、1989年に映画『ぼくらの七日間戦争』で主演に。翌年には歌手として紅白歌合戦への出場も果たした。その後、17歳の裸体を惜しみなく披露したヘアヌード写真集『Santafe』を発売したほか、その前には『ふんどしカレンダー』を発売するなど、従来みられた“アイドル”のイメージや路線を大きくそれた大胆なメディア戦略を展開した。

 同時期には、オスカープロモーション所属の“国民的美少女”として一世を風靡した後藤久美子や、宮沢りえと共に「3M」と称された、観月ありさや牧瀬里穂などの活躍も目立った。

 本書では彼女たちを「写真集などのヒットも含めたビジュアル先行型」「業界主導のメディアミックス系アイドル」と分析する。その後、90年代後半となり、ドコモのポケベルCMなどが話題となった広末涼子、ドラマ『家なき子2』のいじめっ子役でブレイクした榎本加奈子など、「CMで顔を売り、女優仕事を経て歌手デビュー」というアイドルたちの流れが、さらに成熟することになった。

 一方、90年代は歌って踊れる、ダンス系アイドルの流れが確立されたのも大きな特徴である。

 この頃に代表されるのは“沖縄アクターズスクール”出身者の存在で、やがてはソロデビューを果たした安室奈美恵。そのバックダンサーとして活躍、のちにスーパー・モンキーズから改名したMAXや、1996年デビューのSPEEDも注目を集めた。

 また、時代を少しさかのぼるが、1990年にデビュー、篠原涼子や仲間由紀恵などが所属していた東京パフォーマンスドール(1996年にグループは消滅。2014年に新生TPDがデビューした)も特筆すべきグループである。“冬の時代”へ突入して以降のアイドル界は、テレビや雑誌など、あらゆる媒体で露出する機会を失い、それに伴い、ゲスト出演できるイベントやCDのリリースも減少傾向にあった。

 いわばジリ貧で、活路を失いかけた中でTPDが示したのが“ライブ”を主軸にするという選択肢だった。TPDは、デビュー当時から地道なライブ活動を展開。当初は少数のファンを相手にしていたが、徐々に熱狂的なファンを集め、なかでも、ツインテールにフリル付きという個性的なルックスで人気を獲得、1992年にソロデビューした水野あおいは“地下アイドル”の草分けとして知られている。

 また、1992年に結成されて以降、一時は終止符を打ちながらも2010年に再始動した制服向上委員会もそのひと組だ。現在も当時から受け継がれる定例ライブ「制服の日」を続け、2016年7月現在で公演数は519回に。テレビなどの画面内とは異なり、グループ全体と個々のメンバーに注目しやすいというライブならではの“地の利”を活かす戦略を根付かせるきっかけとなった。

 現在、全国各地では数え切れないほどアイドルたちが活躍している。あるアイドルソングの歌詞には「名刺を作れば即アイドル」という言葉もあるが、フェスや対バンへ足を運ぶと、推しを選びきれないほどのアイドルたちを見かけるのも事実である。

 本書を読むと、現在のアイドルというカルチャーには、“冬の時代”に築かれた戦略やノウハウが踏襲されていることが感じ取れる。アイドルの“今”を知るために、温故知新でそのルーツをたどってみるというのもまた一興である。

文=カネコシュウヘイ

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