杉咲 花「熱い愛を受け取りながら、自分のできるすべてを捧げられた」

杉咲 花「熱い愛を受け取りながら、自分のできるすべてを捧げられた」

杉咲 花

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』がまもなく公開される杉咲花さん。おすすめの一冊は、大好きで特別な写真家だという奥山由之さんの写真集『BACON ICE CREAM』。自身で撮った写真をInstagramなどで公開している杉咲さんに、写真や表現への想いをうかがった。

「奥山さんの写真に映る光は、ただ綺麗なだけじゃなくて、いろんな表情を見せてくれる。やわらかかったり、淋しかったり、ギラギラしていたり。奥山さんがファッションショーを撮影すると、服だけじゃなく、その場に集まったたくさんの写真家さんの放つフラッシュまで画面におさめるんです。しかもその光は、星のようにギザギザした不思議な形をしていて。そんな写真を撮れるのは、奥山さんしかいないと思います。だから、作品を見ていると、身体の内側から揺り動かされるような感覚を味わえるんです」

 本当に撮りたいと思ったときしか写真を撮らないようにしている、という杉咲さんは、演技の場でも“感じる”ことを何より大事にしている。

「たとえば、今回の現場ではお母ちゃんである宮沢りえさんの演技に本当に圧倒されて……。映画では、ひとつの場面をいろんな角度から撮るために同じ演技を何度もしなくてはいけないんですが、お母ちゃんは、自分の表情が映らないときでも、毎回、本気のお芝居をしてくださる。それは本当に大変なことだと思うんです。大事なことほど繰り返せば熱が薄れてしまいますから。だからこそ、私も、お母ちゃんの演技を本気で受け止めて、本気でぶつけかえさなければと、思いました」

『湯を沸かすほどの熱い愛』は、余命宣告を受けた母が、遺される家族のために最期の一瞬まで全力で愛を放ち続ける物語。娘・安澄を演じた杉咲さんにとって、とくに印象に残っているのは、物語後半、お母ちゃんから“真実”を聞かされる場面。逃げ出そうとする安澄にお母ちゃんが正面からぶつかる山場だ。

「だって安澄はお母ちゃんの子でしょ、という台詞に、お母ちゃんの優しさがすべてつまっていますよね。お父さんがよその女の人のところから帰ってこなくなっても、どんなにひどいいじめにあっても、安澄が立ち向かうことができたのは、お母ちゃんがいつも途方もない愛情を注いでいてくれたから。だからこそ、あのシーンは重要で、私にとっても一番大事でした。今でも、もっとやれたんじゃないかと思うことがあるけど、一方で、そのとき自分のできるすべてを捧げられたとも思います。あのとき現場で監督の言ってくれた『オッケー』の一声が、いつもと違うようにも感じられたので、大丈夫なんだと信じたい。観てくれる方に、想いがちゃんと伝わってくれると嬉しいです」

(取材・文=立花もも 写真=鈴木慶子)

すぎさき・はな●1997年、東京都生まれ。ドラマ『夜行観覧車』で注目を集める。2015年の映画『トイレのピエタ』『愛を積むひと』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016新人女優賞など多くの映画賞を受賞。16年の出演作に、映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』など。

◆『BACON ICE CREAM』
奥山由之 パルコ出版

大学生時代、弱冠20歳で、写真家の登竜門といわれる写真新世紀優秀賞を受賞した写真家であり映像作家の奥山由之。雑誌『GINZA』『装苑』や、くるり、スガシカオらのCDジャケットに掲載された作品など、デビューから現在に至るまでの写真で構成された作品集。第47回講談社出版文化賞写真賞受賞作品。

※杉咲花さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ11月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

関連記事(外部サイト)