現役大学教員が執筆。経済学、リーダー論を学べるSF小説

現役大学教員が執筆。経済学、リーダー論を学べるSF小説

『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎刊)

群馬県嬬恋にある「縄文の家」にキャンプに訪れた大学生21人と中学生32人。
楽しくなるはずだったサマーキャンプだったが、その最初の夜にとてつもない事件が起こる。今までに体験したことのない強烈な轟音と激震。そして彼らは縄文時代にタイムスリップしてしまっていた――。

『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎刊)は縄文時代にタイムスリップしてしまった団結やいさかい、新たな友人との交流、社会の進化などを通して成長していく若者たちと、彼らが真実に辿り着くまでの冒険を描いたSF小説だ。

本書の作者である水之夢端さんはなんと現役の大学教員で、経済学を講義しているという。本作を執筆した水之さんの想いとは? 後編をお送りする。

(新刊JP編集部)

■経済学、リーダー論、小説を通して学べる『異世界縄文タイムトラベル』

――本作では権力闘争などの政治の仕組みや、経済の仕組みを学べる内容になっています。それが引いては人間がどのように社会をつくり上げてきたのかを追体験できるものにもなっていますが、そうした意図を込めて書かれたのでしょうか?

水之:そうですね。『やさしい経済学』や『すぐわかる日本経済』といった本は山ほどありますが、それだけ読んでも本当に理解できるかというと、なかなか難しいと思います。でも、こうしたストーリー形式で、経済学のことが分かってもらえれば嬉しいという思いはありましたね。

――縄文人側にも若きリーダーといえる「ユヒト」という人物が出てきます。彼の存在感は作中でも随一ですが、この物語は林やユヒトといったリーダーたちに強くフォーカスされているように思います。この「リーダー」という存在をどのように描こうと思っていたのですか?

水之:リーダーという存在は実績が重要だと思います。カリスマ性だけで口ばかりではなく、しっかり実績を残してこそリーダーと呼べるのだと。

ところが今、日本の経済界では若きリーダーというのが出てきていません。小粒な人ばかりで、大粒なのはトヨタ自動車といった昭和の企業のトップだけです。アメリカや中国が台頭する中で、若い世代による大手のグローバル企業が日本から出てこないということは、リーダーがいないということなのだと思います。

これからコンセプトを持って実績を積み重ねていって、日本のために役立つような経済人が出てくるといいんですけどね。

――ただ、最近の経営者や事業家でいうとちょっと変な目立ち方をする人が多いように感じます。なぜ日本人は小粒化しているのでしょうか?

水之:言葉の小粒化は一つ理由のように思いますね。荒波に立ち向かわずに迎合してしまう傾向はあると思っていて、いわゆる総保守化と言いますか、すごく保守的な社会になっていますよね。それが若者を小粒化してしまっている要因になっている。

――みんなが空気を読んでしまうみたいな。

水之:政治の世界でも、ずっと安倍一強と言われてきて、誰もほとんど逆らうことができなかったですよね。みんな迎合しちゃっていた。そういう姿を若者はみんな見ていて、それが小粒化させている要因なんじゃないかなと思います。

――水之さんは若者にもう少し強くあってほしいと思っているのでしょうか。

水之:そうですね。この物語に早坂という林のライバルが出てきて、彼は負けちゃうんだけど信念を持ち続けていた。そういう信念というか、気構えを若い人には持っていてほしいなと。

――早坂というキャラクターはとても野心家ですよね。林の敵役として描かれています。

水之:ただ、彼は最後までブレなかったんですよ。それは彼の頭が固いわけではなく、後々の人たちの幸せのために、こうしなければいけないということを信じて行動していたんですよね。それは林も同じですが、こういう人物が出てくるといいなと思いますね。

――もし水乃さんご自身が縄文時代にタイムスリップしてしまったら、まず何をしますか。

水之:難しい質問ですね。まずは、食べられそうなものを確認して、何者かの襲来に備えて逃げ場を探す。あとは水の確保ですね。

――そう聞くとやはり資源が大切なんだなと思います。

水之:逆に資源がたくさんあると無駄遣いしたりしちゃいますけど、縄文時代にタイムスリップすることで、本質的なものが見えてくると思います。あとは安全ですね。安全と資源、それが大事だと思います。

――また、本作の結末についてですが、これはもしかしたら賛否両論あるのではないかと思います。水之さんがこの着地に至った想いについて教えてください。

水之:言いたかったことは、「絶対」と思っていたものは儚いものであるということです。それはおそらく今、我々が直面している事態と同じで、「便利な経済社会」と思っていた生活は、コロナで崩壊しました。

私たちは自分たちのことばかり考えて、この時間がずっと続くと思いながら生活しています。でも、もう一度立ち止まって本当に大切なものは何かを考えてみませんか? というメッセージをこの結末に託しました。当たり前の大切さをぜひ再認識してほしいです。

――本作をどんな人に読んで欲しいとお考えでしょうか。

水之:若い人で経済学とか経済を勉強したいけど、難しいなって思っている方ですね。この小説を読んだら経済学や経済の知識が自然に身についたと感じたい人。現代の視点から縄文時代を見ることはありますが、逆に縄文時代の立場から現代の経済の世界を照らすと経済社会の矛盾や問題点がわかりやすく見えます。そういう点をぜひ読んでほしいと思います。

(了)

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