中高年に人気の「マニュアル車」最新事情(1)

 かつて女性とデートするときの勝負パターンといえばドライブだった。レンタルレコード屋で洋楽LPを何枚も借り、せっせと録音してオリジナルのドライブ用テープを作成。颯爽とスポーツカーのマニュアルシフトを操作しながらワインディングロードを駆け抜ける−−。男たちはそんなシーンのために、コツコツと貯金に励んだものである。
 しかし、もはやこんな輩は絶滅危惧種になりつつある。最近では「車? 税金や駐車場代などカネが掛かり過ぎ。必要ならレンタカーで十分」という人が増えているのはご存じの通り。ましてやマニュアル車(以下、MT車)をわざわざ選ぶなんて、よほど車好きのマニアくらいと思っている方ばかりだろう。

 ところがそんなMT車が、ここにきてにわかに見直されつつある。
 「1980年代初め頃までは、車といえばMT車がほとんどで、オートマチック車(以下、AT車)は完全な少数派でした。ところが、バブル景気で日本が豊かになってくると、車もよりラグジュアリー化を目指すようになりました。クラッチ操作のいらないAT車は、信号が多く、ストップ&ゴーが頻繁に繰り返される日本の交通事情にマッチし、高級グレードとして導入されると瞬く間に普及しました。一方でMT車は、サーキットや峠道をスポーツ走行するような、いわゆる“走り屋”が選択するくらいの少数派になってしまったのです。しかしここ最近、車を“意のままに操れる”と、あえてAT車ではなくMT車を購入するドライバーが少しずつ増えてきているのです」(自動車雑誌ライター)
 どこかの自動車メーカーの宣伝文句ではないが、まさに『FUN TO DRIVE』といった部分が見直されてきたというのだ。ここでもう少し詳しく、AT車が普及した要因を振り返って見よう。

 バブル期以降、1991年にAT車限定で運転できる『オートマチック限定免許』が交付されたことは見逃せない大きなポイントだ。技能講習時間が短く、その分、取得費用も安価なオートマチック限定免許は、運転にあまりこだわりのない女性を中心に増加を続け、2009年では免許取得者が58万909人(MT免許)対57万3216人(AT免許)とほぼ50%ずつの割合だったものが、翌年以降逆転し、昨年には49万3249人(43%)対66万5996人(57%)と、AT免許が多数を占める状況が続いている(警察庁・運転免許統計より)。
 当然ながら、比例してAT車の販売台数割合も右肩上がりとなっていく。オートマチック限定免許が設定される以前の'90年には27.5%(MT車)対72.5%(AT車)だったものが、10年後の'00年には8.8%対91.2%と大幅に増加。そして昨年には何と1.6%対98.4%と、ほぼほとんどの乗用車がAT車という状況になってしまったのだ。
 日本で販売されているMT車(注・国産メーカー)はたったの1.6%。これのどこが見直されているというのか−−。実は今、この絶滅の危機に追いやられていたMT車市場が、徐々にではあるが回復傾向にあり、メーカーも魅力あるラインアップを新たに導入し始めているのである。

関連記事(外部サイト)