やくみつるの「シネマ小言主義」 家族で楽しめるドタバタ時代劇 『超高速!参勤交代 リターンズ』

やくみつるの「シネマ小言主義」 家族で楽しめるドタバタ時代劇 『超高速!参勤交代 リターンズ』

(提供:週刊実話)

 いや〜、突っ込みどころ満載! 家族で楽しめるドタバタエンターテインメント時代劇。2年前にヒットした前作は参勤、つまり「行き」、本作は交代=「帰り」編です。
 「ゆったりと歩む大名行列」という今まで刷り込まれていた参勤交代のイメージを破って、弱小貧乏藩の湯長谷藩は藩主を含めたったの7人。しかも「超高速」を強いられた往路より、さらに倍速で国元に帰らないと城を乗っ取られる!! という設定です。
 江戸から磐城国(現在の福島県いわき市)まで、一行は全速力で走り、川で溺れたり、お尋ね者になったり、刺客に襲われたりしながら、やっとの思いで帰りついたら、1000人の幕府軍に攻められるまさかの展開。そんなハチャメチャぶりはまるで劇画です。

 実話の読者の多くは、おそらく映画やテレビで時代劇を見ることのできた世代かと思いますが、チャンバラ映画の全盛期を知らない若い世代にも楽しめる、まさに家族みんなで気楽に見たいライトな時代劇ですね。
 もちろん本格派のこだわりを感じる部分も。たとえばフィルム時代を思わせる抑えた画質。室内シーンの色調とか、画面いっぱいに広がる黄金色の稲穂だとか、絵づくりのクオリティーにこだわっているのが伝わってきます。
 最近はどこまでがCGか分からないのですが、あれだけの衣装を揃え、セットを組んでロケをしているのかと思うと、相当制作費も掛かっていそうです。

 さて、今までの刷り込みと違うと言えば、佐々木蔵之介が演じる藩主像。ステレオタイプの偉そうなお殿様と違い、藩士から農民たちに至るまで、まるで「おらが村の村長」のような距離感の近さ。我々が知らないだけで、こんな近い関係の藩もあったかもしれないな、と思わせる不思議な説得力は、佐々木蔵之介をはじめ、芸達者な役者陣によるものでしょうか。
 家臣や民が「この人なら仕方がない」と協力し、慕っている様子を見ていると、そこに地方自治の理想の「長」のあり方を示唆しているのかも、と思えてきます。ふざけているように見えて、ある意味「一石を投じた」映画かもしれません。

 このほど、新都知事にまさかの小池百合子が就任しましたが、2位との差が100万票という民意は本当に活かされるのか…。
 この映画のように、民から愛され、部下から信頼される「長」とはほど遠い気がしますが、まずは孤立しないよう、西村雅彦のようなおどけたスポークスマンを見つけることから始めた方がいいかもしれませんね。

画像提供元:(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

■『超高速!参勤交代 リターンズ』監督/本木克英 出演/佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生、六角精児ほか 配給/松竹 9月10日(土)全国ロードショー。
■幕府から突如、参勤交代を命じられた弱小貧乏藩の奮闘を描いた『超高速!参勤交代』の続編。前作で江戸への参勤を無事に成し遂げた湯長谷藩だったが、その帰り道に湯長谷で一揆が起きたとの知らせが入る。2日以内に一揆を収めなければ、藩のお取り潰しは免れない。彼らは行きの倍の速さで帰るはめに。しかしその裏に、政醇らに打ち負かされた老中・信祝が、復讐のため湯長谷藩を壊滅させようとの画策があった。命からがら湯長谷にたどり着くが、すでに城は乗っ取られた後だった…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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