話題の1冊 著者インタビュー 衣笠祥雄 『鉄人のひとり言』 青志社 1,300円(本体価格)

 衣笠祥雄さん(野球評論家)が『鉄人のひとり言』(青志社)を上梓した。これは氏が親しい友人、知人などに送っていたメールマガジンをまとめたもので、解説では語り尽くせなかったプロ野球のこと、メジャーリーグ、侍ジャパン、そして、高校野球の話など、鉄人ならではの愛情溢れる思いや鋭い心理分析がつづられている。特に今年2月のプロ野球・キャンプレポートでは、今日のペナントレースを言い当てた“予言の書”ともなっている。

 −−25年ぶりにカープの優勝が決まりました。

 衣笠 セ・リーグはカープ以外の5チームにけが人が多かったですね。前年優勝のヤクルトを筆頭に巨人も。DeNAも序盤戦は故障者で苦しみました。中日と阪神はチームの変換期にあたり、広島だけが去年と変わらない感じがしました。

 −−リオデジャネイロ五輪も終わり、次は東京五輪。野球・ソフトボールの追加種目入りが決定しました。

 衣笠 本当によかったと思います。大変なのは東京五輪の後、その次にどうつなげていくかです。競技としてのテレビ中継の影響もあるんですよね。2時間というのが各競技のだいたいの中継時間で、野球はその2時間では終わらない。そうすると、ルール変更を迫られ、タイブレーク制になるかもしれないし、9回までできないかもしれません。オリンピックの組織委員会は野球のことを知らない人も多いんですよ。本来なら、その人たちにもっと丁寧に説明しなければいけないんでしょうね。野球とはこういう競技です、こんな素晴らしい面もあります、と。

 −−書籍では、野球を多角的に見た熱い思いがつづられているんですね?

 衣笠 野球は楽しいんですよね、やってて。また、知れば知るほど面白くなる。少年野球で初めてユニホームを着て、『僕、何がしたい?』『試合に出たい』と。試合に出たら、今度は打ちたいと思うし、そこから練習の密度や内容が濃くなっていくわけですよ。考えることも増えてきて、練習メニューも違ってきます。究極のゴールがないんです。野球も人生と同じで、頑張れば頑張るほど、生きる道を教えてくれて、頑張らないと見えない世界なんです。自分の人生というものが見えたら、幸せでしょうね。世の中、100の物事があるとしたら、そのうち10か15の楽しいことが見つかれば、その人は幸せであって、後の80か85は頑張るしかない。その中で、自分はこうやって生きてきたんだと思えたら、幸せじゃないですか。野球の話をしながら、そんな思いが伝えられたらうれしいですね。
(聞き手/美山和也)

衣笠祥雄(きぬがさ さちお)
1947年、京都府生まれ。平安高で甲子園に出場し広島カープに入団。通算2543安打、504本塁打のほか、2215試合連続出場(日本記録)、678試合連続フルイニング出場(歴代3位)という偉業で知られる「鉄人」。

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