現代の魔法使い・落合陽一が超高齢化社会の労働力激減で先読み「人間が介在することで価格競争力を失う」

現代の魔法使い・落合陽一が超高齢化社会の労働力激減で先読み「人間が介在することで価格競争力を失う」

「2030年あたりには『“非”自動運転税』というのがつくられるんじゃないかと思います」と語る落合陽一氏

“現代の魔法使い”こと落合陽一が、人類の未来を予言する『週刊プレイボーイ』本誌の月イチ連載『人生が変わる魔法使いの未来学』。

AIとロボット制御の技術はまさに日進月歩。自動運転をはじめ、「これまで人間がやっていたこと」が次々と機械に置き換えられていく時代がもうすぐ到来する。そんななか、次第に焦点となっていくのは「人間ならではのエラー」だと落合陽一は言う。

そして将来は、そこに税金まで課されるようになるかも…って、一体どういうこと!? 前編「自動運転車が普及して車内での時間の取り合いになる」」に続き、聞いた。

* * *

―やっぱり完全自動運転が待ち遠しくなってきました。技術的な問題もありますが、一番の問題は法整備ですよね。昨年5月のテスラの自動運転中の事故のような問題が起きると、どうしても反対論が起きます。

落合 安全性の問題にしたって、自動運転のほうがずっと危険性が少なくなっていくというのは目に見えているんですよ。例えば、すでに囲碁の世界では、AIと人間がタッグを組むと、人間が足を引っ張ってばかりなんです。判断を間違えるのはコンピューターではなく、人間のほうが圧倒的に多い。

渋滞にしてもそうです。多くの渋滞というのは、上り坂でつい速度が落ちがちだとか、合流がスムーズにいかないとか、誰かがうっかりブレーキを踏んじゃうとか、無意味に車線を変えまくるドライバーがいるとか、そういうことが原因で激しくなっているわけでしょう。自動運転にはそういう「エラー」がないですからね。交通量が多少増えたとしても、渋滞は絶対に減るはずなんですよ。

―人間が介在しないほうがうまくいく。

落合 そうです。だから、2030年あたりには「“非”自動運転税」というのがつくられるんじゃないかと思います、きっと。

―自動運転システムを搭載していないクルマを運転したいなら、税金を余分に納めなさいと。

落合 だって事故のリスクも高いし、渋滞を巻き起こすし。ETC割引みたいなものと考えたらわかりやすいと思いますけど。

―なるほど! 確かに、当初はETCだけ高速料金が安くなることも「不公平だ!」って非難囂々(ごうごう)でしたけど、あっという間にみんな慣れちゃいましたもんね。今ではむしろ、ETCじゃないクルマが料金所で止まるとイラッとする人も多そうだし。

落合 社会のリスクやコストというものを合理的に考えたら、当然そうなりますよね。誰がどう見ても自動化したほうがいいでしょ、趣味で運転したい人はお金払ってくださいね、という。これは何もクルマに限った話じゃなくて、農業や漁業、林業、それに工場なんかでも同じことになるかもしれません。

―つまり、自動運転トラクターとか、漁船搭載ロボットとか、工場内のロボットアームとか、そういうものを使わないーーつまり「人間」が多いと税金がかかる、と。

落合 実際にそうなるかどうかはともかく、税金を取りたくなっちゃいますよね。売り上げに対して人数の上限を決める、とか。

―「○○さんの手作り野菜」とか、そういうのがめちゃくちゃ高くなりそう(笑)。

落合 なりますね。というか、税金うんぬん以前に、自動化が進めば進むほど、人間が介在することで価格競争力を失うようになりますからね。しかもコンピューターでうまく制御すれば、「○○さんの手作り」より自動運転トラクターの野菜のほうがおいしかったりしそうだし。

以前、ある自動車製造工場の内部を見学させてもらったことがあるんですが、もう人間よりロボットのほうがはるかに多いんですよ。ロボットアームがすごいスピードでいろんな作業をして、流れるように工程が進んでいって、時々、人間が出てきて細かい検品だけする。

それで、車両製造用のごついロボットアームの価格を聞いてみたら、意外なことに1台数百万円で買えるんです。人間の工員の年収より安いくらい。休まないしミスしないロボットが、1年足らずで元を取れる価格で買えちゃう。

―なるほど…確かに、それはもう自動化待ったなしですね。

落合 先ほどの税の話は、もはや完全に政府の産業政策の分野ですけど、日本はこれから人間の労働力がどんどん減っていく超高齢化社会になる。だから、人から機械への置き換えを合法的にやって生産効率を劇的に上げるチャンスなんですよ。ムダな長時間労働は自動化によって淘汰(とうた)され、みんな必死になって効率化を考える。これしかないんじゃないかと思います。

(構成/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●落合陽一(おちあい・よういち)







1987年生まれ。筑波大学学長補佐。同大助教としてデジタルネイチャー研究室を主宰。コンピューターを使って新たな表現を生み出すメディアアーティスト。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学大学院で学際情報学の博士号取得(同学府初の早期修了者)。最新刊は『超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト』(大和書房)

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