おっぱい控えめハニーじゃダメですか(涙)。アンドロイド感高めの西内まりや主演『CUTIE HONEY -TEARS-』

おっぱい控えめハニーじゃダメですか(涙)。アンドロイド感高めの西内まりや主演『CUTIE HONEY -TEARS-』

10〜20代の女性から支持される西内まりやを起用した『CUTIE HONEY -TEARS-』。涙を流すはめになるのは誰?

 ヒューマノイドと人間との間には“不気味の谷”が存在するが、それ以上に大きな谷として存在しているのが、男女間におけるセクシーという言葉の認識の違いである。女性が憧れるセクシーな女とは、洗練されたファッションセンスを身に付けた大人の女性であることが多い。一方、男にとってのセクシーな女とは、すぐにでもヤレそうな女を指している。この谷はそうとう深い。そんな男たちが思い描く妄想上のセクシーさを体現してみせていたのが、庵野秀明監督による劇場版『キューティーハニー』(04年)の佐藤江梨子であり、テレビ版『キューティーハニー THE LIVE』(テレビ東京系)の原幹恵だった。どちらも見事なボインちゃんだ。男性目線の従来のハニー像に対するアンチテーゼとして、新作『CUTIE HONEY -TEARS-』の西内まりやは登場することになる。

 歴代のハニー女優に比べると、バストサイズはかなり控えめな西内まりや。コスチュームも胸の部分が空いていないことから、オールドファンは不満げだが、きっちり整った顔立ちと無駄のないスレンダーボディによって、アンドロイド感は今までになく高い。これまでのキューティーハニーは、変身前は「如月ハニー」を名乗っていたが、新作では「如月瞳」となっている。従来のハニーとは異なる新機種だと考えたほうがよさそうだ。時代設定は近未来。街は高層タワー化され、上層階で暮らす富裕層と汚染が進む下層階で生きながらえる貧困層とに分かれる格差社会となっている。宮崎駿アニメ『未来少年コナン』(NHK総合)のインダストリアを思わせるディストピアで、ハニーは宿敵・ジルと戦うことになる。

 記者として働く早見青児(三浦貴大)は、下層階に住んでいた少年時代に、空から降ってくる美女に出会った。その美女こそが如月博士(岩城滉一)が開発した究極の女性型アンドロイド・如月瞳(西内まりや)だった。『未来少年コナン』に続いて、みんなが大好きな『天空の城ラピュタ』(86年)を彷彿させる序盤である。もう一度、彼女に逢いたい。そんな想いで高層タワー内を自由に行き来できる記者になった早見。だが、姿を消した如月瞳を追っているのは早見だけではなかった。高層タワーをコントロールする冷酷なアンドロイドのジル(石田ニコル)もまた、「空中元素固定装置」を内蔵した瞳の行方を追っていた。瞳とジルとの戦いに、ジルの圧政に抵抗する下層階のレジスタンス・浦木(高岡奏輔)らが絡んでいく。

 これまでの実写版『キューティーハニー』は、ハニー女優の魅力をどれだけ引き出せるかに特化した内容になっていた。今回の新作では西内まりやのオシャレメンターぶりを嫌というほど見せつけられるのかと思いきや、かなりシリアスなSFドラマとして展開していく。人間と同様の感情を有する瞳は、自分と関わった人間はみんな不幸になると思い込み、早見たちから距離を置こうとする。今までの頭のネジが抜け落ちているようなノー天気キャラだったハニーとは180度異なる、意識高い系ヒロインとなっている。普通の人間である早見は、ジルたちの襲撃に巻き込まれる度にボロボロになるが、それでもようやく再会できた瞳から離れようとしない。昔から年をとらずにいる瞳は非人間=アンドロイドだと早見は気づく。それでも特ダネとしてのネタ以上の魅力を、瞳は感じさせる。やがて瞳と早見の関係は、生身の男女の恋愛関係ともコンピューターとプログラマーとの関係とも異なる奇妙なものへと育っていく。

 言ってみれば、新作ハニーは瞳と早見との近未来SFバディムービーだ。かつてバディムービーは白人と黒人という肌の違いがあれど、男同士の汗くさい組み合わせが圧倒的に多かった。でも近年になると、女同士や男女によるバディムービーも作られるようになってきた。社会における男女のパワーバランスの変化が、バディムービーには反映されている。冒頭で触れた男女間の深い谷も、これから複雑に変容していくだろう。さらに人工知能の誕生により、社会はますます変わっていく。スパイク・ジョーンズ監督作『her/世界でひとつの彼女』(13年)では姿のない人工知能型OS(声:スカーレット・ヨハンソン)に恋してしまうバツイチ男が描かれたが、現実世界でも人工知能を搭載したアンドロイドに親しみを覚える世代が今後は現われるだろうし、その中には恋愛感情を抱くようになる人間もいるに違いない。

 本作を撮ったのは、ミュージックビデオ界でキャリアを積んできた映像作家のA.T.とVFXのスペシャリスト集団「白組」の若手クリエイター・ヒグチリョウ。ハニーと早見を通して、両監督は新時代の新しい関係性を提示している。そう考えると、新しいハニーのおっぱいが露骨に大きすぎないことも理解できる。

 アンドロイドながら人間の心の機微を理解する最新型ハニーは、男の妄想上の産物だった旧型ハニーたちに比べると、リアルな分だけ人類にとって危険な存在になりかねない。アンドロイドに夢中になる人間が増えれば増えるほど、少子化問題はますます深刻化していくだろう。セックスの匂いを感じさせない西内まりや版ハニーを観ながら、そんなことを想う。
(文=長野辰次)

『CUTIE HONEY -TEARS-』
原作/永井豪 監督/A.T.&ヒグチリョウ 脚本/中澤圭規、田中靖彦 主題歌/西内まりや「BELIEVE」 出演/西内まりや、三浦貴大、石田ニコル、高岡奏輔、永瀬匡、今井れん、エリック・ジェイコブセン、深柄比菜、仁科貴、倉野章子、笹野高史、岩城滉一 配給/東映 10月1日(土)より全国ロードショー 

(c)2016「CUTIE HONEY -TEARS-」製作委員会

http://www.cutiehoney-movie.jp

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