三浦しをん、EXILE一族にハマる「しかも私は熱しやすくて冷めにくいタイプ」

三浦しをんさん 撮影/北村史成

 数々の話題作を世に送り出している作家の三浦しをんさんが、ファッション雑誌『BAILA』に2014年から連載する、日常の出来事を綴ったエッセイ『のっけから失礼します』。

■変わらないアホぶりだな(笑)

「5年前に声をかけていただいて始めたものが、ようやく一冊になりました。■連載の依頼をいただいたとき、日常系のエッセイを連載するのは5年弱ぶりくらいだったので、30代は日常のことってあまり書いていなかったんですね。

 でも今回、単行本にまとめるにあたって、5年分の原稿を読み返してみたら『■私の30代、なんだったんだろう……』と、ちょっと遠い目になるくらい、■コンスタントにエッセイを出していた若いころとあんまり変わらないアホぶりだなと思いました(笑)」

 ちなみに「のっけから」というタイトルは、連載が雑誌の最初に掲載されていることがその理由だそう。

「■内容の縛りはなく、題材もなんでもいいという依頼だったので、それならよかった、と。毎回おしゃれな服について書く、とかだと困ってしまうんですけど、そういうのは、ほかに専門の方が書いているページがあるので、私は冒頭から箸休めみたいなことを書いています(笑)」

 頻繁に道を聞かれたり、タクシーに乗ると運転手に話しかけられがちで、ぎっくり腰になりかけ、体形の変化にびっくりし、痛む親知らずに悩まされるといったありふれた日常も、■三浦さんの手にかかると爆笑必至のエッセイに。

 ゆえに電車の中などで読むと、こらえ切れずに「ブフッ!」と吹き出してしまうので、ぜひともご注意を!

■私は熱しやすくて冷めにくい

 そんな今回のエッセイで印象的だったことを伺うと、

「■やっぱりEXILE一族にハマったことですね。怒濤(どとう)のハマりぶりがすごいなーって」と笑顔になる三浦さん。

「芸能人でも漫画でも、私はいつも突然ハマるんですよ。■だって恋っていうのは、急に落ちるもんじゃないですか!」

 だんだんハマるタイプの方もいらっしゃいますよね、と水を向けると……。

「やってみて、ああこれ自分に向いてるわぁ、みたいな……ああなるほどね、でもそういうパターンもあるって今までまったく考えたこともないです。尿切れが悪いみたいな、そんなの私は好かんです!(笑) 

三浦しをん 撮影/北村史成

■ しかも私は熱しやすくて冷めにくい、いちばん始末に負えないタイプで、わりと長く、しかもずっと好きなんですよ。だから熱したものがどんどん増えていって、鈴なり。もう大変なんです!」

 本書には三浦さんが愛するさまざまなことが詰まっていて、ひとつひとつのエピソードを読むと、■誰になんと言われようと好きなものは好きと言えることが大事で、無理して人に合わせる必要はなく、このくらいゆるく考えていいし、少々はみ出したっていいじゃないと物事をポジティブに考えられるようになります。

「■私、人と違うことはあまり気にならないんですよ。だって違うのが当たり前だから。

 でも確かに、以前はこういうエッセイを書いても、『本当くだらないな』くらいの感じで、ゆるく受け流してもらえたんですけど、最近は『このいい加減さとだらしなさは許しがたい!』みたいな感じで怒っちゃう人の率が若干上がった感じがしますね……。

 ■それはみなさん、自分にすごく厳しいからじゃないですか。自分に厳しいってことは、他人にも厳しいってことですよね??はみ出すのをやめよう、やめようと思っているときに、はみ出してる人のことを見てしまうと、『私はこんなにはみ出さないようにしているのに、なんでお前ははみ出してるんだ!』という怒りが湧いて、それで怒っちゃうんじゃないでしょうか。

 ■まあ私が本当にいい加減だから、お怒りっていうのもわかるんですけど……気になるところって、人によって違いますからね、いいんですよ、ゆるくて(笑)」

■私のエッセイはだいたい自虐

 古墳に興奮する父親を冷静に見つめ、驚きの場所から驚きのものが見つかり、1日のサイクルを見直したら衝撃の結果になったことや、実家の庭に突然、巨大な鳥が集まりだす事件、「坊や」と名付けた自転車との別れと再会…。

 妄想好きな三浦さんを驚愕させた度を超えた妄想など「■しをんワールド」は1度ハマると抜け出せない面白さです。

「■エッセイというのは自虐か自慢なんですが、私はだいたい自虐。でも自虐も裏返せば自慢ですから……って、なんの自慢かよくわからないけど(笑)」

 今回、単行本化にあたって加筆したところ、書きすぎて予定していたページギリギリになってしまうほどだったそうなので、連載時からのファンの方も楽しめる内容になっています。

「5年分の原稿と書き下ろしという結構なボリュームなので、最初のページから順に、集中して読まなくても大丈夫です! 集中して読むと疲れたり、アホになってしまうんで(笑)。

 ■ちょっとした隙間の時間とか、息抜きしたいなというときにパラッと読んでいただければいいですね」

■ライターは見た!著者の素顔

 ■三浦さんのご家族(父、母、弟)のエピソードも頻繁に登場する本書。みなさん、気づいてらっしゃるのでしょうか?

「■今のところクレームはないので、たぶん読んでないんだと思います。母は『これはフィクションだから』と言うと『ああ、そうよね』って引き下がるんです。自分の言動とか、あんまり覚えてないんですよ。

 だからフィクションだって言い張ると、捏造かなと思うみたいで。エッセイだから、ノンフィクションなんですけどね(笑)。■父は老眼がひどいと言ってたし、弟はまったく活字を読む習慣がなくて、肉体の鍛錬に忙しいので……たぶん大丈夫でしょう!」

(取材・文/成田 全)

●PROFILE● ■みうら・しをん。1976年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部文学科演劇専修卒。2000年『格闘するものに◯』でデビュー。'06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、'12年『舟を編む』で本屋大賞を受賞。著書に『神去なあなあ日常』『風が強く吹いている』『きみはポラリス』『光』『ののはな通信』『愛なき世界』『ビロウな話で恐縮です日記』など。

『のっけから失礼します』三浦しをん=著集英社 1600円(税抜き)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

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