M-1優勝とろサーモンは苦節15年 お笑い芸人“極貧”の現実

M-1優勝とろサーモンは苦節15年 お笑い芸人“極貧”の現実

売れない、食えない、カネがない…(C)日刊ゲンダイ

 吉本興業主催の漫才コンクール「M―1グランプリ2017」で4094組の頂点に立った「とろサーモン」の久保田和靖(38=写真右)は、「これから秒刻みの忙しさになっても全然平気でしょう。15年の貧乏で培った体力がありますから」と言った。

 宮崎日大高校の同級生である村田秀亮(38=同左)と02年にコンビを組んで15年目。村田は又吉直樹の芥川賞受賞作「火花」のドラマ版で売れない芸人を演じており、「ドラマでの『売れたいな』は本気のセリフでした。上京した頃は仕事がなくて、家のフローリングに四つんばいになって、長渕剛の『東京』を聞きながら泣いていた」と目を光らせていた。

 ふたりは吉本のタレント養成所「NSC(吉本総合芸能学院)」出身だが、卒業したからといって、売れなければ食べていけないのが厳しい芸人の世界。

 村田はパチンコ店などでのアルバイトで食いつないでいたそうだが、それは同養成所出身の又吉も同じで、売れるまでは「ホンマにつらくて、鬱屈した日々でした。まず当たり前のようにカネがなかったですね。道にカネが落ちてないか探して歩き回って、100円拾ったりしてました」と日刊ゲンダイの「貧乏物語」のインタビューで語っていた。

 芸能プロデューサーの野島茂朗氏がこう言う。

「お笑いのコアなファンは別にして、一般の人はテレビを見てお笑い芸人を知ります。売れるには、テレビに出なければはじまらない。テレビで顔を売って、学園祭やイベントのオファーへとつながっていくというコースなのです。

 そのテレビに出るためには、今回の『M―1』のようなコンクールで勝ち抜くか、ライブで観客の支持を得るか、テレビ関係者の注目を集めるかしかないのですが、コンクールは極めて狭き門。才能があっても勝てるか分からないのは『M―1』だけじゃないし、ライブといっても、駆け出しや売れない芸人は大半がチケットバック制のギャラですから、たとえ50%バックであっても、客が1人か2人しか来なくて、手取りが1000円とか500円というのも珍しくない。

 それでも舞台に立てるだけマシで、人気がなければ、お払い箱となってしまう。そこから返り咲くのは至難ですから、友人や知人に劇場に集まってもらって格好をつける芸人もいます。そこで劇場内にあるアンケートの人気投票で名前を書いてもらって上を狙うのですが、さすがに招待してチケット代まで取れず、持ち出しになるケースもある。最近は渋谷の劇場前で『無料で来てください』と通行人に呼び掛けたりしているので、芸人にはさらにきつい状況でしょう」

■アルバイトやヒモで食いつなぎ……

 そうやって努力して芸人を続けても、固定給や社会保険はまずないため、食べていくための金を稼がなければならない。

「ドラマや映画のエキストラといった芸能の仕事もありますが、飲食店でのアルバイトが大半だと思います。それでも、時間は限られますから、仕送りに頼ったり、お笑い好きの女性のヒモになったり。そうしながら借金地獄に陥ったり、なんとか芸人を続けながらも、食べるために共同経営者や出資者を見つけてラーメン屋や居酒屋を出店している中年芸人もいますね」(野島氏)

 あるベテラン芸人は「寝ても起きてもネタを考えてます」と舞台裏で記者に打ち明け、額の汗をぬぐっていた。そうやって、運よく売れたとしても、一発屋で終わるケースがほとんどなのは言わずもがな。華やかなスポットライトの裏側は、かくも残酷なのである。

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