森川智之&甲斐田裕子、『バイオハザード』映像の進化に「実写のつもりでやっている」

森川智之&甲斐田裕子、『バイオハザード』映像の進化に「実写のつもりでやっている」

森川智之&甲斐田裕子が和やかにトーク クランクイン! 写真:松林満美

日本が世界に誇るサバイバルホラーゲームの金字塔『バイオハザード』シリーズ。その人気はゲームだけにとどまらず、実写映画をはじめ、これまで数多くの映像作品を生み出してきた。そして、シリーズ初となる連続 CG ドラマ『バイオハザード:インフィニット ダークネス』が、Netflixにて全世界独占配信中だ。最新作では、シリーズ屈指の人気キャラクターレオン・S・ケネディと、クレア・レッドフィールドの2人が登場。世界を股にかけ、生物兵器を巡る陰謀に立ち向かう姿が描かれる。日本語吹き替え版でレオン、クレアを担当するのは、森川智之、甲斐田裕子というおなじみの2人。長年演じ続けているレオンとクレアの役作りから、吹き替え声優として長く最前線で活躍しつづける2人ならではの決意まで、終始和やかな掛け合いで語ってくれた。

●進化し続ける映像表現に負けない演技を

――森川さんは2012年から、そして甲斐田さんは2008年からレオンとクレアを演じてこられました。今回の『バイオハザード:インフィニット ダークネス』(以下『インフィニット ダークネス』)の映像は、もはや実写のようなクオリティにまで達していますね。

森川:ゲームも映画も、毎回「CGもついにここまできたか」と思っていて、「もうこれ以上はないよな」と思っていたら、またそれを超えてリアルになってくる。進歩に驚きもあるんですが、同時に恐怖でもあるんですよ。映像に負けないようにお芝居をしていかなきゃいけない。

甲斐田:今回クレアを演じるにあたって、2008年のCG映画『バイオハザード:ディジェネレーション』(以下『ディジェネ』)をかなり見直したんです。もう13年経っているんですが、今でも普通に見れるクオリティだなと。でも実際に今回の映像を見ると実写映画と見まがうというか、もはやCGを吹き替えていると思ってやってないんですよね。キャラクターの表情なんかもどんどん繊細になっているので、その分、私たち演じる側もそれを拾っていかなきゃいけない。

森川:もう実写のつもりでやってるよね。その場でひとりの人間が息づいている感覚。役者さんが演じているのと同じなんです。だから台本に書かれているものだけでなく、こちらもしっかり気持ちを作らなきゃいけない。だから精神的にも体力的にもかなり疲れますけど(笑)。

甲斐田:ホントそうです。キャラクターの息遣いは特に気を遣っていますね。

●「クレアはずっとクレアのまま」 長年演じ続ける役柄への印象

――レオンとクレアは、もはやファンから見ても実在の俳優と同じような感覚があります。長年活躍していて、まるで主演作が何本もある人気俳優のような。彼らの印象について、最初に演じてから変わったりしていますか?

甲斐田:クレアはずっとクレアのままですね。彼女自身の芯の部分はいつも変わらなくて、慈愛に満ちていて、母性があって。そして悪に対しては力強く反発して、弱いものを守る。そういう部分はまったく変わらない。でも、顔の作りは変わっている時があって、『バイオハザード:RE2』(2016年発売のゲーム:以下『RE2』)の時は、こんな顔になったんだ! と驚きがありましたね(笑)。でも今回は、いつものクレアだなと思いました。

森川:クレアは意外に「おっ! 変わった!」っていうとこあるよね。その辺の裏側を知りたいよね。毎回、顔の雰囲気が少し違う(笑)。レオンはあまり変わらない方だけど、男としての人生の遍歴の中で、顔が変わっていくというか。僕はそういう感覚で受け入れていますね。

●シリーズ特有の異なる時間軸の中での役作り

――ゲームも映画もそうですが、このシリーズは毎回作品ごとに描かれる時代が異なります。今回の『インフィニット ダークネス』は2009年が舞台ですが、お2人が直近で演じられた『RE2』はそのもっと前の1998年が舞台でした。異なる時間軸を演じ分けなければいけないわけですが、そこはかなり意識しながら役作りされるのでしょうか?

甲斐田:はい。かなり(笑)。

森川:そこが一番大変なところですね。毎回、時間をかけて擦り合わせます。収録スタジオに入って、「今回どんな感じ?」って監督やスタッフとディスカッションして、それで、「今回は、こことここの、この間の話ですね」といった具合に。

甲斐田:今回は『ディジェネ』の1年後という設定ですが、『ディジェネ』は13年前の作品なので、私自身としては、13年経っているわけです。でもクレア的には1年しか経っていない。なので、そこへ戻る作業が必要でした。そういう意味では、今作の前にゲームの『RE2』があったことは助かりましたね。あの時は、かなり苦労して1998年のクレアに戻したので、あの時に比べれば今回は楽でした。

ゲームで言えば、今作は2015年の『バイオハザード:リベレーションズ2』に近いと思います。改めて聞いてみると、あれが私の素のやりやすいトーンでクレアをやっているなと。なので、あそこよりはまだ少し20代の初々しさがあるのかなと思いながら作っていきました。

●長年戦い続けるレオンとクレアに掛けてあげたい言葉

――数々の修羅場をくぐってきたレオンとクレアですが、2021年の現在、もし2人に声を掛けるとしたら、どんな言葉を掛けてあげたいですか?

森川:まさに現実の世界情勢が、図らずも『バイオハザード』の世界に寄ってきているなと。

甲斐田:本当にそうですよね。現実がゲームに近づいている。「僕が止める」って言ってたけど、止められなかったね、レオン…。

森川:本当だね(笑)。今作のストーリーにしても、あくまでエンターテインメントなんですが、ワールドワイドに展開する中で、世界情勢も政治的な思惑も見えてくる。今までは「これが現実になったら恐ろしいよね」と思って観ていたはずだったのに、今はわれわれがまさにそれを実感している。なので、この物語が本当にリアルに感じるんです。

そういう意味で俳優レオンには、「次回作どうする?」って声を掛けるかも(笑)。現実が追い付いてきているんで、次はどんなものにするかって。

甲斐田:クレアも今頃どこかで戦ってると思うんですよね。

森川:この2021年だとクレアの方が忙しいよね、たぶん(笑)。

甲斐田:それこそ、今作でクレアが所属している「テラセイブ」みたいなNGO団体で働きながら、みんなのために戦ってくれてるんだろうなって。その一生懸命さとまっすぐな気持ちは本当に尊敬しています。だから「私も一緒に頑張るよ。クレアが望んでるような世界になるといいね」って声を掛けるかな。

●レオンとクレア以外で、2人が演じてみたいキャラは?

――このシリーズで、レオンとクレア以外でほかに演じてみたいキャラはいますか?

森川:なんだろう、いろいろあるなぁ。

甲斐田:私はゾンビとか怪物になっちゃうキャラ(笑)。例えば『ディジェネ』だったら(小山)力也さんの役みたいな。

森川:ああ、いい人キャラからのってやつね(笑)

甲斐田:そうそう!

森川:要するに唸(うな)りたいってことね。

甲斐田:声を加工されて。

森川:あの“間(あいだ)”をやってみたいよね。人間からゾンビとか怪物になっていくあの間の部分。1回下を向いてからの、来るぞ…っていうね。

甲斐田:そうそうそう! 汚い声を出す(笑)! そういうのやってみたいです。

森川:でもやらせてもらえなさそうだよね。甲斐田さんのキャラの場合、華麗に飛んだり跳ねたりでゾンビかわしちゃいそうだし(笑)。

僕がやってみたいのは、『バイオハザード』的によく出てくるキャラで大統領。それも戦う大統領ね。

甲斐田:ゾンビと戦うんだ! 守ってもらうんじゃなくて(笑)

森川:でも僕が大統領をやると、たぶんめちゃくちゃアクションすると思う(笑)。誰よりも強いじゃん、みたいな。

――森川さんはトム・クルーズの吹き替え声優としても有名ですが、レオンとトムは共通点が多いんじゃないですか? アクション俳優として。

森川:レオンはもちろんすごいんですけど、レオンをやってると、逆にトムすげえなって思います。実在の人間なのに、レオンに近いことを実際にやってるんで。でも、たまに本当にケガしてるのとか見ると、「あ、トムも人間なんだな」って思いますね(笑)。

●「吹き替え」という仕事、その第一線を歩んできた2人だから思うこと

――お2人とも声優としてベテランの域に入っています。今作以外での共演も多いですが、お互いに若い時に抱いていた印象と、今こうやって最前線にいることについて思うことはありますか?

森川:まず、僕らがこうやって吹き替え声優の中心にいることがうれしいんです。2013年の声優アワードで新設された、外国映画・ドラマ賞は、最初の受賞者が僕ら2人なんです。あれからこうやって常に中心にいるからこそ、胸を張って吹き替えの世界でやっていると言えると思うんです。

甲斐田:最初に会った頃から、森川さんはすでに最前線の人でした。あの頃は、吹き替え声優とアニメ声優は別のものというか、同時に活躍している人はあまりいなかったんです。でも、森川さんは当時からどっちもできる人で。憧れの先輩だったんですけど、少しずつ近づいてこれたのかなと。おこがましいかもしれないですけど、もっとこの業界を発展させるためには、私たちが引っ張っていかなきゃ、と考えるようになりました。

森川:うちの養成所にも、甲斐田さんみたいになりたいって、目指してる人いっぱいいるよ。甲斐田さんもそういう立場の人になったんだなって思うとうれしいですね。

吹き替え声優は、ずっとレジェンドの大先輩がけん引してきた世界なんです。でも、いつまでも僕らがそこに甘えていてもしょうがない。今後は僕らが引っ張っていく。そうすれば若い人たちも吹き替え声優を目指してくれると思うんです。若い人たちは、今活躍してる人たちを見て目指すわけですから。だから僕らの世代が、吹き替えの歴史を担っているという気持ちにならないといけない。もう、僕たちはそういう立ち位置になってきているんだと思っています。

 数多くの作品で吹き替えを担当し、その最前線で戦ってきた2人がそろう『バイオハザード:インフィニット ダークネス』。時にユーモアを交えながら穏やかに語る口調からは、吹き替えの仕事に向き合う真摯(しんし)な姿勢と責任感がひしひしと伝わってくる。これからレジェンドになっていくであろう2人の活躍にますます期待したい。(取材・文:稲生稔 写真:松林満美)

 Netflixアニメシリーズ『バイオハザード:インフィニット ダークネス』(全4話)は全世界独占配信中。

関連記事(外部サイト)