大原櫻子、頭の固い大人にはなりたくない――遊び心を大切に歩む芝居の道

大原櫻子、頭の固い大人にはなりたくない――遊び心を大切に歩む芝居の道

大原櫻子 クランクイン! 写真:高野広美

ドラマ、映画、舞台、歌手活動とさまざまなジャンルで輝きを放つ女優でアーティストの大原櫻子。2022年は、ストレートプレイ初主演となる舞台『ミネオラ・ツインズ』で幕を開ける。上演中に26歳の誕生日を迎え、さらなる進化を遂げようと意気込む大原に話を聞いた。

◆“ホルモンの興奮状態”が求められる1人2役に「嫌な予感(笑)」

 ピュリッツァー賞受賞作家ポーラ・ヴォーゲルによる本作は、1950年代から80年代のアメリカを舞台に、激動の時代、女性たちが何を考え、何を体験してきたかを、痛烈な風刺を込めて描いた、痛快で挑発的なダーク・コメディー。日本初演となる今回、演出は、2021年読売演劇大賞で最優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎が務め、共演には八嶋智人、小泉今日子という実力派が顔をそろえる。

 大原は、主人公であるマーナとマイラ、一卵性双生児の姉妹の30年にわたる人生を1人2役で演じる。作者であるポーラは舞台上演にあたり、この役を1人の女優がカツラと衣装を目まぐるしく変えながら演じ分けるよう指定しており、大原にとってかなりの挑戦作となりそうだ。

――はじめにこの作品のオファーをお聞きになった時のお気持ちを教えてください。

大原:日本では上演されていない作品だったので、どういうお話なんだろうと思いました。作者のポーラ・ヴォーゲルさんが書かれたプロダクションノートというのがあって、役を演じる上での演出方法などが書かれているんですけど、「サラの役以外は常にホルモンの興奮状態で演じられなければならない」というのが書かれてあって! その文字を読んだ瞬間に非常に嫌な予感がして(笑)。どんなすごい作品なんだろうって…。

台本を読んでみたら、なかなか1回じゃ理解ができないというか、難しい作品だなーって感じました。この作品への挑戦状を与えてくださった(プロデューサーの)北村(明子)さんが、「20年間ずっとこの作品をやりたいなって思ってたんだけど、櫻子ちゃんならできると思う」と言ってくださったので、挑戦しようと思いました。

――台本を拝読すると、早変わりも多くてかなり大変な印象なのですが…。

大原:『メタルマクベス』で1人3役の経験はあるんですが、双子を、それもここまでカロリーの高い役が2つというのは初めてです。衣装やメイクの早変わりも舞台上で見せる形になるんです! 八嶋さんも小泉さんも2役を演じられるので、どうなるか全くイメージが湧かないです(笑)。

――演じられるマーナとマイラはどんな女性でしょうか。シンパシーを感じる部分はありますか?

大原:2人は全く正反対の性格とポリシーの持ち主で、180度違う人物だけども、後半になってくると同一人物に思えてくる役で。180度違うようで実は1人で、みたいな感覚ですね。人間、いろんな考え方を持っていて、1人の人間の中にもいろんな考え方があると思うんです。マーナもマイラも全然違う極端な考え方を持っている2人ですけど、どっちのことも分かる、どっちの感性も理解できるというか…。どっちとも似ていないけど、どっちにも似ているなっていう感じがしています。

◆ありんこの時間でも人生を変えられるようなパワーが演劇にはある

――共演の八嶋さん、小泉さんとは初顔合わせとのことですが、お2人の印象はいかがですか?

大原:お会いするまでは、八嶋さんは、明るい役をやられていることも多く、お芝居を見るだけで笑顔になれる印象で、小泉さんはマルチな方でとても芯のしっかりした女性というイメージでした。実際お会いしてみると、自分の出番じゃなくても、私が引っかかっていることに親身になって一緒に考えてくださったり、本当に優しくって。掘っても掘っても深い物語なので、アドバイスをいただくことも多いですけど、分かんないことがあったら聞いたほうがご迷惑にならないだろうし、温かい方々なので、分かんないままでうやむやにするのではなく、ディスカッションできる感じでうれしいです。

――本格舞台は1年ぶり。ドラマ、歌とさまざまなジャンルでご活躍ですが、大原さんにとって舞台はどんな存在でしょう。

大原:お仕事をしていくうえで、ドラマだったら今日中にこの分撮らなきゃいけないとか、歌だったらいついつ発売に向けて…とか、リミットっていうのがいろんな仕事にはあって。でも舞台は、ありがたいごとに1ヵ月くらい練る時間があるじゃないですか。それって、自分の人生の中で、いろいろ立ち止まって自分自身や人生ってものを見つめ直したり、考えたりする時間をくれる。自分自身の人間性も深まる瞬間というか…。

(舞台の)2時間って人生の中ではありんこみたいな短さの時間だと思うんですけど、ありんこの時間で人生を変えられるようなパワーが演劇にはあるって思うんですよね。1人でも人生を変えられるのなら、頑張りたいなって思っています。

――コロナ禍を経て、お客さんの前で演じたり歌ったりすることへの意識も変わりましたか?

大原:お客さんの拍手の音が変わりましたよね。今年の誕生日に舞台に立たせていただいたんですけど、幕が開いた瞬間にパチパチパチ〜!という拍手が起こって、すごいメッセージを感じたんです。声を出せない分、拍手のエネルギーが何倍にもなったなって感じました。そんなお客さんの拍手の音にこっちも応えたいと思ってより頑張ることができるし、それはいい意味で変わったなって。

◆いつまでも遊び心を忘れずにいたい

――2013年の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でのデビューから間もなく10年を迎えます。

大原:早かったですね〜。あっという間におばあちゃんになっちゃいそう(笑)。

――この10年で、ターニングポイントになった出会いはありますか?

大原:そうですね…。お芝居をする上では、(演出家の)小川絵梨子さんとの出会いです(編集部注:大原は、2018年上演のミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』で小川の演出を受けた)。「芝居するってさ、恥ずかしいよね」「殻を破るってすごく恥ずかしいことだと思うんだよ。でも、そこを破った時に初めて役ってつかめるよね」ってお話をされた時に、“あー、なんと役者さんを理解してくださっているんだろう”って思ったし、作品と役者を愛してくださるのが演出家なんだって改めて感じて…。あの出会いは大きかったです。

――以前のインタビューで、「なにもしていない芝居で存在感を出せる俳優になること」を目指しているというお話をされていたのが印象的でした。その目標には近づけていそうでしょうか?

大原:いや〜、全然実感ないです。その目標は古田新太さんなんですけど、見るたびに“なんなんだろう、あの人”って(笑)。(自分の中で演技を)つかめたって思っても、古田さんの芝居を見るたびに“全然できてない、私…”ってなるんです。「なんでそんな、自然と呼吸できるんですか?」って感じで、本当にすごいんですよね…。

――1月10日の誕生日で26歳を迎えられます。20代後半の理想はありますか?

大原:ピュアでいたい〜(笑)。私、「どんなタイプの男性が好きですか?」と聞かれると、「少年みたいな心を持った人が好きです」って答えるんですけど、男性でも女性でも大人になって、頭固いとか、面倒くさい考えの人間にはなりたくはなくて。子ども心は忘れたくないです。じゃないとお芝居ってできない気がするんです。

お芝居って“Play”って書くように、遊び心って大切。“この役どういう風に演じようかな?”ってなった時に、こういう風にアプローチしようって考えることってある意味遊びだと思うんです。それって遊び心というか、子どもの心を持っていないとできないなって。いつまでもそういう心は忘れないでいたいなって思います。

――そんな中、迎える『ミネオラ・ツインズ』ですが、大原さんにとっても大切な作品になりそうですね。

大原:最初から最後までホルモンが興奮している状態で演じていますから!(笑) 全部が見どころだと思うんですよね。どういうお芝居でもそうですけど、1秒1秒に流れている空気だったり間だったり、全部が意味のあるものになっているので、全身全霊で感じてほしいなって思います!(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 『ミネオラ・ツインズ 〜六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ〜』は、2022年1月7日〜31日東京・スパイラルホールにて上演。

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