真田広之が語るアクションの極意「映画は自分の技術をひけらかす場じゃない」

真田広之が語るアクションの極意「映画は自分の技術をひけらかす場じゃない」

真田広之 クランクイン! 写真:高野広美

映画『ラスト サムライ』を皮切りに、『ウルヴァリン:SAMURAI』『47RONIN』『モータルコンバット』など数多くのハリウッド大作で名演を残してきた俳優の真田広之が、最新作『ブレット・トレイン』を引っ提げ凱旋帰国。「映画は自分の技術をひけらかす場ではない」と自身を律する真田が、アクションの極意を語った。

 本作は、ブラッド・ピットを主演に迎え、伊坂幸太郎の大ベストセラー小説『マリアビートル』を『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ監督が大胆なアレンジで実写映画化したミステリー・アクション。世界一運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド)は、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗み出すというミッションに挑むが、次々と乗ってくる見知らぬ殺し屋たちの野望に巻き込まれる。その中には、子どもを傷つけられ復讐に燃えるキムラ(アンドリュー・小路)の姿も。彼を止めるために彼の父親・エルダー(真田)も乗車するが、そこには予想もしなかった運命の再会が待っていた…。

■アクションで一番避けなければいけないこと

 かねてから海外作品で描かれる日本の文化に対して、アドバイザー的立場をとることが多かった真田。本作では、あえてのやりたい放題、驚きの日本が登場するが、これに対して真田は、「新幹線のセットを見た時から、ポップでスタイリッシュな世界観を貫こうという姿勢が表れていたので、変にリアリティを追求するより面白いと思いました」と笑顔を見せる。「日本の原作からインターナショナルな作品にうまくアダプト(適合)されたと思うんですよね。そこで、唯一、日本人のパートを任されたので、妙にウエスタナイズ(西洋化)されず、ちゃんと日本人らしく見えて、なおかつ国際的なキャストの中でも浮かないようにバランスをとるのが1番の課題でした」と述懐する。

 真田演じるエルダーは、昔、ヤクザの若頭だった剣の達人。子どもを傷つけられ復讐に燃える息子を止めにいくという役柄だが、思わぬ人物と再会し、積年の思いが爆発する。「原作がかなりアレンジされ、オリジナルの復讐劇が加わっているのに驚かされた」という真田は、「基本はアクションコメディーですが、家族や仲間とのシリアスな物語が深く関わってくるので、監督の指導を受けながらも、そこは本能に従いながら大事に演じていこうと思いました」と撮影当時を振り返った。

 舞台となる超高速列車は、至近距離だからこそ生まれる苛烈なバトル、死角や武器に使える小物も多い舞台設定、さらには超高速列車ならではの疾走感など、アクション映画と極めて相性がよく、古くは『大列車作戦』、近年でも『ミッション・インポッシブル』『新感染 ファイナル・エクスプレス』『トレイン・ミッション』など傑作が多い。だが、動きに制約があることから、演者の難易度も高い。

 『モータルコンバット』に続き、今回も激しいアクションに挑戦した真田は、体の動きそのものよりも“感情の動き”に意識を向ける。「アクションというものは、ドラマの沸騰点で生まれるもの。そのあと、どういう感情が生まれ、どう盛り上がり、どう着地するかが非常に大事だと思うんです。時として、アクションを理解してない監督が演出をすると、感情と動きが分離してしまうということがあるんですが、これは一番避けなければいけないこと」と口調を強める。

 「その点、スタントマン出身のデヴィッド監督は、アクションを心から理解してるので、現場で出てきたアイデアを脚本に採り入れてドラマに着地させるのがとてもうまい。狭い空間をいかに武器として活用するか、相手が座席の後ろに隠れたら『じゃあ、座席ごと斬っちゃえ!』とかね。その場で出てきたアイデアを凝縮し、キャラクターの感情やバックグラウンドをつねに意識しながら、全てが積み重なって、掛け算になって、最後は観客をエキサイトさせるシーンを生み出している…こういう全幅の信頼をおける監督のもとで仕事ができることは、本当に幸せなこと」と、デヴィッド監督を絶賛した。

■映画は自分の技術をひけらかす場じゃない

 日本が誇る世界のアクションスターも今年10月に62歳を迎える。映像の上では全く衰えを感じさせないが、映画に備えて、日頃どんなトレーニングを行っているのか。普段のルーティンを聞いてみると、少し照れくさそうに口を開く。「昔のようにハードなトレーニングをやってると体が持たないので、ここ最近は最低限のことしかしていないです。1日1万歩前後のウォーキングと軽いランニング、あとはストレッチや筋トレを少しやる程度。体を鍛えるというよりも、『健康を保つ』くらいの感覚ですね」と意外な答え。

 ただ、映画やドラマが決まると、役に合わせてモードに入るという真田。「演じる役によってファイティングスタイルも変わってくるので、その都度求められる体力や動きを訓練し、構築していきます。撮影が終わると、1度まっさらに戻して、また役が決まったら、その役に合わせて構築する…。映画は個人の技術や動きをひけらかす場所ではありませんからね。あくまでも役に求められていることを具現化することが大切。だから、作っては壊し、作っては壊し、その繰り返しなんです」とプロフェッショナルならではの姿勢を明かす。

 今回のエルダー役は、特別なトレーニングはしなかったそうだが、「小道具さんが用意してくれた武器をいかに有効に使うか」に苦心したのだとか。「例えば、エルダーがいつも持っているダックヘッドの仕込み杖。ヘッドをフックにしたり、サヤも武器として使ったり、いかにコリオグラフィーとして反映することができるか。ただ、それはあくまでも、エルダーという役と、その時の感情に沿った動きであり、時には少ない動きの中にも純粋に演技の延長としてのファイティングがあることが重要であり、そこに説得力が生まれると思うんです」。

 異国の地で数えきれないほどの辛苦に耐え、己を磨き、そしてたどり着いた真田の境地は、実に真摯で深遠だ。

■渡米から約20年 チャンスは広がっている

 ハリウッドにわたって約20年。「当初は東西の壁を感じた」という真田。それでも、少しずつ道は拓けているという。「チャンスはどんどん広がっています。大切なのは、チャンスが来た時に、それを逃さないように、言葉であるとか、その国のシステムであるとか、事前に学べることは、しっかり学んでおくこと。そうすれば、デヴィッドのような監督の目に止まるかもしれない」。本作は運の悪い男の物語だが、1つ1つの出会い、1つ1つの作品の積み重ねを大切にしていれば、幸運はめぐってくる…真田を見ていると、その出会いへの感謝の気持ちが彼を力強く形成しているように思えてくる。(取材・文:坂田正樹 写真:高野広美)

 映画『ブレット・トレイン』は公開中。

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