吉高由里子、女優は「不思議で変な仕事」 一人歩きするイメージに悩んだ時期も

吉高由里子、女優は「不思議で変な仕事」 一人歩きするイメージに悩んだ時期も

吉高由里子 クランクイン! 写真:上野留加

しなやかな存在感と確かな演技力で、ドラマや映画に引っ張りだこな女優・吉高由里子。作・演出を岩松了が手がける『クランク・イン!』では、“女優役”として6年ぶりの舞台にチャレンジする。スクリーンデビューから17年のキャリアを積み重ねてきた吉高だが、「女優って不思議な職業。マネージャーになりたいと思っていた時期もあるんですよ」と告白。「女優を少し休みたいと思った」過去や、大河ドラマへの出演も控える彼女のプレッシャー対処法など、おおらかな笑顔いっぱいに語ってくれた。

■現在、34歳 誰かに“教えてもらうこと”が減ってくる年齢

 本作は、ある新人女優の死をめぐって、映画製作の現場で繰り広げられる、映画監督と女優たちの愛憎と葛藤を悲喜劇として描く物語。女たちに追い詰められる映画監督に扮するのは、眞島秀和。吉高は、強烈な存在感を放つ女優ジュン役を演じる。俳優としても活躍している岩松は、2008年のドラマ『あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~』(カンテレ・フジテレビ系)で吉高と共演しており、「いつか自分の作品に出てほしいと思っていた」と彼女とのタッグは念願だったそう。

 吉高は「役者ではなく、演出家としての岩松さんにお会いするのは初めて」と切り出し、「岩松さんの演出は、周囲の俳優さんからも『しぶとい』『粘る』などいろいろと感想を聞くんです。悩んだり、落ち込んだりすることも多いんだろうなと思っています」とにっこり。

 「ただこの年齢になってくると、ドラマや映画の現場では、誰かに教えてもらったり、演技指導をしてもらうこともだんだん減ってきてしまっているというのもあって。そういった意味では、細かく、しつこく指導していただけることは新鮮でうれしいことだなと思います。メンタル的にはしんどいかもしれませんが…」と打ち明けつつ、「前回、6年前に舞台をやった時も大変だなと感じたことはありましたが、同時に楽しいなと思えた。今回も苦しさよりも、喜びを多く見つけたいです。とにかく、岩松さんの演出に食らいついていくしかないです!」と気合いを入れる。

■「女優って不思議な、変な仕事」

 高校1年生で芸能界入りした吉高。「学生だった頃は、仕事という感覚はなかったですね。アルバイト感覚というか、責任感もなかった。呼ばれたところに行って、言われたことをやって、怒られて帰ってくることもあって」と笑いながら、「サポートする側である『マネージャーになりたい』と言っていた時期もあったんですが、一緒にいろいろな経験を乗り越えてくれるスタッフさんたちのおかげで、この仕事を続けられています。誰かが見てくれているというのは、本当に心強いですから」と女優としての歩みを進める上では、周囲の支えを実感する日々だという。

 今回の舞台で吉高は、プロデューサーの紹介でそれなりの役に抜てきされた女優、ジュンを演じる。自身の職業と同じ“女優”を演じることになるが、「女優って不思議な仕事。変な仕事だと思う」としみじみ。「自分が築いてきた関係性や、知り合い、友達ではない人も、いつの間にか自分のことを知っていたり、インターネットで調べたらいろいろな自分の情報が出てきたり。不思議ですよね」と率直な思いを吐露する。

 吉高は、一人歩きするイメージに悩んだ時期もあるという。「人の目に触れる仕事をし始めて、最初の頃は、世間に流れるいろいろな情報に対して、“自分はこうじゃない!”“こうじゃない自分もいる”と一つ一つ気になってしまって、否定したくなったり」とモヤモヤしていたが、「SNSも盛んになって、次から次へとネットに情報が出て、それが止まらない時代。自分が言われていることに対して気になったり、引っ掛かったりしてももう追いつかない。今では、“どうぞー! そちらの吉高さん、行ってらっしゃい!”と開き直っています」と割り切れるようになったのだとか。

 「モヤモヤしていたのは、きっといろいろな人によく思ってもらいたいという気持ちがあったから。でも本当の自分を知ってくれている人が身近にいるのだとしたら、それでいい。信頼してくれる人、ステキな友達と密度の濃い関係性や、居心地のいい関係性を作れたら、それでいいんだなと思うようになりました」と心晴れやか。信頼関係を築く上で大切にしていることは?と尋ねてみると、「頑張らないことかな?」と思いを巡らせ、「笑顔を作ったり、嘘をついても、相手にはきっと分かってしまう。“疲れたー!”とかも正直に言っちゃいます。大人じゃないんですよね」と裏表のない素顔も、なんとも魅力的だ。

■苦しくなってしまった時期、少し休もうと思った過去


 「女優は不思議な仕事」と持論を語った吉高だが、「少し休みたいと思ったこともある」と振り返る。

 「朝ドラ『花子とアン』をやろうとしていた頃、テレビに出ている自分の姿やお芝居を見たり、自分の声を聞いたりすることに疲れてしまった時期があって。もともと自信のあるタイプでもないので、朝ドラだって、“私がやっていいのか? もっといい人がいるんじゃないか?”と思うと、苦しくなってしまって。責任を持って、最後まで朝ドラを楽しみながら頑張って、そしたら少し休もうと思っていました」と告白。

 そこで事務所から「しばらく休んでいいよ」という言葉をもらい、吉高は約2年の休養期間に入る。その間には、心境にも変化が訪れたという。「26、7歳くらいの働き盛りに“休んでいいよ”と言ってくれる会社なんて、まずないですよね。いい会社だなと思ったし、それでも待ってくれている人がいるなんて、私は本当に幸せ者だなと思いました」と彼女を前進させているのは、周囲への感謝の気持ち。「それからは、以前より仕事のペースを少しゆるやかにして、一つ一つの作品に対してきちんと準備ができるようにして。より深く、思い入れを強くしながら、それぞれのお仕事に取り組めるようになったと思います」と目尻を下げる。

 2024年には、NHK大河ドラマ『光る君へ』で主演を務めることも決定している。決定の知らせを聞いた瞬間は、「喜びより、ヤバい!と緊張の方が先行してしまった」とも。

 とはいえ「このお仕事は、与えていただけることで挑戦ができるもの。それにプレッシャーを感じるということは、それくらい私はこの作品を大事に思っているということ。そう考えると、プレッシャーも乗り越えられるはず」とプレッシャーも力に変え、「どんな仕事も終わりが見えないうちは苦しいけれど、皆さんと頑張りながら、少しずつ形にしていく過程もとても楽しいです。最終的には“どうにかなる!”という気持ちで一生懸命やること。それしかない」と真っすぐな瞳を見せる。

 「これ以上ないというパフォーマンスをしてしまったら、次にどこを目指していいのかきっと分からなくなってしまう。“完璧にできた!”と思えないからこそ、また次に進める。それもこのお仕事の特徴かもしれません」と吉高由里子の可能性はまだまだ無限大。おおらかな笑顔で周囲を包み込み、その場を和やかな雰囲気でいっぱいにしてしまう彼女が、求められ続けるのも大いに納得だ。(取材・文:成田おり枝 写真:上野留加)

 M&Oplaysプロデュース『クランク・イン!』は、10月7~30日東京・本多劇場にて上演。11月2日~3日静岡・三島文化会館、11月11日~13日大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、11月19日~20日愛知・ウインクあいちにて上演。

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