森尾由美、デビュー40周年 「売れなかったから仲がいい」“不作の83年組”を支える絆

森尾由美、デビュー40周年 「売れなかったから仲がいい」“不作の83年組”を支える絆

森尾由美 クランクイン! 写真:高野広美

1983年5月5日にシングル曲「お・ね・が・い」で歌手デビューし、今年40周年を迎えた森尾由美。“レモンチックな17歳”のキャッチコピーを掲げてフレッシュな魅力を弾けさせたが、83年デビュー組は「不作の年」と言われるほど「みんな売れなかった!」と苦笑い。82年組が“花”ならば、「私たちは雑草」と楽しそうに語る。司会、タレント、女優業と活躍の場をぐんぐんと広げ、たどり着いたデビュー40周年を機にヘアスタイルをばっさりイメチェンした森尾が、アイドル時代の思い出や、「みんな売れなかったからこそ仲がいい」という83年組との絆、仕事に本気になった転機までを、笑顔いっぱいに明かした。

■不作の83年組…「売れてないなという自覚はありました」

 デビュー当時を振り返ってもらうと「これを言うと、同期のみんなには怒られるんですけど」と切り出した森尾は、「私は歌手デビューより前にモデルや女優のお仕事を始めていたんですが、私たちの若い頃は、グラビアだけ、女優だけ、タレントだけということはなく、みんなレコードデビューをするのが当然のようになっていて。同期のみんなのように『スター誕生』や歌手に憧れてこの世界に入ってきたわけではなかったので、歌手デビューは正直、やらされた感が強かったと言いますか…(笑)」とぶっちゃけ。

 “レモンチックな17歳”のキャッチコピーに合うように、黄色をイメージカラーに活発な雰囲気で歌手デビューしたものの、「衣装も、ショートパンツやスニーカーが多くて。本当はフリルとかが大好きなので、私も松田聖子さんたちのようなフリフリのドレスが着たかった!」と戸惑うことも多かったのだとか。

 アイドル全盛期の80年代の中でも、中森明菜や小泉今日子、松本伊代、早見優、堀ちえみ、石川秀美らがデビューした82年は、アイドルの当たり年としていつしか“花の82年組”と呼ばれるまでに。一方、森尾が属する83年デビュー組には、大沢逸美、桑田靖子、小林千絵、徳丸純子、木元ゆうこ、松本明子ら、個性的なメンバーがズラリと並ぶ。82年組の勢いがすごすぎたあまり、83年は「不作の年」とも言われているが、森尾は「82年組の先輩たちは、同じステージにいても倍くらいスポットを浴びているなと感じるほど、オーラが違いました。一方の私たちは全然売れなくて」と自認。

 「不作組だから、親衛隊が足りないんですよ。(桑田)靖子は同じ事務所の先輩に早見優ちゃんがいたので、優ちゃんから親衛隊を借りたりしていました。私はそういった先輩がいなかったので、うらやましかったなあ」と目を細めながら、「83年組の私たちは、誰もオリコンのベストテンに入らないし、『明星』や『平凡』の表紙も飾れないし、デビュー2年目の歌手を対象にした賞レースの『金の鳩賞』では、私たちの年だけ、該当者なし! そんなことは史上初だったみたいですね。売れてないなという自覚はありました」とこぼしつつ、「それでも3ヵ月に一回はシングルを出させていただいて、その都度レコード店やラジオ局をめぐったりもしていたので、忙しいことは忙しい。毎日のお仕事に向かうだけで必死でした」と忙しくしているうちに、「なかなか学校に通えず、高校を卒業できなくなってしまった」と打ち明ける。

■「20歳で辞めるつもりだった」転機を経てコツコツと積み上げることの大切さを実感


 「芸能活動は20歳で辞めて、保母さんになろうと思っていた」という森尾だが、高校を卒業できなくなり、母親から「芸能活動を一生懸命にやるならば、高校を卒業しなくてもいいよ」と言われたことが、意地っ張りのスイッチを押したという。「どうしても高校を出たくなってしまって、事務所の社長にお願いしてお仕事をセーブさせていただいて。定時制の高校に通い始めて、21歳になる年にやっと高校を卒業できました。社長に無理を言って高校に通わせてもらったので、今度は『社長に恩返ししたい』という気持ちでお仕事をしていました」と回想。

 そんな森尾が、自らの意志で仕事に本気で打ち込むようになったのは、バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』にレギュラー出演を果たした頃だと話す。

 「どういう方向でお仕事をしていったらいいのか、悩んでいた時期でした。バラエティ番組に懸けている皆さんの熱量や意気込みを感じて、私はなんて中途半端な、甘い気持ちでお仕事をしていたんだろうと気付かされました。たけし軍団の方々にも、『レギュラーの椅子に座れていることはすごいことなんだ』と声をかけていただいて、仕事に対しての責任感や重みをひしひしと感じて。この世界にいるならば、ちゃんとしなければと気を引き締めました」としみじみ。

 さらに結婚・出産を経験しながら、仕事も精力的に続け、『はやく起きた朝は…』や『大好き!五つ子』シリーズなど、人気の長寿番組に恵まれた。仕事に臨む上で大切にしてきたのは、みんなとものづくりをしているんだという、輪を大切にする気持ち。そして「私は気負いすぎると空回りしてしまうので、気負いすぎず。そして小さくてもいいので、その日できることをコツコツと積み重ねていくこと」だと語る。

■生涯PINK HOUSE宣言! 好きなものを着ることが一番テンションが上がる


 松居直美、磯野貴理子と共におしゃべりを繰り広げるトークバラエティ『はやく起きた朝は…』(フジテレビ系/毎週日曜6時30分)は、今年30年目の放送に突入した。森尾が「番組名やオンエアの時間帯の変更などを経て、30年目に突入しました」と振り返る同番組は、なにより3人のバランスが視聴者にとっても心地よいことが、長寿の秘訣だろう。「直美ちゃん、貴理子さん、私も、みんなが20代の頃にこの番組が始まって、そこから50代までを一緒に過ごしています。その年代は、人生において一番変化の起きる時期ですよね。そんな中、私たち3人はゴムのようになって、ギュッとくっついてみたり、3人が程よい距離感に離れたり、いろいろな三角形を作ってきたように感じています。今、そのバランスがものすごくよいものになっている」と強力なゴムで結ばれている3人だと表現する。

 50代に突入した今、コツコツと積み重ねてきたことが、あらゆる形で実を結んでいる様子だ。『はやく起きた朝は…』では、森尾が「PINK HOUSE」コーデで登場することも定番となっているが、「私はフリルもレースも大好きなので、それらをふんだんに使っている『PINK HOUSE』は、10代の頃からずっと憧れていたブランドです。『おそく起きた朝は…』(1994年当時)がスタートした頃は、自分で買って『PINK HOUSE』のお洋服を着ていたんです。ずっと着続けていたら、衣装提供してくれることになって!」と大喜び。

 「40歳を過ぎても衣装を貸してくださるかな…?と思っていたんですが、『PINK HOUSE』さんが『これからも、その年代に合わせた着方をしてくれたらうれしいです』と言ってくださって。若い頃とはまた違ったアレンジもできるのが、『PINK HOUSE』のいいところ。いつまでも着ていけたらなと思っています」と目尻を下げながら、「ファッションについて、男性からはどう見られるだろう?と気にするような時期もありましたが、今の年齢になると『自分が着たいものを着る』ということがモットーになりました。『これを着ると、自分のテンションが上がる!』という気持ちが大切。今は好きなものを着ることが一番テンションの上がることなんです」と持論を繰り広げていた。

 森尾の「PINK HOUSE」愛は、デビュー40周年を記念したコラボグッズの発売にまで縁がつながった。「エコバッグやステンレスボトルなど普段の生活で使えるものを考えました。『PINK HOUSE』ファンの方にはたまらないデザインになっています!」と出来上がりに自信をみせる。

 またPINK HOUSEコラボとは別に、デビュー当時の自身の写真を使ったTシャツやアクリルスタンドなど、さまざまなアニバーサリーグッズを展開。デビュー40周年を迎えた喜びを、長年応援し続けてくれたファンと共に分かち合う。

■「やってよかった!」手作りで実現させた『お神セブン』コンサート


 83年組の仲間である、大沢、桑田、小林、徳丸、木元、松本とは、ある時期をきっかけに「年に何度かランチ会をしたり」と集まって、楽しい時間を共有している。森尾は「売れなかったから仲がいい」と笑い、「もしそれぞれが売れていたら、お互いに抱く気持ちとして『あの子は売れていいな』とライバル心の方が強かったかもしれません。10代だったら、そういう気持ちが芽生えても不思議ではないですよね。でも私たちはみんなが平均的に売れなかったので(笑)。そういった時期を経ているので、たとえば靖子が活動を再開した時にもみんなで心から『おめでとう』とお祝いができたし、私のドラマ出演が決まったときにもみんなが『よかったね!』と喜んでくれました」とうれしそう。

 2018年11月には、このメンバーで結成したユニット『お神セブン』としてコンサートも実現させた。森尾は「前回のコンサートでは、80年代当時にできなかったことを全部やろうと、思い切り楽しんで。なにせ売れなかった私たちなので、スポンサーもつかず、いろいろと自分たち発信で準備を進めていきました。ものすごく大変でしたが、当日は涙ぐんでいるファンの方もいらして、『やってよかった!』と思いました。そういうことができたと思うと、当時売れなくてよかったなと思って(笑)。40周年の今年も、『なにかできたらいいね』と話し合っています」と期待と共に語る。

 どんな瞬間も輝くような笑顔と温かな人柄がにじみ出し、充実の今を過ごしていることが伝わるが、「これからも、いろいろなことに興味を失わずに日々を過ごしたいと思っています。若い世代の方と会話をするといろいろなことを教えてもらえるし、そういった時間も楽しいですよね。0歳児の孫の存在からも、たくさん元気をもらっています」と声を弾ませていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 森尾由美デビュー40周年記念オリジナルグッズは、スターダストプロモーション公式通販サイト「MAILIVIS」にて受注販売中。

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