戸谷菊之介、『チェンソーマン』大抜擢から1年 「仕事に一切ストレスがない」充実の日々

戸谷菊之介、『チェンソーマン』大抜擢から1年 「仕事に一切ストレスがない」充実の日々

戸谷菊之介 クランクイン! 写真:高野広美

人気シリーズの最新作『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』が、ついに日本上陸。日本語吹替え版では、声優の戸谷菊之介が “タートルズ”のメンバーの一人であるミケランジェロ(愛称:マイキー)のノリとキュートさを見事に表現している。『チェンソーマン』(2022年、テレビ東京系)の主人公デンジ役でテレビアニメ初主演を果たすなど目覚ましい躍進を続けている彼が、「僕の性質とほとんど同じ!」というマイキーに寄せる愛情とともに、自身にとっての師匠や、デンジが教えてくれたことなど、これまでの道のりを語った。

◆マイキーとの運命的な出会い「僕もお笑いが大好き」

 人間から隠れて暮らしてきた、愛すべきカメ4人組の“タートルズ”たちが、“普通のティーンエイジャー”として彼らが住む大都市ニューヨークのみんなに愛され、受け入れられたいという願いを叶えるため、謎の犯罪組織との戦いに繰り出す姿を描く本作。手書き質感のアニメーションと、タートルズたちのコミカルかつ熱い青春ストーリー、クールなアクションなど、あらゆる興奮を詰め込んだ1作として完成している。

 戸谷が演じたマイキーは、笑いとジョークが大好きで、いつもみんなを楽しませたいと思っている明るい性格のカメ。戸谷は「僕にとって洋画に携わる機会は、今回が初めてです。小さな頃から慣れ親しんできた『ミュータント・タートルズ』で、しかも頂いた役が楽しいバイブスを持ったマイキー! ものすごくうれしかったです」と大きな笑顔を見せ、マイキーには並々ならぬ親近感を寄せていると明かす。
 
 「マイキーとはかなり近しいものを感じています。末っ子的な存在のマイキーですが、僕も三兄弟の末っ子で。また本作ではマイキーがお笑いに興味を持つシーンがあるんですが、僕もお笑いが大好きで、高校生の頃にはコンビを組んで漫才をやっていたんです。ミルキーウェイ、天の川というコンビ名で、僕はボケ担当でした」と笑いながら、「マイキーとは出会うべくして、出会ったよう。いろいろなシーンで『僕と一緒じゃん!』と思いながら、楽しく演じました。とにかく楽しまないとマイキーじゃない。僕は結構、動きながらアフレコをするタイプなんですが、今回はずっと拳を上げながら、ノリを大切に演じていました」と運命的な出会いになったという。

◆見たことのないアニメーション表現に驚き「最高の洋画デビューができた」


 ティーンエイジャーらしい、タートルズたちのわちゃわちゃとした掛け合いも大きな見どころとなっている本作。

 戸谷は「台本を読んで『ここも4人同時に声を発している』という箇所がたくさんあって、驚きました。現場に行ってみたら、収録は僕一人でやるということで、さらに驚いて」と苦笑いを浮かべつつ、「すでにレオナルド、ラファエロ、ドナテロといったタートルズの他のメンバーは収録が終わっていたので、僕はその音声を聴きながら会話に参加することができました。その3人のお芝居がめちゃくちゃ楽しげで! こういうテンションなんだということがよく分かったし、僕も思い切りぶつかっていくことができました」と感謝しきり。

 ワイルドかつ、温もりのある手書き質感で描かれたアニメーション表現には、「見たことのないアニメーション表現でした。影の表現や色使いも独特で、初めて見るものばかり。アニメーターの方はどれほどの苦労があったのか」と制作の裏側に想いを馳せた戸谷。「タートルズのアクションシーンは、臨場感あふれるカメラワークやクールな動きなど、アニメでしかできない表現が詰まっていました。またタートルズの葛藤が見える場面であったとしても、温かみのある絵柄で描かれることによって、彼らの明るさや希望までが感じられる気がしました」とたくさんの魅力を感じているそう。「とりわけ、笑わせてくる演出が大好きです。こんなにステキな作品に関われて、最高の洋画デビューになりました。これからも頑張っていきたいという力ももらいました」と熱っぽく語る。

◆“師匠”緒方恵美、『チェンソーマン』デンジが教えてくれたこと


 人間から隠れて生きてきたタートルズたちは、「みんなに受け入れてほしい」「新しい一歩を踏み出したい」という悩みを抱えている。「バカリズムさんに憧れて、お笑い芸人になりたいと夢見るようになりました」という戸谷も、10代の頃は「大人になったらたくさんオーディションを受けて、もっと外の世界を知ることができる。今は経験を積む時期だ。早く大人になりたい」と新たな世界に飛び出したいともがいていたという。

 そんな戸谷が声優業への道へと足を踏み入れたのは、「芸人のオーディションを受けるのと並行して、役者さんや声優さんのオーディションも受けてみたんです。そうする中でお芝居のワークショップに行く機会があって。やってみたら『お芝居でも人を笑わせることができる。お芝居って面白いな』とどんどん魅了されていきました」と意欲をふくらませ、ソニー・ミュージックアーティスツが主催するオーディション「第6回アニストテレス」に参加。特別賞を受賞し、声優業を本格的にスタートさせた。

 2022年には藤本タツキによる漫画をアニメ化した『チェンソーマン』で主人公のデンジ役に大抜擢され、一気に知名度を上げた。「僕自身、抜擢していただいたことにものすごくビックリしていて(笑)。『チェンソーマン』はお芝居の演出も絵柄も、とてもリアル。リアリティを大切に演じる力を培い、その中でどうやったら言葉に意味を持たせることができるのかということもたくさん考えることができました」と回想。「デンジが壁にぶつかるシーンがあったら、実際に家で壁に体をぶつけてみて、『背中をぶつけると胸も痛くなるんだ』と体感してみたり…。とにかくガムシャラでしたね。現場に行くまではいろいろなことを考え抜くけれど、いざアフレコとなったら考えずに演じることが大事。その場にデンジとして立っていれば、考えずに演じられるはずだという気持ちで臨んでいました」と体当たりの日々を振り返る。

 タートルズにとって父親的存在であり、師匠とも言えるのがネズミのスプリンターだが、戸谷にとっての師匠は? すると「緒方恵美さんです」とキッパリと回答。

 「緒方さんの主催する私塾『Team BareboAt』で3年間、学んできました。そこでは緒方さんのお芝居を間近で見させていただき、一緒に掛け合いをさせていただくこともあって。本当に貴重な時間を過ごしました。緒方さんのお芝居への熱量って、ものすごいんですよ! 今でも『一体、僕はいくつになったら追いつけるんだ』と思いながら、学んだことを現場で実践できるよう日々頑張っています」と尊敬の念を口にし、「緒方さんは、『役者は日々の過ごし方が大事だ』とおっしゃっていて。『こういう時に自分はどう感じたのか』と心の倉庫に入れて、演じる時にそのリアルな感情を引っ張り出すんだと。ありがたい言葉をたくさん頂きました」と偉大な師匠が、彼の歩みをしっかりと支えている様子。「『チェンソーマン』の放送が終わった時に、久しぶりに緒方さんと飲みに行ったんです。『キクの頑張りはちゃんと見ているよ』と言っていただいて、ものすごくうれしかったです」と目尻をさげる。

 その場をパッと明るくしてしまうような朗らかな人柄も魅力的な戸谷だが、「芸人を目指したことを考えても、僕は『楽しんでほしい』という気持ちがとても大きくて。いろいろな反響をもらえることがうれしいです」と充実感もたっぷり。「今、演じるということがものすごく楽しい。だから僕、仕事に一切のストレスがないんです。最高です!」と声を弾ませていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
 
 映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、9月22日公開。

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?