黒島結菜、自分の“甘さ”に気づいた周防正行監督からの言葉

黒島結菜、自分の“甘さ”に気づいた周防正行監督からの言葉

黒島結菜 クランクイン!

2013年公開の映画『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』でスクリーンデビューを果たして以来、数々の映画や、連続テレビ小説、大河ドラマなど着実に出演作を重ね、女優としてのキャリアを積んできた黒島結菜。そんな彼女がヒロインを務めた映画『カツベン!』において、名匠・周防正行監督からかけられた一言で、芝居に取り組む姿勢が大きく変わったという??。

◇ダメ元で挑んだオーディション

 100人以上のオーディションの中、ヒロインの座を勝ち取った黒島。彼女が演じた役は、成田凌扮する活動弁士を目指す主人公・染谷俊太郎の初恋の相手であり、女優を目指す栗原梅子。大正時代を舞台に、夢を追いながらも、厳しい現実に直面する複雑な思いを抱える女性を好演した。

 300館規模の公開作品で、しかも監督は、日本アカデミー賞で史上最多の14冠を達成した『Shall we ダンス?』や『シコふんじゃった。』など傑作を世に送り出してきた周防正行。黒島は「やりたいとは思っていたのですが、オーディションには、これまで主演を務めてきた人もたくさん来ているだろうし、私じゃ無理だろうな」とダメ元で挑んだという。しかし、だからこそ「いつもなら緊張するのですが、割とリラックスして臨めたんです。どうせ受からないだろうからと思ったので…」とあっけらかんと当時を振り返る。

◇女優に「自信がないんだと思います」

 気負わず自分を出せたという黒島。結果的に、周防監督は黒島に「女優という仕事に対して迷いとか居心地の悪さ」を感じとり、それが梅子という役とシンクロすると確信したことが選考理由になったというのだ。

 黒島は「それって間違っていないんですよね」と苦笑いを浮かべると「お芝居は好きですし楽しいです。もちろん一生懸命やるし、妥協もしないと決めています。でも女優が私のすべてかというと、そこまでの覚悟では臨んでいなかったと思うんです」と胸の内を明かす。はたから見ていると、途切れることなく作品が続き、しかも主役やヒロインを務めることも多く、充実した女優生活を送っているように感じられるが「自信がないんだと思います」とつぶやく。

 真意を問うと「毎回新しい作品に入るたびに不安はありますし『私でいいのでしょうか』という気持ちになるんです。謙遜しているとかではなく、タイプ的に自分からいろいろとアピールするのが苦手というのもあるのですが…」と理由を説明する。確かに聞けば聞くほど、梅子というキャラクターへの親和性が高いように感じられる。

◇自分の甘さに気づけた周防監督からの言葉

 そんな黒島だが、現場で周防監督からかけられた一言で気持ちが大きく変わったという。「私がカツベンをするシーンがあって、事前にすごく練習をしました。でも不安だったので、周防監督に『私大丈夫ですか?』と聞いたら『大丈夫にするから』と言われたんです」。

 黒島は、周防監督に「大丈夫だよ」という優しい言葉や「こうした方がいいんじゃない?」というアドバイスをしてもらいたかったのだが、返ってきたのは「大丈夫にするから」。そのとき黒島は「ハッとしました。人任せにしている自分の甘さに気づいたし、もっと自分で考えて作品の役に立たないといけないんだ」と危機感を抱いた。

 これまで現場では、なるべく監督の指示に的確に応じることが正解だと思っていた黒島。しかしそれだけでは「面白くない」と感じ、自分から役柄についての質問や提案をするなど、能動的に作品へ参加するようになった。すると見え方も変わってきた。偉大な先輩たちもたくさん出演している本作。竹中直人や渡辺えりといった俳優たちの芝居にも魅了されたという。

 大きなターニングポイントになった作品が2019年末に公開となる。今年は大学を辞め、女優業一本になった年でもあるが「いま仕事とプライベートのバランスがとても良く、いいペースで仕事ができています」と笑顔を見せる。プライベートで自身の知的好奇心を満たし、それが仕事に跳ね返ってくる…。この循環を大事にしていきたいという黒島。同世代には活躍する女優が多いが「私は私。いまのペースを大切にしていきたいです」と強い視線で語ってくれた。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 映画『カツベン!』は12月13日より全国公開。

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