浜辺美波、『君の膵臓をたべたい』から見る女優としての底知れないポテンシャル

浜辺美波、『君の膵臓をたべたい』から見る女優としての底知れないポテンシャル

浜辺美波、『君の膵臓をたべたい』から見る女優としての底知れないポテンシャル クランクイン!

 現在公開中の映画『君の膵臓をたべたい』でヒロインの桜良を演じている浜辺美波の瑞々しい演技が、幅広い層の人々から「素晴らしい」と賞賛されている。16歳という若さにして、あどけない笑顔や、包み込むような大人びた母性、そして感情移入させる切ない佇まいなど、さまざまな表情で観客を虜にする浜辺の魅力に迫る。

 浜辺演じる桜良は、男子にも女子にも好かれる明るいクラスの憧れの女の子。一方で、親友にも言っていない“余命いくばくもない”という大きな秘密を抱えている。

 この二つの相反する設定。どちらかに比重がかかると途端に“お涙ちょうだい”的な作風になってしまうことが多い。例えば、明るく元気でみんなに好かれるキャラクターに比重がかかれば、ラストに向かいより深い喪失感を与えることになる。それでも物語は成立するが、やはり“泣ける”ことが強調される後味になってしまう。

 もちろん、原作、そして脚本の吉田智子のキャラクター設定の妙もあるのだが、そんな状況のなか、浜辺はどちらにも偏ることのない絶妙なバランスで桜良を演じている。そこには、桜良の秘密を唯一知ってしまう“僕”を演じた北村匠海の受けの演技も大きく起因しているのだが、浜辺の演技は、悲劇のヒロインになりがちな設定を、希望が持てる前向きなキャラクターに変貌させている。

 浜辺自身、「桜良は私とは正反対」と語っていたが、そんな言葉が信じられないぐらい、劇中でみせる浜辺の演技は“攻め”の印象を受ける。“僕”を翻弄しているのだ。とは言っても、まったく大げさで派手な演技をみせているわけではない。教室で“僕”をからかうような発言をする笑顔、スイーツ店で“僕”を見つめる少し冷めた表情、図書館で目線を合わせず会話をする空気感、そしてお泊り旅行でみせる小悪魔のような佇まい……。どれも細やかな表現で相手を翻弄する。

 本作をみたとき、浜辺に対してしっかりと考えられた演技派という印象を持ったが、メガホンをとった月川翔監督は、別の印象を語っている。テストのときに打ち合わせをした演技と本番で行う演技が違うというのだ。月川監督は「感覚の人なのかもしれません」と理由を説明していたが、技術的に演じているというより、本能に近い表現ということなのだろう。

 その言葉を聞いたとき、浜辺の底知れない女優としてのポテンシャルに驚かされた。自身と対極にあるキャラクターをその場で湧き出てきた感情に従い演じ、しっかり世界観を崩さないというのは恐れ入る。

 その部分について月川監督は「もともと桜良に“僕”が翻弄されるという関係性だったので、浜辺さんのこうしたライブ感に北村くんが翻弄されるという構図は、物語により説得力を与えた」と語っていた。すべてがプラスに向かっていったというのだ。

 こうした浜辺の女優としてのポテンシャルには唸らされるが、もう一つ彼女の魅力として挙げられるのが、声のすばらしさだ。共病文庫を読むシーンは、物語で重要な役割を果たすが、語りかけるような浜辺の声は、作品により一層の深みを与えている。動きある桜良と、命を失った思い出の桜良。この表現力の対比にもぜひ注目してもらいたい。(文・磯部正和)

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