現代中国の暗部をえぐる“中国第六世代”ディアオ・イーナン監督『鵞鳥湖の夜』に注目

現代中国の暗部をえぐる“中国第六世代”ディアオ・イーナン監督『鵞鳥湖の夜』に注目

映画『鵞鳥湖の夜』のディアオ・イーナン監督(C)2019 HE LI CHEN GUANG INTERNATIONAL CULTURE MEDIA CO.,LTD.,GREEN RAY FILMS(SHANGHAI)CO.,LTD.,

映画『薄氷の殺人』(2014)でベルリン国際映画祭金熊賞、銀熊賞(男優賞)をダブル受賞した中国の気鋭監督ディアオ・イーナンの5年ぶりとなる新作映画『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』。9月25日からの公開に先駆け、百花繚乱の“中国第六世代”のひとりとされるイーナン監督について紹介しよう。


 『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』は、中国の知られざるアンダーグランドの犯罪や社会の底辺で生きる人間たちの現実をあぶり出すノワールサスペンス。第72回カンヌ国際映画祭で、ポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』と並び、アジア発の衝撃をカンヌにもたらして絶賛を博した。アジア映画批評家協会賞では、『パラサイト 半地下の家族』や、ワン・シャオシュアイ監督作『在りし日の歌』らを抑えて、最優秀監督賞を受賞。本国チャートでも初登場2位を記録する異例の大ヒットを記録した。

◆ジャ・ジャンクー、ロウ・イエら世界的に評価される中国第六世代の映画作家たち

 チェン・カイコーやチャン・イーモウに代表される、文化大革命の爪痕と、荒涼とした貧しい中国の真実の姿を描き出した中国ニューウェーブの「第五世代」の監督たち。そんな彼らに続く「第六世代」の監督と呼ばれるのが、ジャ・ジャンクー、ロウ・イエ、ワン・ビン、ワン・シャオシュアイ、そして本作でメガホンを取ったディアオ・イーナンだ。それぞれが国際映画祭で高評価を受け、世界的な名声を獲得。この世代の監督たちに共通しているのは、現代中国が抱える痛みや矛盾を鋭く映し出す作風で、政府の制約を受けてもなお社会性とエンタメ性を両立させた鮮烈な作品を生み出している。

◆気鋭ディアオ・イーナン、『薄氷の殺人』でベルリン国際映画祭金熊賞&銀熊賞(男優賞)W受賞

 そんな第六世代に属するイーナン監督は、1969年生まれ。映画『スパイシー・ラブスープ』(1998)や『こころの湯』(1999)といった作品で脚本を手掛ける傍ら、ユー・リクウァイ監督作『明日天涯』(2003)では主演を務めた。監督としては、2003年に『制服』、2007年に『夜行列車』を手掛け各国の映画祭で好評を得た後、前作『薄氷の殺人』で第64回ベルリン国際映画祭金熊賞と銀熊賞(男優賞)をダブル受賞し国際的に認められた。1940〜50年代のハリウッドで量産されたフィルムノワールに精通し、シャープでモダンな独自の感性を持ち合わせたイーナン監督は、現在最も注目を集める中国人監督のひとりとなっている。

◆最新作『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』は“夜のシーン”に注目

 『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』では、孤独なアウトサイダーである主人公の男女、警察の捜索チーム、バイク窃盗団のギャングが交錯していくストーリー展開に、フラッシュバックを導入した幻惑的な語り口、湖や雨などの“水”をフィーチャーしたロケーション、ダイナミックで切れ味鋭いアクション・シークエンスが相まって、濃密なサスペンスとエモーションを創出している。

 イーナン監督は本作の大部分を占める“夜のシーン”について「人工的な明かりの中でシュールな舞台のように、時折、世界が現れるのです。人々が動物のように動き回り、夢と現実の狭間を旅する。(中略)一筋の光が、その沈黙の中に音を立てる。光と暗闇によって作り出された影が私は好きです」と語っている。

 最近は、既に新作の撮影を終えており、コロナ収束後に初撮影を終えた長編映画としては中国初と話題を呼んだイーナン監督。今後の動向にも注目したい。

 映画『鵞鳥湖の夜』は9月25日より全国公開。

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