こうなったら要注意!キャリア女子の末期症状

こうなったら要注意!キャリア女子の末期症状

神経ピリピリのキャリア女子、イネス(右) - (C) Komplizen Film

 第89回アカデミー賞外国語映画賞候補にノミネートされ、世界各国の映画祭で40以上の賞に輝く映画『ありがとう、トニ・エルドマン』が全国順次公開中だ。名優ジャック・ニコルソンがほれ込み、ハリウッドリメイクが決定したことでも話題の本作で、ストレスのあまり人間性を失いつつあるヒロインの日常からキャリア女子の要注意な症状を分析してみた。

 ヒロインのイネス(ザンドラ・ヒュラー)は、ルーマニアの首都ブカレストにあるコンサルタント会社で働いている。大手石油企業の契約延長がかかった重要なプロジェクトを控え、神経が張り詰めた彼女の前に、ドイツで暮らすジョーク&変装好きの父親ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)がひょっこり現れたことから、彼女がいかに“ヤバい”精神状態にあるかが浮き彫りになっていく。

 イネスの職場での服装は常に体にピッタリとフィットしたスーツスタイルで無駄、隙がなくまるで“戦闘服”のよう。財界人の集まるレセプションに勇んで出かけ、取引先の役員のご機嫌を取りに行くもふとしたことで機嫌を損ねてしまい、八つ当たりをするかのようにスパでのマッサージにクレームをつけ、丁寧に謝罪する店員に食べ物を次々に注文。疲労がたまっているのか寝坊して顧客との約束をすっぽかし、「なんで起こしてくれないの!」と泣きながら父にわめくといったふうで、四六時中仕事に支配されている感だ。

 そんな娘を心配したヴィンフリートがとった奇策は、何と別人に変装して「人生のコーチング」を生業とするトニ・エルドマンを名乗って娘を“指導”すること。しかし、そんな父親をすんなり受け入れるはずもなく、イネスの苛立ちはマックスとなり、父親の目の前で麻薬に手を出したりとエスカレート。恋人がいて良かったとホッとするのも束の間で、わずかなプライベートタイムの間で繰り広げられるのはアブノーマルな情事。果たして、彼を愛しているのかは疑問だ。

 しかし、いくら娘につれなくされても「逮捕しちゃうぞ〜」と手錠をかけたり、上司と言い争いをしている最中に背後でブーブークッションに座っていたり、迷惑極まりないエルドマンの“人生のコーチング”は、確実に効いていく。

 離婚しており、イネスが周囲に父親の存在を明かしていないことからもヴィンフリートに甲斐性がないことはうかがえるが、娘にプレゼントする“チーズおろし”が象徴するかのように、エルドマンは人生に不可欠なものではないかもしれないけど必要な何かを教えてくれる。ワーカホリックになり、勝つことだけしか頭にないキャリア女子には、「ここにいて幸せか?」と心配そうに娘の顔をのぞくヴィンフリートの顔が痛いほど焼き付くはずだ。(編集部・石井百合子)

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