永瀬正敏、松重豊も出演していた!幻の名監督ハル・ハートリーの現在

永瀬正敏、松重豊も出演していた!幻の名監督ハル・ハートリーの現在

空白の期間を明かしたハル・ハートリー監督 - (C)POSSIBLE FILMS, LLC

 1990年代に『シンプルメン』『愛・アマチュア』などの傑作群でNYインディーズシーンを牽引したハル・ハートリー監督。繊細な感性とユーモアを併せ持ち、清涼感漂う独自の世界観で人気を博した。しかし2000年以降は日本での劇場公開が途絶え、2014年のリバイバル特集で中編『はなしかわって』が上映された以外、噂は流れても新作がさっぱり見られない“幻の名監督”状態が続いていた。現在、過去作に日本語字幕を付けてリリースするためのクラウドファンディングを募集しているハートリー監督がメール取材に応じ、空白期間の活動を明かした。

 ハートリーと言えば1995年の『FLIRT/フラート』では東京ロケを敢行。ヒロイン・ミホに、後にハートリー作品の常連となる二階堂美穂を迎え、映画監督役で自らも出演。その助手を永瀬正敏が、ミホを治療する医師を若き日の松重豊が演じていた。ハートリーが作曲した映画音楽を曽我部恵一や嶺川貴子ら当時渋谷系と呼ばれていたミュージシャン勢がカバーしたCDがリリースされたこともあり、日本との関わりは深い。

 2000年以降、中編の『はなしかわって』(2011)以外の新作が日本で劇場公開されていないことについては「1997年の『ヘンリー・フール』以降、一旦映画作りから身を引いた」ことを原因に挙げる。「10年間映画を作り続けて、他のことにも挑戦したくなったんだ。舞台の演出をしたり、ヨーロッパのテレビ局の依頼で作品を作ったりしていた。映画に戻って来た時には、より世界の現状を反映した作品を作りたいと思うようになっていて、作風としても以前より商業向きではなくなったんじゃないかな」。

 1990年代初頭に新たな波を起こしていたインディーズシーンが、かつてのような自由な場ではなくなったと感じたハートリーは、自ら設立した映画会社ポッシブル・フィルムズを拠点に、いち早く自作のネット配信を試みたり、クラウドファンディングで活動資金を募るなどよりインディペンデントな活動を模索した。「クラウドファンディングのおかげで、自分の作品に本当に興味を持ってくれている人と直接やり取りができるようになった。『ヘンリー・フール』は三部作として完結させたんだけど、最終作の『ネッド・ライフル』はクラウドファンディングでファンから直接製作費を得たんだ」。

 現在は日本ではDVDなどがリリースされていない人気作『トラスト・ミー』(1990)をはじめ、過去作をポッシブル・フィルムズで再ソフト化する計画を進めている。その第一弾として「ヘンリー・フール三部作」のBOXセット(『ヘンリー・フール』のほか日本未公開の『フェイ・グリム』(2006)、『ネッド・ライフル』(2014)を収録)を11月にリリースする予定で、現在募集中のクラウドファンディングも日本語字幕を入れる資金のためだという。「日本はいつだって僕の映画を受け入れてくれていたから、未公開になっている作品もぜひ日本語字幕で楽しんで欲しい」と語るハートリー。他にもフランス、ドイツ、スペイン、英語の字幕を付けるべく、7月13日の22時37分(日本時間)まで世界中の映画ファンから出資を募っている。

 また、Amazonビデオで配信中の青春ドラマシリーズ「レッド・オークス」ではエピソード監督として参加。シーズン1では1エピソードのみ演出したが、シーズン2では全体の半分を手掛けた。「クリエイターを務めるグレゴリー・ジェイコブズ(『マジック・マイクXXL』の監督)は『シンプルメン』(1992)や『愛・アマチュア』(1994)の助監督だったんだ。その縁で彼から誘われて、他人の企画でも仕事ができるところを見せたくて引き受けたんだ。面白い脚本を与えられて、演出だけして、帰って寝る。いたって楽しい仕事だよ」。

 新作映画については「クリエイティブ面の自由が得られない限りはやりたくない」と否定的な一方で、Amazonスタジオとは新作ドラマシリーズの企画を進めている。「過激な活動家の尼僧が、修道院を隠れ蓑にビールを密売して活動資金を得ようとするコメディなんだ。今は長い小説みたいに物語を語れるシリーズ物に興味があるし、世の中もドラマシリーズを求めていると感じるからね」と今後の展望について明かした。(取材・文:村山章)

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