ディズニーを変えたジョン・ラセター 潤沢な時間・お金を使う“リサーチ”は彼がいるから

ディズニーを変えたジョン・ラセター 潤沢な時間・お金を使う“リサーチ”は彼がいるから

左からジョン・マスカー監督、オスナット・シューラープロデューサー、ロン・クレメンツ監督

 ピクサー・アニメーション・スタジオ、そしてウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのトップの一人として知られているジョン・ラセター。彼が2006年にチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任してから、ディズニーのアニメーションスタジオでは大きな変化が起こったという。ディズニーのヒット作『アラジン』『ヘラクレス』を生み、今年公開された『モアナと伝説の海』では初めて3DCG映画に挑戦したロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督らが語った。

■クリエイターメインのスタジオに変わった

 クレメンツ監督は、「1970年代からお互いに知っているよ。マスカーはラセターと大学で同級生だった」と言うと、マスカー監督にバトンタッチ。マスカー監督は、「彼が戻ってきた時、ディズニーはうまくいってなくて悪戦苦闘していたんだ」と振り返る。

 当時苦境に立っていたディズニーのトップの考えは創作よりもビジネス寄りで、クリエイターにとって最高の環境とは言いがたい状況だったよう。「それまでディズニーを牛耳っていたのは、ワイシャツにネクタイ、そして背広を着て『ああしろこうしろ』と言うビジネスマンだった。でもジョンが戻って来てくれてからは、われわれクリエイターが何をしたいか、何ができるのか? どんな風に物語を作るのがベストなのか? と何でも自由に意見交換できるようになったんだ」。

 そしてマスカー監督は、「僕らは創作に集中できるようになったんだ。クリエイターたちに自由なパワーを分け与えてくれた」とコメント。「ラセターが来てからディズニーは変わった?」という質問に対して、二人とも力強く「イエス!」と答える。またそれに『モアナと伝説の海』のプロデューサーであるオスナット・シューラーは、「ジョンとエドウィン・キャットマル(社長)のおかげね」と付け加えた。

 「スタジオのすべての作品が自分たちのものという考えなの。自分のものと他の人のものという境界線がない協力体制が出来上がっている。より良いアイデアがあれば、出来上がった部分さえもリライトしてしまうくらい常にベストを目指して協力し合っているわ」。

■リサーチの重要性はラセターから学んだ

 またラセターは、今ではディズニーの特色ともいえる“リサーチ”の習慣も変えた。『モアナと伝説の海』では約5年もの間オセアニア諸島に監督たちが向かって現地の文化を分析する期間が設けられたが、このようにリサーチに資金や時間をふんだんに使えるのにはラセターがいてこそなのだそう。クレメンツ監督は、「ジョン・ラセターはリサーチというものを非常に重要視していて、リサーチをやり過ぎるということはないと信じている」と話す。

 「(ラセターが来る前の)僕らの最初の映画『オリビアちゃんの大冒険』の時はロンドンに行きたかったけれどダメだったし、『リトル・マーメイド』の時のリサーチは、モントレー(北カリフォルニア)にある水族館に行って泳いでいる魚たちを見ただけだった(笑)。『アラジン』の時も中東に行ける状態ではなくて……。でもラセターがヘッドになってから作った『プリンセスと魔法のキス』では、膨大なリサーチが許されたんだ。僕らはジョンからリサーチの重要さを学んだと言えるよ」とクレメンツ監督は述懐。またシューラーは「ラセターはいつもわたしたちに、西洋文化の外にある世界、フェアリーテール(おとぎ話、神話や伝説などが出てくる神秘的な世界)に入ってみることを勧めるんです」と彼がクリエイターたちに積極的に“外”へ出るように促していることも明かしていた。(編集部・井本早紀)

『モアナと伝説の海』は先行デジタル配信中、7月5日にMovieNEXが発売(税抜き価格:4,000円)

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