諏訪敦彦監督『ライオンは今夜死ぬ』サンセバスチャン映画祭で世界初上映

諏訪敦彦監督『ライオンは今夜死ぬ』サンセバスチャン映画祭で世界初上映

ポーリーヌ・エチエンヌ、ジャン=ピエール・レオ、諏訪敦彦監督

 諏訪敦彦監督が映画『大人は判ってくれない』の名優ジャン=ピエール・レオとタッグを組んだ映画『ライオンは今夜死ぬ』(日本・フランス合作)が現地時間29日、スペインで開催中の第65回サンセバスチャン国際映画祭コンペティション部門で世界初上映された。上映後には同映画祭名物の観客による会場出口までの花道が作られ、諏訪監督、レオ、女優ポーリーヌ・エチエンヌらに盛大な拍手が贈られた。

 同作は、諏訪監督が同じくフランスで撮影した『ユキとニナ』(2009)以来、8年ぶりとなる長編映画。南仏を舞台に、映画の撮影で「死」を演じることに苦悩していた老俳優が、古い屋敷で出会った子どもたちと映画撮影ごっこに興じているうちに、とらわれていたことから心を解放していくというヒューマンドラマだ。

 上映後に行われた記者会見によると、製作のきっかけは5年前にさかのぼるという。フランスの映画祭で諏訪監督のレトロスペクティブ(回顧上映)があったので参加したところ、同じく特集上映が行われていたレオも現地入りしていた。関係者から諏訪作品の評判を聞いて上映にかけつけたレオは、即座に「一緒に映画を作りましょう」と提案。諏訪監督も、フランソワ・トリュフォー監督をはじめ名だたる監督たちと仕事をしてきたレオからのアプローチに二つ返事で応じたという。

 そんな敬愛する名優の共演相手に子どもを選んだのは、諏訪監督が近年、講師として参加している「こども映画教室」で、子どもたちと一緒に映画を作ることの楽しさを味わったことが大きかったという。クランクイン前に撮影地のグラース近郊に住む子どもたち約20人を集めてワークショップを行い、その中から出演者を選んだそうだ。

 諏訪監督は「子どもたちには、この映画で2本の映画を作ります。1本は『ライオンは今夜死ぬ 』で、もう1本は君たちが作る映画。そうやって子どもたちを招き入れました」と説明した。

 劇中では、偏屈な老俳優と子どもたちが、時に和やかに、時にスリリングな緊張感をはらみながら映画製作に挑む過程がみずみずしく描かれ、映画を愛する多くの観客たちの心に灯をともしたようだ。現地の記者からは「この映画は製作を志す者たちへのマスタークラス(公開講座)代わりになるのではないでしょうか?」という声もあった。

 諏訪監督は「マスタークラスになるかどうかは分かりませんが、映画を作ろうと思っている人たちが、映画って自由なんだと思ってほしい。映画を作るというのは奇跡的なことだと思うのです。僕とジャン=ピエール、スタッフ一人一人、いろんな出会いによって世界がひらかれ、映画の奇跡を呼び込む。若い人たちも、それぞれの方法で奇跡を作ってほしい」と呼びかけた。

 上映が好評だった興奮からか、劇中で披露する楽曲「ライオンが寝ている」を歌い出したり、昔の映画の思い出を語り出すなど会見を大いに盛り上げたレオも「ヌーヴェルヴァーグの継承者である諏訪監督と作品を撮ることができて本当に嬉しい。この奇跡に参加できて私は幸せです」と話し、何度も記者たちにピースサインを送りながら満足そうな笑顔を見せていた。

 コンペティション部門の結果は現地時間30日夜に発表される。(取材・文:中山治美)

第65回サンセバスチャン国際映画祭は9月30日まで開催
『ライオンは今夜死ぬ』は2018年1月から東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

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