病について映画化する意義とは?病と闘った実体験を語る

病について映画化する意義とは?病と闘った実体験を語る

実際のスザンナ・キャハランさん。元気になってよかったです!

 原因不明の病と闘った自身の手記が『彼女が目覚めるその日まで』として映画化された「脳に棲む魔物」著者のスザンナ・キャハランが、現代医療の落とし穴、そして映画化の持つ意義を語った。

 本作は、「抗NMDA受容体脳炎」という病と闘う女性の物語。ニューヨーク・ポスト紙でジャーナリストとして働き始めた女性が突然、幻覚や幻聴に悩まされ、意味不明の発言を繰り返すようになる。自分が壊れていくような感覚の中、ついにてんかん発作を起こして入院。医師からも見放される中、彼女を信じる家族や恋人もまた闘い続ける。ジャーナリストとしての手腕を奮い、体験談のみならず医療システムにも警鐘を鳴らした彼女の本「脳に棲む魔物」はベストセラーとなり、クロエ・グレース・モレッツ主演で映画化が実現した。

 実は同じ「抗NMDA受容体脳炎」を扱った映画『8年越しの花嫁』も同日に公開初日を迎える。スザンナは、「偶然とはいえ、同じ病を闘った日本人女性の映画が同じ日に公開されるなんて本当にうれしいし、とても意義のあることだと思う」と笑顔を浮かべた。映画化されたことへの思いを聞くと、「やはり多くの人がこの病気について知ってくれることが一番大切だと思います」と語り、一般の人だけではなく、医療関係者にも観てもらいたいと訴えた。

 映画の中では意味不明な言動や行動を繰り返す彼女の情緒不安定な症状に対して、精神病と診断する医師たちが登場する。全く違う病気にもかかわらず、スザンナは精神科に入院させられそうになる。

 「抗NMDA受容体脳炎」は、体の免疫システムが崩壊し自分自身を攻撃してしまう病気。劇中のスザンナのように風邪のような症状から始まり、その後、突然怒り出したり、乱暴な言葉を使って罵り出したり、急に狂ったように笑い出したりと、精神疾患に似た症状が現れる。多くの医師がここで診断をミスして、中には本当に精神科へと入院せられる患者も少なくないのが現状だ。

 この日のインタビューで、快活に話すスザンナを優しく見守っている男性がいた。劇中でヒロインを支え続ける彼氏の話が出たとき、スザンナは「彼が私の夫で、私をサポートしてくれた人よ」とうれしそうに紹介した。出版当時「あの彼氏とはどうなったの!?」と質問攻めを受けたと笑うスザンナだが、いま二人は結婚して幸せに暮らしているそう。なぜ最後まで諦めずに病名を探し続けられたのかという問いに、スザンナの夫は「いつも本当の彼女が瞳の奥にいたことが僕には分かっていたから。ただ信じていたんです」と話す。
 
 もしも気づかないままだった場合、最終的には呼吸不全に至り、命を落とす危険性もある。スザンナは彼女を最後まで信じて病院側に適切な治療を訴えつづけた恋人と家族の努力によって、適切な診断を下した医師が奇跡的に見つかった。「あのとき、もしも私の家族や恋人がそうではないと信じて闘い続けてくれなかったら、最終的に私の病を突き止めてくれた医者を探し出してくれなかったらどうなっていたか分かりません。きっと今日、ここでこんな風に話すこともできていなかったと思います」とスザンナは当時を振り返った。

 重い病と闘った実話の映画化は国外問わず数多く存在する。もちろん映画を観ることで、病気の存在を知ることは大切だ。だがそのあとに私たちには何ができるだろうか? スザンナに聞くと、「映画を観たら、ぜひ皆さんに、この病気のことをシェアしていってもらいたいと思います。問題についていろんな人と話し合いを続けることで、みんながオープンになっていってもらいたい。例えば、この病気にかかった方にも堂々と自分の闘病の経験をシェアしてほしい」と切実に訴えた。映画化されることで多く人が病気の真実を知るだけでなく、その後の小さな行動が、多くの人の命を助けることにつながるのだ。(取材・文:森田真帆)

映画『彼女が目覚めるその日まで』は角川シネマほかにて全国公開中

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