『イップ・マン外伝』でカンフーVSプロレス!香港アクションの巨匠、ユエン・ウーピンの新たな挑戦

『イップ・マン外伝』でカンフーVSプロレス!香港アクションの巨匠、ユエン・ウーピンの新たな挑戦

『イップ・マン外伝 マスターZ』より。マックス・チャンとデイヴ・バウティスタの格闘シーン - (C) 2018 Mandarin Motion Pictures Limited All Rights Reserved

 アジア圏のみならず、ハリウッドでも『マトリックス』のカンフーコレオグラファー、『キル・ビル』の武術指導として活躍してきたユエン・ウーピンが、自身の最新監督作『イップ・マン外伝 マスターZ』(公開中)で、これまでのキャリアでも経験していない大胆なアクション演出に挑んだことを語った。

 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などハリウッドでも活躍するアクションスター、ドニー・イェン主演の「イップ・マン」シリーズは3本の映画が作られたが、3作目の『イップ・マン 継承』(2016)でドニー演じるイップ・マンに敗れたのが、マックス・チャン演じる詠春拳(えいしゅんけん)の使い手、チョン・ティンチ。今回の『マスターZ』では、そのティンチが主人公となる。一度は詠春拳の道を断念した彼が、新たな試練に立たされ、再び戦いの場に導かれる物語だ。

 主人公のティンチの前に、強烈な個性の敵が現れ、あらゆるバリエーションのアクションの見せ場が連続するこの作品。そこにウーピン監督もこだわったようで、戦いの相手のキャスティングが重要だったと言い、その意図を語る。「タイのアクションスター、トニー・ジャー(『マッハ!』など)は剣を使って戦わせればおもしろい。ミシェル・ヨーはカンフー技にキレがあって美しいし、刀を使うのもうまい。しかも強い女性キャラクターとして独自性がある。そしてデイヴ・バウティスタだ。巨体だし、プロレスラーとしての経験を生かしたアクションを設計できると思ったのさ。彼らはすべて、わたしが希望したキャストだよ」

 デイヴ・バウティスタは元WWEのプロレスラーで、あのロック様ことドウェイン・ジョンソンと同じように俳優に転身。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)の野獣系キャラ、ドラックスが当たり役となり、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)でも活躍。『007 スペクター』(2015)や『ブレードランナー 2049』(2017)など話題作への出演が続き、スター俳優としての地位を確立した。

 身長2メートル近い元プロレスラーに、どんなアクション演出をしたのか。「デイヴと(ティンチ役の)マックスが戦うシーンは一応、段取りを考えて試したけど、どうもデイヴはやりにくそうだった。そこでわたしは彼に『あなたがプロレスでやっていたように、力任せの投げ技で戦えばいいよ』と提案してみたんだ。そのプロレス技に対し、マックスはカンフーの細かい技で対抗する。そこにわたしがカンフー・アクション映画で培った、美しく見せる演出で味つけする。プロレスとカンフーの異種格闘技戦は、わたしにも初体験だったので楽しんだよ」

 アクションの話になると、満面に笑みをたたえるウーピン監督。本来、今回の『マスターZ』のように、アクション満載の作品を好きなように監督するのが理想であり、他の監督の作品で、アクション監督や指導のみを手掛けるのは物足りないのでは……? すると、意外な答えが帰ってきた。「いやいや、映画監督は本当につらくてね。ロケ地や配役の決定を託され、撮影が始まれば、俳優たちのメイクアップまで細かくチェックしなくちゃいけない。つねに製作費がオーバーしないようにも気を使う。ようやく撮影が終わっても音響とか編集とか、すべて監督の責任じゃないか。アクション指導だけやる方がずっと好きだよ。監督はハードすぎる!」

 そうは言いながらも、これからも自身の監督業とアクション指導の両方をこなしていくというウーピン監督。彼との仕事をキアヌ・リーヴスが懐かしんでいたと話すと「『マトリックス』か! もう一度、あんなでっかい花火のような作品に参加したいね」と、74歳のアクションの巨匠は目を輝かせていた。(取材・文/斉藤博昭)

映画『イップ・マン外伝 マスターZ』は新宿武蔵野館ほかで公開中

関連記事(外部サイト)