観察映画の想田監督、観客を受け身にしない映画作りを語る

観察映画の想田監督、観客を受け身にしない映画作りを語る

想田監督の代名詞“観察映画”の第1弾となった映画『選挙』より。 - (C)LaboratoryX, Kazuhiro Soda. Photo courtesy of MUBI.

 世界中の名作映画を厳選して配信するビデオ・オン・デマンド、MUBIで、『Peace ピース』、『港町』、『選挙』シリーズなどが配信されることが決定した想田和弘監督が、3月8日、過去の作品や撮影手法について電話インタビューで語った。

 東京大学で宗教学を学んでいた想田監督は、突如、映画を志そうと思いつき、1993年、ニューヨークへと渡米した。「その頃は、小津安二郎監督の映画にものすごく影響を受けて、スクール・オブ・ビジュアル・アーツの映画学科で、劇映画を学びました。ですが、97年に卒業する際、働くことになったのが、「ニューヨーカーズ」というNHKの番組をアメリカで手掛けているドキュメンタリーの制作会社でした。そこは、毎週20分間のドキュメンタリーを手掛けていて、僕はディレクターの一人としてローテーションに入ったんです。ローテーションでは、月1本製作しなければいけないので、何もわからないままドキュメンタリー制作をしなければならない状況になりました。その中で、徐々にドキュメンタリーにハマっていきました」

 だが、次第にテレビ局の意向に沿ったドキュメンタリー制作に疑問を抱くように。そんな頃、アメリカのドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマンの作品に出会い、彼の作品の影響を受け、自分が理想とする映画制作を目指すことになったという。「僕は自分の映画を“観察映画”と呼んでいますが、観察というのは、良く見る、良く聞くという意味なんです。良く見て、良く聞いて、その結果を映画にするという考え方で、編集のときもテーマは先に決めません。つまり編集をしながら自分はこういうことがしたかったんだと、撮りながらわかっていく、僕はその順序はすごく大事にしています」

 通常のドキュメンタリーでは、取材対象をリサーチしたり、トリートメントを描いたりするが、想田監督の撮影手法では、偶然の面白さはある一方で、撮れ高が大丈夫なのかという懸念はないのだろうか。「2005年からやってきて今のところ9本撮っていますが、『これは、つまらないから途中でやめよう』ということは一度もないですね。撮影を始めたら、必ず映画にしていますし、それを発表して評価も頂いていることを繰り返しているので、僕の中にはそれほど不安みたいなものは、生じなくなっています」そうして確立された自身のスタイルである“観察映画”。根本には、観客の感覚を研ぎ澄ましていく映画を作ろうという考えがあるそうだ。

 「僕自身が良く見て、良く聞いて、人の結果を映画にするという意味だけではなく、観客の人たちもよく見て、よく聞いてもらいたいと思っています。映像を消費するのではなく、鑑賞してほしいんです。ですから、丁寧に説明しすぎないことが大事なんです。僕はそれを離乳食映像と呼んでいるのですが、最近は映像にテロップつけ、音楽つけ、ナレーションをつけ、全部説明的な上げ膳据え膳で、ほとんど離乳食みたいにドロドロに溶かして、観客の口にスプーンで持っていく、そんな映画がすごくあふれていると思うんです。このやり方をしていると、観客に観る力はなくなってしまい、どんどん受け身になってしまいます。そうではなくて、自分の目と耳、体感、そして頭を使って、映画を鑑賞するという、そういう関係を僕は観客の人たちと築きたいと思っています」鑑賞後の観客が共感したり、考えさせられたりすることで、観客と密な関係を築き上げているのかもしれない。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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