ノーベル平和賞受賞の医師を追ったドキュメンタリー、関係者らが性暴力被害の惨状を訴える

ノーベル平和賞受賞の医師を追ったドキュメンタリー、関係者らが性暴力被害の惨状を訴える

左から、マリー・クロディーン・マキャマバノーさん、キャスリーン・デ・カーチョヴさん、ノラ・アルマーニさん、スーザン・オマーリー会長、ティエリー・ミシェル監督

 昨年、ノーベル平和賞を受賞した人権活動家で医師のデニ・ムクウェゲさんを描いた話題作『ザ・マン・フー・メンズ・ウィメン(原題)/ The Man Who Mends Women』(邦題:『女を修理する男』)について、ティエリー・ミシェル監督、ルワンダの虐殺の生存者で医師のマリー・クロディーン・マキャマバノーさん、性暴力(レイプ)被害者を支える「ザ・チルドレン・オブ・パンジー」のディレクター、キャスリーン・デ・カーチョヴさん、国連婦人の地位委員会のスーザン・オマーリー会長などが、3月18日(現地時間)、ニューヨークの Social Relevant Film Festival での上映後Q&Aで語った。

 本作は、コンゴ民主共和国の婦人科医で、社会活動家でもあるデニさんの姿を追ったドキュメンタリー映画。デニさんは、コンゴ東部にあるキヴ州にパンジー病院を設立し、第2次コンゴ内戦以来続く現地での戦乱により性暴力被害にあった4万人以上もの女性を治療、精神的ケアに当たってきたことが評価され、昨年ノーベル平和賞を授与された。

 デニさんが2012年に武装した男たちに襲撃され、しばらくヨーロッパに亡命していた頃に出会ったというミシェル監督。「彼に関しては、それ以前から知っていて連絡を取り合っていたものの、コンゴの内戦については語り合ったことはなかったんだ。彼は国連で演説を行い、コンゴにおける大規模な性暴力被害の報告や周辺諸国を批判したものの、刑罰を受けない加害者たちと対立したことから、命を狙われる羽目になった。でもそんな命を狙われる人物だからこそ、映画として描く必要があると思ったんだよ」と今作を手がけたきっかけを明かした。

 女性たちの地位向上のために働く国連婦人の地位委員会のオマーリー会長は、内戦の続く国の女性や子供について「今から2週間、世界中からおよそ1万人もの女性たちがここニューヨークの国連に来て、社会的保護や社会保障などについて話し合う予定です。そこでは、(国連婦人の地位委員会を通して)400ものパネル・ディスカッションが行われ、われわれは彼女たちの苦悩を聴きながら、いかに組織的に計画を立てていくか話し合いをします。われわれは仕事上、女性に対する男性の暴力を頻繁に耳にしますが、今作は衝撃を受けるほどで、人々は現実のひどさに気づかされると思います」とその惨状を語った。

 現在も性暴力の被害者を支える「ザ・チルドレン・オブ・パンジー」のディレクターとして働くキャスリーンさんは、コンゴの現状について「コンゴ東部にあるキヴ州では、いまだに女性に対する男性の暴力事件が起きています。キヴ州の都市ブカヴでは、2015年には49人もの子供がレイプされた記録が残されています。さらに、昨年の12月から今年の3月までに5人の子供たちがレイプされ、殺害され、さらに内臓まで取り除かれたケースもありました。彼らの親が、そのように惨殺された子供たちを見ることを想像してみてください。現状も決して良くなっているとは言えないのです」と言葉をかみしめるように明かした。

 ルワンダの虐殺の生存者であるマリーさんは「わたしは毎朝起きる度、今でも自分が生きていることを、神に感謝しています。ルワンダの虐殺の生存者として、わたしは孤児や子供たちを助ける宿命にあると思います。わたしは、フツ族の過激派からマチェーテ(山刀)を首に押し付けられたことがありました。幸いにも首を切られずにすみましたが、どこか一つ彼らに気に入らないことがあったならば、あのとき殺されていたかもしれません」と経験談を語った。ルワンダの虐殺では、フツ族がツチ族を大量虐殺したが、その後ツチ族が制圧し新政権が発足したことで、虐殺に関与したフツ族の民兵がコンゴに逃れ、ツチ族の難民と新たな衝突がコンゴ内で起きている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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