劇場版『名探偵コナン』ファンの反応がヒントに!快進撃の裏側

劇場版『名探偵コナン』ファンの反応がヒントに!快進撃の裏側

取材に応じた林原祥一宣伝プロデューサー

 6年連続で前作の興行収入を上回るという快挙を成し遂げている劇場版『名探偵コナン』シリーズ。特に昨年公開の『名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』は、興行収入91.8億円と、前作から20億円以上も数字を伸ばした。最新作となる『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』も公開されたばかり。絶好調が続くシリーズの要因を宣伝プロデューサーの林原祥一氏に聞いた。

 林原氏が劇場版『名探偵コナン』シリーズに携わったのは第17弾『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』から。それ以来、6年に渡り宣伝プロデューサーを務め、現在まで快進撃を続けている。

重視しているのはファンとの関係性

 林原氏は、原作が現在も「週刊少年サンデー」で連載されており、テレビアニメも放送中という“作品としての人気”が強みとしてあることは「大前提」だとしつつも、自身が作品に携わるようになってから強く意識したのは「ファンとのインタラクティブ(相互的)な関係性」だという。「僕らから一方的に『面白いでしょ』というスタンスではなく、とにかく応援していただけるファンの反応をくみ取りながら宣伝を作っていこうという意識は強いです」。

 プロモーション展開したものに対するファンの反応は常にチェックする。象徴的だったのが『ゼロの執行人』の安室透だ。安室というと20年以上続くシリーズのなかでは比較的に新しいキャラクターであり、劇場版には2016年公開の『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』で初登場した。結果的には大ヒットを記録した『ゼロの執行人』だが「メインは安室さんだったのですが、正直どうやって売っていったらいいのか、最初は迷いがあったんです」と林原氏は素直な胸の内を明かす。

 そんななか、原作者の青山剛昌によって描かれた安室の写るティザービジュアルを公開した際、ファンから熱烈な反響があった。

 「僕は結構エゴサーチをするのですが、『安室の女』や『100億の男』というワードを見て、非常に面白いなと思ったんです。そこから宣伝のコンセプトも見えてきました。ファンの方がヒントをくれるというのも『名探偵コナン』という作品が他とは大きく違うところです」

ファンのすそ野を広げる取り組みにも積極的

 ファンに寄り添ったプロモーション活動と共に、新たなるファン獲得のために尽力したのが「〇〇PROJECT」という試みだ。林原氏には作品に携わるようになってから「『名探偵コナン』という二次元の作品と、三次元の実社会の距離をなくしたい」という思いがあった。それが『名探偵コナン 業火の向日葵(ごうかのひまわり)』の「KID STEAL PROJECT」につながった。

 「この作品は、怪盗キッドがメインの作品だったので“盗む”というテーマを三次元に持ち込んだんです。実際の世界で、キッドがいろいろなものを盗む。例えば原宿のキディランドで『KIDDY』の“DY”が盗まれて、KIDランドになったり……。こういう試みによって、普段『コナン』に接したことがない人も『なにか面白いことをやっているな』と興味を持ってくれる。そこから徐々に側(がわ)が広がっていきました」。

 こうした“PROJECT”の発想により、宣伝に軸を通すことができたという。その後も、様々なものを黒に染めていく「BLACK IMPACT PROJECT」(『純黒の悪夢』)、コラボを“恋”に変換する「CONAN LOVES PROJECT」(『から紅の恋歌(ラブレター)』)、“ゼロになる”をキーワードに据えた「ZERO MISSION PROJECT」(『ゼロの執行人』)などを展開し、ファンのすそ野を広げていった。

大切なのは“数字”よりもファンに楽しんでもらうこと

 最新作『紺青の拳』では、史上初となる海外(シンガポール)を舞台に、江戸川コナン、怪盗キッド、京極真の3人が活躍。非常にスケールの大きなストーリーが展開する。

 林原氏は「おかげさまで、ここ6年すべて右肩上がりという状況になっていて、過去の成績に勝たなくてはいけないという思いはあるのですが」と苦笑いを浮かべるが、「正直ここまでくるとあまり数字は意識していないんです」と語る。続けて「今回の作品も前作に匹敵するような魅力は存分に詰まっています」と力説すると「だからこそ、製作陣も宣伝チームも、前作の余韻は残したくなかった。一度すべてリセットして、一から再スタートしたかったんです」と明かした。

 その思いが現れたのが、恒例となった劇場版のティザービジュアル公開だという。例年は原作者の青山のイラストが発表されるのだが、今回は「怪盗キッドにビジュアルを奪われてしまったため、製作委員会スタッフ一同が、青山先生のビジュアルを全力で再現しました」という形で、衝撃的な絵を公開し、大きな話題になった。これも“ガラリとイメージを変える”というコンセプトのもと行われた宣伝活動だ。

 林原氏は「僕が作品に携わった初期のころは、第20弾のメモリアルに向けて、いかにいい形でつなげていけるかを意識していました。そして20年の節目の『純黒の悪夢』で大きく花開き、一つミッションが終わったという安堵感がありました。」と語る。その後の、第21弾『から紅の恋歌』、第22弾『ゼロの執行人』は「ボーナスステージに突入した感じ」と表現すると、守りに入るのではなく、どんどん新しいことに挑戦していくことをテーマにしているという。

 メディアは「100億超え」などと期待をあおる部分もあるが「映画を観てくださったお客さんとしっかり交流をして、より楽しさを増していただけるようにプロモーション活動を展開していきたい」と気負う部分はない。「『名探偵コナン』を応援してくれるファンには本当に支えられています」と語った林原氏。「ファンに楽しんでもらいたい」という熱い思いが続く限り、この快進撃がとどまることはないだろう。(取材・文・撮影:磯部正和)

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