ケン・ローチ監督『夜空に星のあるように』53年ぶりリバイバル上映

ケン・ローチ監督『夜空に星のあるように』53年ぶりリバイバル上映

ケン・ローチ監督の原点というべき長編映画デビュー作が、53年の時を経てスクリーンに!『夜空に星のあるように』12月17日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開 (C)1967 STUDIOCANAL FILMS LTD.

イギリス映画界の名匠ケン・ローチ監督の長編映画デビュー作『夜空に星のあるように』(英題:Poor Cow)が、1967年の日本公開から53年の時を経て、12月17日より新宿武蔵野館(東京)ほか全国で順次公開される。

 2000年代に入り 、『麦の穂をゆらす風』(2006年)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16年)の 2作品がパルムドール(最高賞)を受賞、80歳をこえてなお、新作を発表しているケン・ローチは、格差社会、貧困、人種差別といった社会問題を取り上げ、労働者階級やときに第3世界からの移民たちに寄り添った映画を撮り続けている稀有な映画監督。

 その一貫した視点やプロ、アマ問わないキャスティング、ロケ撮影中心、大胆なシーンの省略、即興性など、監督のその後の映画に見られる特長が、すでに顕著に表れているのが『夜空に星のあるように』だ。

 主演は、本作でカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭主演女優賞を受賞したキャロル・ホワイト。『コレクター』(1963年)でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞後、『プリシラ』(94年)、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99年)など、アート系作品からハリウッド大作まで華麗なるキャリアを誇る名優テレンス・スタンプ。また、イギリス・フォーク・ロック界の巨人ドノヴァンによる音楽が、60年代後半に生きるロンドンの労働者階級の生活を美しく彩っているのも魅力のひとつ。

 ロンドンの労働者階級に生まれた18歳のジョイは、泥棒稼業で生計を立てている青年・トムと成り行きで結婚し妊娠。ところが、トムは赤ん坊に無関心ですぐ彼女に手をあげる始末。トラブル続きのある日、トムが逮捕され、ジョイは叔母の家に厄介に。そこに夫の仲間だったデイヴが訪ねてくる。やがて彼女は優しいデイヴにひかれ一緒に幸せな日々を送るが、彼もまた逮捕されてしまう。

 予告編では、キャロル・ホワイト演じるシングルマザーのジョイが、恋人のデイヴと生活を共にする姿を中心に、幼い息子にも優しいデイヴとの、貧しくも笑顔あふれるあたたかい生活を印象づける。しかし、デイヴの職業は、泥棒。やがて捕まったデイヴは懲役12年を言い渡される。悲しみに暮れて裁判所を後にするジョイ。ロンドンの労働者階級街を、幼い子どもの手を引いて歩く姿と共に、ドノヴァンがこの映画のために提供したテーマ曲「Poor Love」が流れるのが印象的だ。

 そして、カメラは、今は取り壊され姿を消している集合住宅街やその街に生きる人々の姿をスケッチのようにとらえていく。ドキュメンタリーのようなリアルなまなざしで、市井の人々の姿を映し出していく。「女に必要なのは男。そして子ども」と語るジョイ。そして、予告編の最後のカットではジョイが「今の人生を幸せだと思わなきゃ」をカメラに向かって語りかけるシーンで終わっている。

 夢と現実のはざまで揺れ動き、生き抜こうとするシングルマザーを、静かなまなざしで見つめる感動作となっている。

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