時代とともに変わるハリウッド版ゴジラ オマージュから日米コラボへ進化した新作

ハリウッド映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で日本へのリスペクトも

記事まとめ

  • 渡辺謙出演のハリウッド映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が公開した
  • マイケル・ドハティ監督は、日本へのリスペクトとアメリカの誇りを表現しているという
  • ギャレス・エドワーズ監督の「GODZILLA ゴジラ」でも、日米関係が描かれている

時代とともに変わるハリウッド版ゴジラ オマージュから日米コラボへ進化した新作

時代とともに変わるハリウッド版ゴジラ オマージュから日米コラボへ進化した新作

9億円を超える興収で映画動員ランキング初登場1位を獲得した『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

2014年、ゴジラはワールドワイドに復活した。本国日本における平成ゴジラシリーズの最終作『ゴジラ FINAL WARS』が公開されてから実に10年ぶりのことだった。イギリス出身の新鋭ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA ゴジラ』は、1954年の元祖『ゴジラ』にオマージュを捧げたもので、ゴジラ本来が持つ脅威に目を向けた「大人向け」の一作。あらゆる意味で重量を感じさせる存在感。そして、簡単には姿を表さない抑制の美。ゴジラならではのオリジナリティを尊重し、そこから「日本的なるもの」に敬意を捧げる。オタク気質のエドワーズ監督だからこそまっとうできたビジョンがそこにはあった。

 ゴジラは子ども向けの怪獣映画ではない。この姿勢は『GODZILLA ゴジラ』が全世界興行収益530億円を突破することで、はっきりと顕在化した。さらにその2年後には、日本が誇る「キング・オブ・オタク」庵野秀明が総監督を務めた『シン・ゴジラ』が公開。ゴジラ出現に対して政府がどのように動くかを、ダイナミックかつ精緻にシミュレートした本作は、社会現象となるほどのメガヒット(国内興収82.5億円)となった。この作品の視点もまた間違いなく「大人向け」だった。そう、ゴジラという映画的創造物は、時間をかけてすばらしい「成熟」を遂げたのである。

■アメリカから日本に差し向けられた「握手」がある映画

 日本の元号が平成から令和に変わった2019年。ゴジラは生誕65年を迎える。そうして、『GODZILLA ゴジラ』に続くハリウッド映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が到着する。監督はマイケル・ドハティ。やはり新鋭である。

 サブタイトルに示されているように、この映画にはゴジラ以外の怪獣が登場する。キングギドラ、ラドン、そしてモスラ。いずれもシリーズを知る人にとっては大人気のキャラクターばかりだ。あるテロ集団の画策によって、南極の氷の下で眠っていたキングギドラが覚醒。これがきっかけとなり、世界各国で怪獣たちが復活する。世界はかつてない危機に見舞われるが、救世主となるかもしれないゴジラは海中に消えたままだった……。

 もちろん、ゴジラも覚醒し、4大怪獣による「王」を決めるためのバトルが展開するわけだが、そこに至るまでの人間ドラマがまず大きな見どころ。前作『GADZILLA ゴジラ』は、言ってみれば「友愛」のドラマだった。さり気なく、アメリカと日本の関係が織り込まれていた。そこにはエドワーズ監督がイギリス人という中立の立場だから捉えることができた「絆」のかたちがあった。

 ドハティ監督はそれを踏まえた上で、さらに強固なリスペクトの念を表明している。あえて言葉にするなら、シェイクハンド。アメリカから日本に差し向けられた「握手」がここにはある。

 渡辺謙扮する芹沢猪四郎博士の、物語における立ち位置はより大きなものになった。その詳細は、劇場に足を運んだ人だけが体感できるものなので、あえて記さないが、ある意味、このことが本作最大の美徳とも言えるだろう。そして、日本人であれば、芹沢博士をめぐる描写に、間違いなく感極まるはずだ。つまり、差し出された手を思わず握り返すだろう。この力強い感触は前作にはなかったものである。

■日本をリスペクトし、同時にアメリカの誇りを持って臨んだコラボ

 そうすることで、もうひとつのドラマの軸に、アメリカ映画ならではの家族愛を盛り込んだ。ゴジラに対する考え方も異なる女性科学者と男性学者の元夫婦が、1人娘を救うために、それぞれの存在証明をかけて奔走する。これも前作にはなかったドラマティックさだ。

 日本を心から尊敬し、同時に、アメリカなりの誇りを持って事態に臨む。つまり、それは最良のコラボレーションである。相手を信頼しているからこそ、思いっきりできる。オマージュから、コラボへ。そうした進化を遂げているからこそ、クライマックスとなる怪獣たちのバトル・ロワイヤルにも、日米双方の良さがきらめいてる。

『GADZILLA ゴジラ』がアメリカから日本への「告白」だったとすれば、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』はアメリカと日本の「お付き合い」と言ってもいい。すでに、小栗旬の出演も伝えられている『ゴジラvs.コング』(仮題)で、ゴジラはいよいよアメリカ映画史が産んだ「世界遺産」ともいうべきキャラクター、キングコングと顔を合わせる(2017年の『キングコング:髑髏島の巨神』はそのためにあった)。

 それはゴジラとキングコングの決戦ではあるが、アメリカのクリエイターと日本の創作物との幸福な「結婚」にもなるだろう。そこに至る「蜜月」としての『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、はたして日本で、世界で、どのように受け入れられていくのか。
(文/相田冬二)

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