ハリウッド版も大ヒット 東宝CGO・大田圭二氏のゴジラ世界戦略、これまでとこれから

ハリウッド版『ゴジラ』も大ヒット 東宝CGO・大田圭二氏が"ゴジラ世界戦略"を語る

記事まとめ

  • 東宝CGO大田圭二氏は、米国版『ゴジラ』にエグゼクティブ・プロデューサーとして参加
  • 東宝社内にゴジラ戦略会議が設立、大田氏は「固定ファン層からの拡大が課題」と語った
  • 大田氏は「中国は重要。中南米もゴジラ人気が高いので、今後に期待している」と分析

ハリウッド版も大ヒット 東宝CGO・大田圭二氏のゴジラ世界戦略、これまでとこれから

ハリウッド版も大ヒット 東宝CGO・大田圭二氏のゴジラ世界戦略、これまでとこれから

大田圭二氏/東宝 取締役 映像本部 映像事業担当 兼 音楽事業担当 兼 チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO):写真/逢坂聡

ハリウッド大作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にエグゼクティブ・プロデューサーとして製作参加した、東宝のチーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)を務める大田圭二氏。同作は日米で予想以上のヒットスタートを切っている。そんななか、これまでのCGOとしての活動や、日本を代表するIPの海外展開を振り返り、この先への課題と展望を語ってもらった。

■映画公開タイミング以外にも世界中にゴジラの接点を作る

――2014年10月に東宝社内にゴジラ戦略会議が設立されました。
大田圭二氏 ゴジラ生誕60周年という節目にハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(14年)が製作され、全世界で興収530億円以上の大ヒットを記録しました。日本では久しくゴジラ映画は製作されておらず、社内では「世界中でゴジラを待っている人がこんなにたくさんいたんだ」という空気になりました。ゴジラは東宝が世界に誇れる大切なIP。それを大きく育て、世界中の人に愛されるキャラクターにすることは、東宝の使命だという気運が改めて高まり、そのための専任組織「ゴジラ戦略会議」(ゴジコン)が発足しました。

――ゴジコンではどんなことが話し合われてきたのでしょうか?大田圭二氏 まずはゴジラのブランディングをしっかり構築すること。ゴジラをより世界で愛されるキャラクターにするために、どのように育てていくか。具体的に言えば、映画が公開していない時期にもさまざまなタッチポイントを作っていくことで、その認知度を上げる。それによって、男性、年配層、特撮ファンといったこれまでのゴジラファン層にプラスして、世代や性別など裾野をもっと広くしていこうという使命のもと活動しています。

――これまでにどんな成果を上げていますか?
大田圭二氏 わかりやすい部分で言えば、新宿のTOHOシネマズの建物の上にあるゴジラヘッドは、ゴジコンの初案件です。そのほか、ユニバーサルスタジオとコラボした4Dアトラクションや、ゴジラ検定、ちびゴジラなども企画しました。企画アイデアはたくさん集まっていて、そこからいろいろな試みを実施していき、とにかくより多くの方にゴジラというキャラクターを身近に感じてもらおうと日々活動しております。

■日本IPの海外リメイクへ 基本的に製作出資していく

――大田さんが就任されたCGOはネーミングもユニークですね。
大田圭二氏 17年5月に発令されたのですが、直訳すると少し大げさですが最高ゴジラ責任者(笑)。ゴジラに関するすべての情報をしっかり集約し、戦略を立案、実行していくミッションを担っております。要はゴジコンの責任者という立場です。

――5月31日より世界公開されたハリウッド版第2作目となる『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、エグゼクティブプロデューサー(EP)を務められています。
大田圭二氏 14年の『GODZILLA ゴジラ』の際には、あくまでキャラクターをお貸しするという立場で、クリエイティブにはまったく口をはさんでいませんでした。もちろん、ギャレス・エドワーズ監督にはゴジラへの深い愛とリスペクトがあったので、口を出す必要がなかったということもあります。同作を通してレジェンダリー・ピクチャーズとの信頼関係を築けたこともあり、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では出資とともにクリエイティブ面も含めた製作参加をさせていただきました。

――EPとして製作に入ることによる変化はありましたか?
大田圭二氏 原作とキャラクターの貸し出しだけのときとは異なり、ゴジラのブランディングの部分では、ある程度クリエイティブにも意見を出させていただいています。ただし、『シン・ゴジラ』のときもそうでしたが、作品にとって作家性は大切なので、脚本や監督の意見は基本的に尊重しております。

――今後も続いていく「モンスターバース」には、引き続き東宝として製作参加されていくのでしょうか。
大田圭二氏 すべて決まっているわけではないのですが、ゴジラ作品に関してはこの先も参加していく意向です。

――ハリウッド大作への巨額出資は、それなりのリスクも伴いますね。
大田圭二氏 もちろんリスクはありますが、東宝ではグローバルコンテンツとして、我々と縁が深く、強い日本のIPが海外でリメイクされるときは、基本的には製作出資をしていく方向性を打ち出しています。その第1作目が『名探偵ピカチュウ』。続けて『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、ハリウッド実写版『君の名は。』。『モンスターハンター』のハリウッド実写版も製作で入っています。日本は世界に誇れるIPを持っているのだから、日本の企業として必然の流れだと思います。

――海外戦略では、ゴジラの海外キャラクター権を買い戻しました。
大田圭二氏 レジェンダリー製作の映画に関しては、中国市場はレジェンダリーが引き続き担当するのですが、それ以外の国は2018年から東宝が手がけています。これまで海外の展開については、そのマーケティング的な情報が入りにくかったのですが、現在は社内で国際部が管理をしており、しっかりと経験値を積み重ねていくことで、その知見をゴジラ以外のキャラクターにも応用していきたいと考えています。昨年5月の米ラスベガスの『ライセンシングエキスポ』では、飛び込みの商談も多くあり、BtoBでファンの集いではないにも関わらず反響が大きく、ブースは大盛況でした。最近では、ウォルマート(米世界最大級のスーパーマーケットチェーン)で仕掛けたゴジラシリーズ旧作フィギュアの売れ行きが絶好調です。ゴジラというキャラクターが世界中から注目されていることを実感しています。

■ゴジラビジネスの活性化へ 固定ファン層の拡大が課題

――ゴジコンが発足してから4年半が経ちますが、これまでの活動をどのように評価していますか?
大田圭二氏 ゴジラのブランディングをしっかりやっていくことが骨格にありました。それまでは、そのゴジラのブランドルールが曖昧でした。東宝側がそれをしっかりと提示していくことが大事だと思っています。映画だけでなく玩具や絵本など、多岐に渡る展開を目指していくなかで、ゴジラ憲章を作り、そのマネジメントルールに則っていく。現在はその最終段階まできています。

――今後の展開はどのように見据えていますか?
大田圭二氏 先ほどユニバーサルスタジオの話をしましたが、ゴジラはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使った体感型アトラクションとの相性がいいので、テーマパークや展示会などへも積極的に展開していきたい。あとは、今回の映画は世界82ヶ国で公開されますが、やはりゴジラビジネスの活性化には映画公開が一番効果的なので、そのタイミングでいろいろなコラボ企画にさらに力を入れていきたいと考えています。スマホゲームなども世界共通でブレイクする可能性を秘めていますので、この先の狙いどころだと思います。

――課題はありますか?
大田圭二氏 やはり固定ファン層からの拡大です。『アベンジャーズ』シリーズなどのマーベル作品は、女性や子どものファンもたくさんいます。絵本や映像化を含めて展開中の子ども向けキャラクター・ちびゴジラを製作しましたが、小さな子どもたちが初めて出会うゴジラという部分にも力を入れていきたい。また、5月14日に世界のゴジラファンに向けたゴジラ初のグローバル公式サイト「Godzilla.com」をローンチしました。ゴジライベント情報や、新商品、さらに初のオフィシャルモンスターペディアなど内容も盛りだくさんで、継続的に更新していく予定。広く世界に向けて発信していきます。

――映画は世界中で公開されますが、注目している市場はありますか?
大田圭二氏 どの業界もそうだと思いますが、やはり中国は重要。中南米もゴジラ人気が高いので、今後の伸びに期待しています。また、東南アジアはイーコマースや動画配信が伸びていますが、国別に細かな戦略を立てて展開していきます。
(文/磯部正和)

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