米興行は苦戦?北米夏興行ラッシュに揉まれるハリウッド新作『ゴジラ』

米興行は苦戦?北米夏興行ラッシュに揉まれるハリウッド新作『ゴジラ』

日本では公開2週目で興収17億円を突破するヒットになっている『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

毎週のように超大作の公開が続く、初夏の米国。5月31日に公開となった『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は期待された勢いを見せられず、夏興行ラッシュに揉まれている。北米における興行の動きと評価は、どのようなものなのか? モンスターバースの行方とともに探る。

■ボックスオフィス公開初日1位も2週目で4位へ

 米ワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズが展開する怪獣映画フランチャイズのモンスターバース映画としては、2014年の『GODZILLA ゴジラ』、2017年の『キングコング: 髑髏島の巨神』に次ぐ3本目にあたる同作。公開20日前の時点では、初週末の北米興収予想は、5000〜5500万ドルとされていた。公開前夜の先行上映における興収も630万ドルと、『GODZILLA ゴジラ』の930万ドルよりは低かったものの、『キングコング:髑髏島の巨神』の370万ドルを大きく上回る数字をマーク。この時点でも、興収予測はそのままだった。

 ところが、翌日に全米4108館で公開となると、公開初週末の興収は4900万ドルと、予想をやや下回る数字。『GODZILLA ゴジラ』(9300万ドル)には遠く及ばず、『キングコング:髑髏島の巨神』(6100万ドル)にも届かなかった。公開当日には、その前週末から7日連続で1位にいたディズニー実写版『アラジン』をおさえてボックスオフィス1位となったものの、翌日にはまた『アラジン』が1位に。公開2週目の週末には、ファミリー向け映画『ペット2』、X-MENシリーズ最新作『X-MEN:ダーク・フェニックス』、そして『アラジン』に次ぐ4位となった。

 ちなみに、モンスターバース作品の興収を比較すると、『GODZILLA ゴジラ』が米国内で2億ドル、全世界で5.29億ドル、『キングコング:髑髏島の巨神』が米国内で1.68億ドル、全世界で5.66億ドル。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2週目が終わった時点(6月9日時点)で、米国内が7850万ドル、全世界が2.16億ドルとなっている。米国の多くのエリアでは、子どもや学生たちが夏休みに突入したため、追加興収が期待できるものの、モンスターバースの前2作品には及ばないとみられている。

■批評サイトは辛口評価 ファンの声は賛否両論

 こうした動きの理由はいくつか考えられるが、そのひとつに、口コミの弱さがあるだろう。米映画批評サイト「ロッテン・トマト」のスコアは40%と厳しく、公開初日の観客評価による格付け指標「CinemaScore」も“B+”と無難な評価となっている。

 批評家やファンのレビューでは、「怪獣パートはよかったが、人間パートは残念だった」という感想が目立つ。「伝説のオールスターともいえるゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラが集結したこと」「怪獣たちのバトルシーンの多さや美しさ」への肯定的な意見と、「深みがなく、無表情な人間たちの会話」「共感しづらい物語展開」への否定的な意見が入り混じっているのだ。そうしたなかでも、これまでのゴジラの歴史の代弁者ともいうべき、渡辺謙の役柄と演技には、賞賛の声が多い。また、往年のゴジラとは違うルックスに違和感を持つコアファンの声も目立つ。

 米映画業界誌「バラエティ」によれば、同作の公開初週末の観客層は、76%が男性、そのうち59%が25歳以上と、いわゆるゴジラのコアファンである大人の男性層が多かったという。米ワーナー側は「コアファンを超えて、観客層を広げることを目標としている」と語っているが、そのためには、並みいる強豪映画やその他の娯楽に勝るフックが必要だ。もちろん、口コミも。

 若年層の人気を誇る同作出演のミリー・ボビー・ブラウンは、自身が作品に参加するまで、ゴジラになじみがなかったことを明かし、「ゴジラのコアファンも、ゴジラ初心者の人も、必ずや恋に落ちるはず」と太鼓判を押しているが、そうしたプッシュが、少しずつでも夏休みの家族連れや女性を惹きつけ、ファン層拡大につながることを期待したい。

■今作の興行によるモンスターバース計画への影響も?

 では、これまでに公開された3作品が、北米興収で右肩下がりの動きを見せているモンスターバースは、今後どうなるのか? 「バラエティ」によれば、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の製作費は約2億ドル、マーケティング費は1億ドル以上。これらの費用は年々増加傾向にある。製作費が右肩上がりで、興行がその逆という状況は、喜ばしいものではないだろう。ゴジラのスターパワーが炸裂する海外に頼るばかりではなく、モンスターバース発信地である北米でも、興収を上げていきたいところだ。

 こうしたなか、メディア・アナリストのポール・ダーガラベディアン氏は、「同作が過去2本よりも不振だとしたら、(モンスターバースを)再び活性化させ、生き延びさせるためには、クリエイティブ面でのリスクや、怪獣映画ジャンルにおける何か違った視点が必要とされているのだろう」と見解を述べている。

 モンスターバースの4作目としては、2020年に米公開予定の『ゴジラvsキングコング』が控えているが、先日行われたカンファレンスで、ワーナー・ブラザース会長のトビー・エメリッヒ氏は、同作の公開を遅らせる計画を示唆。その理由を「ファンが求めているような“A+”の作品に仕上げるため」と説明した。この決断に、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の興収や評価がどのような影響を与えているのかは定かではないが、ダーガラベディアン氏が指摘するように、モンスターバースの再活性化に向けて、重要な動きがとられるのだろう。

 そのダーガラべディアン氏は同ユニバースへの期待を込めて、こう語る。「もし、『ゴジラvsキングコング』の予告編がよいもので、マーケティングもすばらしく、タイミングも合っていれば、同作でモンスターバースの北米興収を再び上昇させることは可能。ただ、今の段階では、誰にも予測できません。モンスターバースとしてまとめられている以上、運命共同体のようなもので盛衰はつきものですが、だからといって、フランチャイズ展開をあきらめる必要はないのです」。

 公開初日に首位に立ってなお、予想を下回ったと分析がなされ、さらなる飛躍を求められる。それは、ゴジラという存在への期待と敬愛の裏返しともいえるだろう。まだ、ゴジラを日本へ帰国させるわけにはいかないと踏ん張るハリウッドの動きに、引き続き注目していきたい。
(文/町田雪)

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