クリストファー・ノーラン監督「自分が見たいものを作りたい」 映画製作の信念語る

クリストファー・ノーラン監督「自分が見たいものを作りたい」 映画製作の信念語る

クリストファー・ノーラン監督(右)と主演を務めるジョン・デイビッド・ワシントン(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『ダークナイト』シリーズ、『インセプション』(2010年)、『ダンケルク』(17年)などで知られるクリストファー・ノーラン監督(50)の最新作『TENET テネット』が9月18日(金)に公開を迎える。8月26日から41の国と地域で公開され、業界関係者や事前報道の予測を大幅に上回るオープニングを記録し、ついに9月3日(木)から全米、中国でも公開。劇場封鎖となった3月以降世界中で、断トツのNo.1の大ヒットをたたき出している本作への思いを、主演を務めるジョン・デイビッド・ワシントン(36)とともに語ってもらった。

 アメコミ映画の新時代を切り開いた『ダークナイト』シリーズ。“夢”の中を映像化した『インセプション』。陸海空の視点から戦争を体感させた実話『ダンケルク』など、誰も観たことのない映像をゼロから生み出す才能と、ヒットメイカーとしての才覚をあわせ持つノーラン監督。最新作で描かれるのは、人類が疑いなく信じ続けてきた「時間のルール」からの脱出だ。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)が、時間に隠された秘密を解き明かし、第三次世界大戦から人類滅亡を防ぐミッションに相棒のニール(ロバート・パティンソン)とともに挑んでいく。

■自分自身の興味を映像化「見たことのないものや世界を見たい」

 本作は「1度見ただけでは理解するのが難しい」と評され、“わかりやすい映画”が多くなっている昨今の流れに逆行するような物語が設計されている。

 ノーラン監督は映画を作る上で“誠実さ”を大事にしていることをあげ「自分が観たいものじゃないと作りたくないということです」と自身の中の“誠実さ”の解釈を説明。「自分だったら何を期待するのか? ワクワクしたい。現実逃避したい。観たことのないものや世界を見たい。だからそういうものを描こうとしています」と自分自身の興味を映像化することをモットーとする。

 「自分が観たいような映画は、ほかの人も観たいに違いない。そういう人たちがいるに違いない――という信念がありますが、まずはエンタメ作品として楽しんでいただきたいですね」と自身が掲げる思いを語ってくれた。

 さまざまな仕掛けを仕込んでくるノーラン監督だが、その発想力はどうなっているのか。「インスピレーションや何をヒントにしているかは具体的には言えません(笑)」とするも「長年考えていることを形にしている感じですかね。日々の生活や見聞きしていること、年齢を重ねている事実など、そういうことが積み重なると『そろそろこのコンセプトを映像に落とし込んでいいかな?』という時期がやってくるんです」と日常の中から、多くのことを吸収しているようだ。

■悪天候に興奮のノーラン監督 主演ジョン・デイビッド・ワシントンも驚き

 本作で初タッグとなったジョン・デイビッド・ワシントンもノーラン監督には驚かされることがあったという。「びっくりしたのは、悪天候に興奮していたことです」といい「雨が大ぶりでも『やるぞ!』とやる気を見せてくださいました。デンマークにある風力発電所での撮影では、ものすごい晴れだと喜んでいなくて、次の日は大荒れでそれに興奮していたんです。『ああ、こういう人なんだな』と。役者との演出も楽しそうにやってくれますよ」と信頼関係がうかがえた。

 その、ジョン・デイビッドが演じる「名もなき男」は、ある偽装テロ事件に特殊部隊として潜入したことから、第三次世界大戦を防ぐための謎のキーワード「TENET」を巡るミッションに巻き込まれる役どころ。

 自身の役柄について「非常に遊びのあるキャラクターでいろいろな解釈ができる」というジョン・デイビッド。「この人がどういう歴史を背負っていて、どういう背景があるのかを考えました。下調べをしていく中で、このキャラクターは人間をすごく思っていて、人間らしい脆弱さもあることがわかりました。人によっては落ち度と感じるかもしれないけど、これこそが彼の力だと思うんです」と弱さを見せる部分もキャラクターとしての魅力的な部分だという。

 激しいアクションもあることから「トレーニングは大変でした」と笑いながら振り返る。「2ヶ月ほど、体作りをして形から入りました。でも、体を作ったことで、この人はなぜ戦うのか、こういう人間なんだと自分の体でわかるようになっていきました」と体作りを通して役柄への理解を深めていった。「監督は僕をパートナーとして見てくれて『やりたいようにやっていい』と言ってくださいました。その言葉に安心して、感じるままに演じることができました」。

 『メメント』(01年)、『インターステラー』(14年)などこれまでも“時間”をテーマにすることが多いノーラン監督。本作では、時間が逆行する誰も観たことがない世界を描き、やはり時間というものが大きなキーワードになる。1度で理解しきれないのは、先んじて鑑賞した者として同意見だ。ただ、1度見た後に「理解するまでみたい」と思わせてくれるのが、ノーラン監督が手掛ける作品の魅力かもしれない。

◆クリストファー・ノーラン 1970年7月30日生まれ イギリス出身
『フォロウィング』(98年)で長編映画の監督デビュー。05年には『バットマン ビギンズ』を手掛けるなど人気シリーズの監督に抜てきされた。『ダンケルク』では、「第90回アカデミー賞」の監督賞にノミネートされた。

◆ジョン・デイビッド・ワシントン 1984年7月28日生まれ アメリカ出身
父は『トレーニング デイ』で「第74回アカデミー賞」の主演男優賞を受賞したデンゼル・ワシントン。プロのアメリカン・フットボール選手として活躍後、俳優業を開始。スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』(18年)で映画単独初主演を務めた。

関連記事(外部サイト)