『ピカソ―ひらめきの原点―』パナソニック汐留美術館で開幕 イスラエル博物館のコレクションでピカソの画風の変遷をたどる

20世紀最大の画家と言われるパブロ・ピカソ。想像力と感受性の富んだピカソは、常に新しい表現を探求し、その画風を変遷させていった。その過程をイスラエル博物館が所蔵する作品で紐解いていく展覧会『イスラエル博物館所蔵ピカソ―ひらめきの原点―』が、4月9日(土)から6月19日(日)までパナソニック汐留ミュージアムで開催されている。世界屈指と言われるイスラエル博物館のピカソ・コレクションがまとまって紹介されるのは、日本初のこととなる。

エルサレムにあるイスラエル博物館は、グラフィック作品を中心に800点あまりのピカソの作品を所蔵しており、世界屈指のコレクションとも言われている。同展では、このピカソ・コレクションより版画作品を中心に紹介。ピカソがパリに出た1900年頃から、亡くなる3年前の1970年まで、約70年の作品を年代順に5章に分けて展示し、その作風の変遷を追っていく。

第1章「1900-1906年」は、スペインからパリに出てきたピカソの作品からスタートする。親友の自殺をきっかけに突入した「青の時代」、恋人・フェルナンド・オリヴィエとの出会いから生まれた「バラ色の時代」など、ピカソは人々との出会いと別れによって作風を大きく変えていく。旅回りのサーカス芸人の様子を描いた連作「サルタンバンク・シリーズ」は当時のピカソの作風を色濃く伝えている

第1章「1900-1906年」 展示風景

第2章「1910-1920年」は、ピカソとジョルジュ・ブラックが生み出した表現方法「キュビスム」に焦点を当てる。対象を複数の視点から観察し画面上に再構成する「分析的キュビスム」、その「分析的キュビスム」から発展した「総合的キュビスム」は、20世紀美術の流れを大きく変えた。

第2章「1910-1920年」展示風景

しかし、美術の歴史を大きく変えたピカソであるが、1917年のイタリア旅行をきっかけに、ルネサンス美術や古典美術に関心を寄せ、また大きく画風を変化させる。第3章「1920-1937年」では、新古典主義とシュルレアリスムの時代のピカソについて取り上げる。1930年から7年間にわたって制作されていた版画シリーズ「ヴォラール連作」は、当時のピカソの変容が如実に表されている。「ヴォラール連作」は、エッチングやドライポイント、アクアチントなどさまざまな版画技法で制作されており、版画という表現技法を重要視していたことも伺える。ちなみに、ヴォラールとはピカソが初期に所属していた画商アンブロワーズ・ヴォラールの名前を冠したものだ。

第3章「1920-1937年」展示風景

第4章「1937-1953年」は、ピカソの故郷であるスペインで起こった内戦時の作品を紹介する。1936年に勃発したスペイン内戦はピカソに大きな影響を与え、代表作である《ゲルニカ》が描かれた。同展で展示されている銅版画《フランコの夢と嘘I、II》は、ゲルニカが描かれる前に制作された、ピカソ初の政治的メッセージが込められた作品だ。また、当時ピカソのミューズであったドラ・マールの存在もまた、ピカソの制作意欲を強く刺激していたという。

そして、第5章「1953-1970年」は、老いてますます創作意欲が盛んになった晩年のピカソの作品を取り上げる。86歳で取り組んだ347点からなる版画連作〈347シリーズ〉や、当時の伴侶ジャクリーヌ・ロックの肖像などを展示する。

第5章「1953-1970年」展示風景
展示風景より さまざまな写真家が撮影したピカソのポートレート写真

巨匠であるピカソの姿はさまざまな写真家たちが捉えている。ピカソという強い求心力を持つ天才の姿を、彼の生涯に渡る作品を見てから眺めるとさらに魅力的に映る。

ピカソの歩んだ、長い道のりをじっくりと捉えてみよう。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『イスラエル博物館所蔵ピカソ―ひらめきの原点―』
2022年4月9日(土)- 6月19日(日)、パナソニック汐留美術館にて開催
※日時指定予約制
美術館公式サイトは https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/220409/

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