美弥るりか主演ミュージカル『The Parlor』上演中 花乃まりあ、剣幸と親子3代を熱演

演出家・小林香による新作オリジナルミュージカル『The Parlor』がよみうり大手町ホールで上演中だ。ジェンダーギャップ指数が120位と発表された日本で、小林が「女性たちの物語を描きたい」と企画した本作。曽祖母の時代は談話室、祖母の時代は美容室、母の時代は喫茶室と、ある家族の女性たちが連綿と守り継いできた部屋「ザ・パーラー」を舞台にした、母娘3代の物語。4月28日、関係者に向けたゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われた。

世代を越えて受け継がれ、さまざまな人の思いが交差してきた「パーラー」。アメリカ・ロス在住のゲームクリエイター円山朱里(美弥るりか)は、祖母の阿弥莉(剣幸)に呼ばれて数年ぶりに帰国するところから物語が始まる。

左から)舘形比呂一、剣幸、植原卓也、北川理恵

母の千里(花乃まりあ/2役)の死をきっかけに、ゲームの世界にのめりこみ、世界的なゲームクリエイターになった朱里。そんな朱里に対し、継ぐ者のいなくなったパーラーを閉店すると告げる阿弥莉。しかし、常連たちーー幼い娘を育てるシングルファーザーの巧(植原卓也)、クロスドレッサーのザザ(舘形比呂一)、ゲーマーの主婦アリス(北川理恵)は閉店に反対する。パーラーは自分らしくいられる大切な場所だったからだ。

そこへ、千里にそっくりな女性が現れる。彼女は千里の死後、大手おもちゃメーカー・トイッスルの社長である草笛遊史(坂元健児)に引き取られていた、朱里の妹の灯(花乃まりあ/2役)。灯は朱里に、トイッスルの人気ボードゲーム「Toi・Toi・Toi」のPCゲーム版の制作を依頼してーー。

左から)花乃まりあ、美弥るりか
植原卓也
舘形比呂一

美弥は、世界的に活躍するゲームクリエイターとしてのカリスマ性を自然に醸し出しつつも、朱里が抱えている心の傷や葛藤にも丁寧にアプローチ。物語が進むにつれ、朱里の心が解けていく様子がはっきりと見えてくる繊細な演技がよかった。花乃は、千里と灯という全く性格の異なる2役を好演。剣は、その場を包み込むような温かい雰囲気があって「ザ・パーラー」に人が集う理由を体現した。劇場のサイズも物語にあっていると感じた。具象の舞台だが、映像やスクリーンを使って、場面が切り替わり、特にゲームの中の世界を表現するシーンは見どころのひとつだろう。

小さなことが、次の大きな自由に繋がっていく

ゲネプロ前には小林のほか、出演する美弥るりか、花乃まりあ、剣幸の3人が取材に応じた。

ーー小林さんから見た皆さんの印象を教えてください。

小林 出演者7名、どの俳優も本当に素晴らしく、細やかな芝居をずっと重ねて稽古を積み上げてきました。特にこのお三方は、血の繋がった家族を演じられるんですが、やはり共通点があるといいますか、同じところで育ってこられたので、共通する気品や知性、柔らかい雰囲気があると感じています。稽古の初期からすでにご家族のような雰囲気を持っていました。

Musical『The Parlor』初日前取材会より 左から)小林香(作・演出)、花乃まりあ、美弥るりか、剣幸

美弥さんは、この世のものではないような(笑)特別な役を演じてこられることが多いと思うんですが、今回は普通の人の役。砂に水が染みわたるように朱里の感情を台本の中から自分の中に吸収し、自然に朱里という役を演じています。

花乃さんは去年ご一緒したんですが、そこから月日を経て、いい意味で、人ってこんなにも変わっていくんだということを学ばさせていただきました。もともと芝居と歌、ダンス、容姿の四拍子が揃った稀有な方ですが、そこに人生の年輪みたいなものが加わって、本当にマグカップひとつ渡す芝居の中にも相手への思いやりを感じます。

剣さんとはこれを含めて3作ご一緒していますが、なぜか、全ての役がおばあさんの役ですよね。黙っていても相手のお芝居をしっかり受けて、心の中に落とし込んで、黙っていても何を感じているのかよく分かり、それを相手の役者さんに返すことができる役者さんです。見えない部分も本当に細やかに表現してくださっていて、1カンパニーにひとり、剣さんがいたら良いなと思う、頼もしい俳優さんです。

ーーキャストの皆さんからみた、小林さんの演出は?

美弥 演出を受けるのは今回が2作目です。前回はコロナの影響もあって、スケジュールがタイトでしたが、今回はしっかり台本と向き合い、香さんのアドバイスを受けて、毎日充実していました。生きているなぁ、って。自分の心と朱里の心をフルに動かし、キャストの皆さんが演じる一人ひとりの人生の物語について考えて、一緒に丁寧に作品を作る、幸せな時間でした。

香さんは、私のことをすごく理解してくださっていて、ダメなところも包み込んでくださるような温かさがあって。そんな香さんとまたご一緒できる機会があるとは思ってもいなかったので、お話を聞いた時も嬉しかったですし、こうやって初日を目の前にして、濃い時間を一緒に過ごせてとても嬉しいです。

花乃 昨年ご一緒させていただいて、また香さんの演出を受けられるんだということが嬉しいなと思ったことです。俳優としてはもちろんですが、ひとりの人間として大切にしていきたいこと、新たな気づきとか、考えるきっかけをくださる方です。

私も香さんは全てお見通しで、弱点を含めて全部わかっていただいていると思います。それゆえに稽古ではすごく痛いところをつかれることもありますが、弱点を乗り越えるために一緒に一番情熱を持って戦ってくださるので、私も負けずについていこうと思います。アメとムチの使い方がとても上手で(笑)、ひどく痛いところをつかれた後、一生懸命頑張ったら、できたかどうかに関係なく、変わろうという意識を見逃さず、絶対に気づいて褒めてくださる演出家さんです。

 3作ご一緒していて、全部おばあさんの役です(笑)。その間にもどんどん年を重ねていって、いまや、回想シーンが大変です(笑)。お稽古場に関してはふたりが言ってくださったように、全てのことに目を配ってくださいます。香さんがお書きになった台詞や歌詞の中に「なぜ」がたくさん出てくるんです。香さんがいま世の中に対して「なぜ」と思っていることをいっぱい散りばめてくださっている。最初はその「なぜ」になぜ? と思いましたが、それは私が歳を重ねていくごとに、平穏無事に波風立てずに生きようとしているからだと気づいて。それじゃダメなんだとこの作品に教えられましたし、明日への勇気みたいなものをいただきました。香さんが書く作品はこんなにも力強いんだと思っています。初日を前に心がメラメラと燃えています。

ーー改めて、小林さんが本作に込めた思いを教えてください。

小林 今、地球全体が暗い雲に覆われているような、そういう気持ちになる状況です。ある国では人口の半分以上の子どもたちが国を脱出しないといけなくて、その状況を作っているのは大人たちです。でも、子どもたちに「あぁ僕・私は生まれてきてよかった」と思ってもらいたい。「どうして僕・私を産んでしまったの? 産まないでいてほしかったよ」とは思わないでほしい。そのために今できることはなんだろうと。

大きな変革はできないんですけども、一人ひとりがささやかな物事に気付いたり、何かあったときに無視しないで考えたり、言葉にして伝えたり。自分のこと、他の人のことを考えるということ。小さなことが、次の大きな自由に繋がっていく。そういったことが伝わったらいいなと思ってこの作品を書きました。

美弥・花乃・剣も絶賛の母娘3世代で歌う『The Parlor』

ーー楽曲も本作の魅力。お気に入りのナンバーと合わせて、意気込みを最後に教えてください。

美弥 (楽曲の)アレクサンダーさんとは今日初めてオンラインで顔を見てお話しました。やっと会えて嬉しいですと言ったら、「今は離れていて国も違うけど、気持ちはいつもそっちにいるからね」と言ってくれた。本当に温かく、チャーミングで素敵な方だと思いました。彼がギター1本で歌っているデモテープが本当に素敵でオシャレで。こんなふうに歌えたらどんなに気持ちいいだろうと感じました。私も彼の魂が自分にも宿っていると思って大切に歌いたいですね。

これを歌ったら幕が降りていいんじゃないかと思うくらい(笑)、一曲一曲が壮大で物語のある曲ばかりなのですが、まずは今回の主題歌であり、母娘3世代で歌う「The Parlor」は聴いて欲しいと思いますし、ひとりで歌う「Another World」も他と印象が違って好き。朱里がいつも見ている世界を感じられる曲です。今日まで大切に作り上げてきた作品をみなさまにお届けできるのを嬉しく思いますし、私たちを導いてくださった香さんを信じて、7人のキャスト全員で生み出す繊細な空気と感情を大切に丁寧にお届けできたらと思っています。ゴールデンウィークなので、ひとりでも多くの方に劇場でお会いできたら嬉しいなと思っています。

花乃 どの曲も大好きで悩ましいですが、「The Parlor」は初めてデモ音源を聴いて、自然と涙が出てきました。香さんが考えていることをアレクサンダーさんが理解して、音楽に乗せてくれたことが、素晴らしいチームだと感動しています。また、植原さんと一緒に歌う「Tシャツみたいな自分」。自分自身を何者でもないと思っている者同士が、お互いの存在や言葉によって、特別な存在になれるかもという希望を見出していく歌。ロマンスというか、この人と生きていこう、関わっていこうという素敵な感情の一番フレッシュで大切なところだけをぎゅっと絞ったような素敵な曲で、私も歌いながら勇気をもらえます。作品に込められたメッセージはとても一言では語り尽くせませんが、いろいろな個性や事情を持つ人が集まり、名もなき戦士となって、小さな力を重ねて世界を変えようと奮闘する話です。稽古中に香さんから「私たち自身が本気で世界を変えるという思いをどこかで持っていてほしい」というお話をしてくださって。私も世界を変えるつもりで頑張ります。クエストを見届けてください!

 親子4世代にわたる膨大な時間を、アレクサンダーさんがいろいろなバリエーションの曲で壮大に表現してくださっているんです。私も「The Parlor」の、一人ひとりの思いが最後にひとつの合唱になるところが大好きです。もうひとつは、「呼ばない名前」。亡くなってしまった子どもの名前を呼べない、孫がふたりいるけどちゃんと呼べないという祖母の葛藤を素敵にやさしく描いてくださいました。そして、この作品は観た方がいろいろな感じ方をしてくださると思います。見て見ぬ振りをしないで考えるとか、自分の人生を決めていけることなどを感じ取っていただけたら嬉しいです。心を込めて演じさせていただきます。

小林 意気込みは、間に合わせることです。……冗談です(笑)。ゴールデンウィークですので、世の中に楽しいことはたくさんあると思います。ですが、劇場に行くというのも本当に楽しいことだと思いますし、いろいろな深いテーマを持っていますが、エンタテインメントとして楽しんでいただける作品になっています。いろいろな選択肢の中からぜひ観劇を選んでいただき、私たちが繰り広げる「ザ・パーラー」を観ていただけたら嬉しいです。

Musical『The Parlor』上演時間は約2時間15分(途中休憩なし)。公演は5月8日(日) まで。

取材・文・撮影=五月女菜穂

関連記事(外部サイト)