ユアネスからSaucy Dog、そしてゆずへと託された音楽のバトン ぴあ創業50周年記念イベントをレポート

7月9日、ぴあ創業50周年を記念して行われたイベント『ぴあ 50th Anniversary MUSIC COMPLEX SPECIAL EDITION』。会場となった横浜みなとみらい地区にある、ぴあアリーナMMのエントランスでは情報誌「ぴあ」の表紙を飾ってきた及川正通氏のイラストがタッチパネルで見られるようになっているなど随所に“らしい”演出が施されていた。今回、この記念すべきイベントに出演するのは、ゆずとSaucy Dog。さらにオープニングアクトにはユアネスがラインナップされ、世代やジャンルを超えた組み合わせが開催前から話題となっていた。

美しい旋律のなか登場したのはユアネス。Vo&G、G、B、Dsといった4ピースバンドの基本形でありながら、同期を巧みにアンサンブルに織り込み、ただのギターロックバンドではないサウンド的な深さと広がりに驚かされた。特に2曲目に披露した「日照雨」は、打ち込みのリズムとシンセが絡み、生音とプログラミングされた音の融合が視覚までも刺激する際立ったパフォーマンスだった。

黒川侑司(ユアネス)
古閑翔平(ユアネス)

そして何より、ユアネスの最大の強みは黒川侑司のボーカルだ。最後の2曲を飾ったミディアムバラード『「私の最後の日」』「籠の中に鳥」で見せたボーカルの感情表現は何にも増して雄弁に彼らの音楽の軸にあるものを示していたように思う。ど真ん中に歌があること――それが何より今回のイベントに集まった3組の特徴であり、邦楽シーンにおいては欠かせない要素のひとつであることをユアネスのこの日のパフォーマンスで改めて深く納得させられたような気がした。

田中雄大(ユアネス)
小野貴寛(ユアネス)

「煙」を1曲目に選んだのはどういうことだろう、と考えながらSaucy Dogの練り上げられた3ピースバンドのグルーヴに身を委ねていた。2017年5月にリリースされた彼らの初の全国流通盤となった1stミニアルバム『カントリーロード』の1曲目が同曲だったということから想像すれば、バンドとしての本格的な始まりをここで一度再確認するというような意識があったのかもしれない――というのはいささか都合の良すぎる解釈かなと思っていたら、2曲目が「シンデレラボーイ」で、発表から1年ほどが経ってもなおサブスクリプションサービスの再生回数上位にランクインするバンドの代表曲とも言えるこの曲と「煙」との間にある充実した足跡を感じずにはいられなかった。

Saucy Dog

「ゆずと対バンさせてくれてありがとうございます!」とせとゆいか(Ds)が主催者への感謝を示し、さらにこう続けた。「すごく難しい時代が長々と続いていますが、今日一日が終わって、みんなの明日の朝が今日の朝より少しでも明るい気持ちになっていたらいいなと思います」

せとゆいか(Saucy Dog)
秋澤和貴(Saucy Dog)

最新アルバム『サニーボトル』から「Be yourself」を披露した後は「雷に打たれて」「バンドワゴンに乗って」といった曲で一気に畳み掛ける。ラスト2曲は「いつか」と「優しさに溢れた世界で」。「いつか」の前のMCで石原慎也(Vo&G)がこう言った。

「僕らが結成した年に作っていた曲で『いつか』という曲がありまして。そこから6年くらい経って、ゆずさんと一緒にライブができて、ようやくご本人に直接言えたわけです。本当に奇跡みたいなことって起こるんですね」

石原慎也(Saucy Dog)

これまでのバンドの歩みと今の時代に立っている実感をリアルに詰め込んだ全10曲、Saucy Dogの全てをぶつけたようなステージだった。

「夏色」のSE、「サヨナラバス」「少年」でスタートしたゆずのライブ。一瞬で有無も言わせないエンタテインメント空間に会場を染め上げる手腕はもう、さすがとしか言いようがない。オーディエンスの煽り方の多彩さ、曲間に挟まれるMCでのコミュニケーション、そして何より誰もが知っている大ヒット曲の数々といった最強のカードを惜しげもなく繰り出していけるのは、25年にわたってシーンのトップを走り続けている証だ。

ゆず

「Saucy Dogの『いつか』は2016年に出した曲で、我々ゆずの『いつか』は1999年に出したものです。最初に言っておきます。『いつか』というタイトルの曲は、みんないい曲です(笑)」(北川悠仁)

北川悠仁(ゆず)

「いつか」「虹」を続けて披露した前半最後のブロックが、いわばベスト盤的なセレクトだとすれば、中盤の2曲「君を想う」「RAKUEN」は、現在進行形のゆずを表す曲だ。どちらも6月29日にリリースした最新アルバム『SEES』に収録されているナンバーで、前者はゆずのスタンダードとして、後者はゆずが持つ音楽性の幅広さを実感できる曲として今のゆずを代表するものだ。

岩沢厚治(ゆず)

さらに、この2曲の前には情報誌「ぴあ」との思い出を語り、自らが表紙になったイラストをビジョンに映し出した。ちなみにゆずが表紙となった「ぴあ」は1999年4月5日号で、「いつか」が発表されたのと同じ年だ。

「タッタ」「夏色」と続き、「明日からまたみんなの日々が素晴らしいものでありますように」という想いを込めて「栄光の架橋」を披露してライブを締めた。

最後に、Saucy Dogとユアネスを呼び込み、北川悠仁が作詞作曲してSaucy Dogの石原がボーカルで参加したFM802のキャンペーンソング「AOZORA」を共にパフォーマンスした。この日、それぞれのミュージシャンが「バトン」という言葉をよく口にしていたのが印象的だった。ユアネスからSaucy Dog、そしてゆずへ確かに託されていった音楽のバトンは、最終的にこのステージにいる全員の手で、この先の未来へ向けて手渡された。

Text:谷岡正浩 Photo:加藤千絵(CAPS)

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