“心が震える”ものをひとつ持っていれば良い舞台は作れる ネルケプランニング 野上祥子社長インタビュー ぴあ演劇学校 2022年秋季特別講座

1996年にぴあ関西10周年を機に催された「ぴあ演劇学校」。ちょっと硬派なものもあれば楽しく笑えるものもある“授業”が人気を博し、伝説のイベントとなった。その「ぴあ演劇学校」が、ぴあ創業50周年を記念して復活! 豪華講師陣を迎えて10月1日(土)、2日(日)と、2日間にわたって行われる。今回、講座「2.5次元演劇学~漫画と舞台のステキな関係~」に登壇するのが、舞台制作会社であるネルケプランニング(以下ネルケ)の代表取締役社長・野上祥子氏と、集英社「週刊少年ジャンプ」で編集長を務める中野博之氏だ(聞き手は2.5次元ミュージカルに多数出演の俳優、阿久津仁愛)。

‘00年代前半、漫画原作を舞台化する際に「演劇」と「漫画」両方のコアファンを満足させるのは“難しい”と思われていた頃に、ミュージカル『テニスの王子様』(通称テニミュ)を立ち上げて演劇界に新たなフィールドを切り拓いたネルケプランニング。講座本番への導入部として、授業内容や業界への想い、ビジネスの視点について、野上氏に聞いた。

舞台ファンに衝撃を与えたテニミュの初演が2003年。今では演劇界のみならず、「舞台を観たことがない」という若い層にまで2.5次元ミュージカルの存在は広く知られるようになった。その先駆けとなり、現在も先頭を走り続けるのがネルケプランニングであり、多くの作品のプロデューサーを務める野上氏だ。メガヒットコンテンツを生み出した彼女の“授業”にも注目が集まる。

「来てくださる方に楽しみにしていてほしいポイントは3つありまして(笑)。まず1つめは、原作側(中野氏)、俳優側(阿久津氏)、そして演劇側(野上氏)という立場の異なる3人が揃った講義ということ。意外とこういう機会ってほとんどなくて、“お客様に良いものを届けたい”という共通の目的を持ちつつ、それぞれの立場で頑張っている三者三様の発言に注目してください。

2つめとしては、『2.5次元とはなんぞや』ということに、改めて触れようと思っていること。今ではたくさんの方が“舞台”というものに足を運んでくれるようになり、“2.5次元”がそのきっかけになったという自負はあるのですが、『いやいや! まだ2.5次元ってよく分からないという人は多いのでは?』ということで、基本に立ち返ろうと(笑)。せっかく中野さんにもお越しいただくので、長年の集英社さんとネルケとのタッグについて、これは映像も交えてお話しできたらと思っています。やはり漫画原作を舞台化することって簡単なことではなくて、もちろん他にはない大きな喜びもあるのですが、苦労や魅力なども含めて、これから業界を目指す人たちにも分かるように、具体的にお伝えしようと思っています。

そして3つめは、やはりコロナ禍と、演劇界への影響について。弊社でも第7波の影響を受けてたくさんの公演を中止せざるを得ない状況となりました。世の中が元通りの経済活動に戻ろうとしているなか、演劇業界はいまだダイレクトに影響を受けています。それはそのまま、お客様が舞台を観られないということに繋がっているわけで、私は作り手として、また阿久津さんは俳優として、今の状況をどう考えているかということについてもお話ししたいですね」

原作を『好きになっちゃった』瞬間の感覚を忘れないように

ざっくりと「テニミュ以前/テニミュ以降」に分けるとするなら、テニミュ以前にも漫画をベースにした舞台化作品は存在した。それでも「テニミュ以降」は2.5次元の舞台しかり、他社が制作する舞台しかり、原作物の舞台化について“制作の作法”が激変したのは確かである。野上氏の作る舞台が原作の漫画ファンにも、演劇しか知らないファンにも“刺さった”のは、なぜだろう。

「私は10代で松田さん(ネルケプランニングファウンダー松田誠氏)に出会い、1998年にネルケに入ったんですが、ネルケもいわゆる一般的な舞台制作の会社だったし、その頃は演劇のことばかり考えていて、漫画に対しては『漫画?好きだけど...』という認識だったんです。それがガラッと変わったのは、アニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』のキャスティングに携わった時。仕事のために読んだ原作が本当に面白くて、心が震えたんですよ。大げさではなく、打ち震えたといってもいいくらい。それは私にとって、演劇に魅入られた時と同じくらいの衝撃だったんです。その時に、『“演劇”にも“漫画”にも同じように心を震わせる観客・読者がいる。漫画原作で舞台を作るなら、私はそのどちらにも喜んでもらえるものを作らないといけないんだ』と気が付いたんですね。それ以降、漫画を舞台化するときは原作を『好きになっちゃった』瞬間、その感覚を忘れないようにしています。そうすれば、原作をリスペクトして、理解して、読み込んでいくことが当たり前のことになる。そういった想いがあって初めて、私たち制作側が演劇に落とし込むことができるのだと思います。その姿勢が、もしかしたら両方のファンの方に伝わったのかなと感じています」

とはいえ、漫画そのものが巨大なコンテンツ産業を形成している現在、原作側との密なすり合わせが必要になればなるほど、原作者側の意図や担当編集者、掲載媒体、出版社の方向性、さらにIPビジネスへの細かな目配りも必要になってくる。

「権利関係を管理している出版社側が大切にしているポイントというのは当然あって、一方ネルケとしても舞台のプロとして、立ち上げる際にどうしても譲れないポイントというのはあるわけです。他にも出演者やお客様にも大切なポイントがあって、それをよくある多角形を線で結んだグラフで表したときに、私はどこかの指数が大きくてどこかの指数が低い、いびつな多角形ではなくて、限りなく○(丸)、輪に近づけたいと心に留めています。

最後に、これから業界を目指す人に向けてメッセージをお願いしてみると。

「おかげさまでここ数年は、ネルケに入社したいという方のほとんどが、『2.5次元ミュージカルを観ました』と言ってくださるようになり、本当にありがたい限り。ただ一方で、舞台制作は必ずしも舞台をたくさん観ている人でなくてもいいと思っていて……。たとえば映画ファンや相撲ファン、テーマパークが好きなど、“心が震える”ものをひとつ持っている人、そういう経験をしたことがある人なら、きっと幅広いエンタテイメントにつながると信じています。講義本番ではさらにビジネスのシビアな面などもお話しする予定なので、これからこの業界を目指したい人やクリエイター志望の人など、幅広い方にぜひこの講義を観ていただいて、参考にしてもらえればと思っています」

取材・文:藤野さくら 撮影:源賀津己

<イベント情報>
ぴあ 50th Anniversary 「ぴあ演劇学校」2022年秋期特別講座

『ぴあ 50th Anniversary「ぴあ演劇学校」2022秋期特別講座』ロゴ

■10月2日(日) 16:00
2.5次元演劇学/マンガと舞台のステキな関係
講師:野上祥子(ネルケプランニング代表取締役社長)、中野博之(集英社「週刊少年ジャンプ」編集長)
聞き手:阿久津仁愛

2.5次元というジャンルを確立した舞台制作会社であるネルケプランニング。その代表取締役社長であり、プロデューサーでもある野上祥子。今回はヒットマンガを連発する集英社『少年ジャンプ』編集長中野博之と注目の対談。
『テニスの王子様』、『NARUTO-ナルト-』『ハイキュー!!』、『僕のヒーローアカデミア』、『鬼滅の刃』、『Dr.STONE』、『呪術廻戦』などジャンプ作品からの舞台化は数多い。その舞台化の過程や苦労話をマンガと舞台のそれぞれの視点で語り尽くす。聞き手は注目の俳優、阿久津仁愛。自身の舞台参加経験も含めて楽しい授業になること間違いなし。
入場券、及び視聴券もチケットぴあにて販売中!

公式サイト:
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